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はやく家に帰りたい。

  ビートルズが解散して兄公どもが嘆き、サイモン&ガーファンクルに慰めてもらった時代がかつてたしかにあった。そのような時代のまっただ中に兄公はなんらの前触れもなく行方をくらました。40年近い歳月を経て、2008年のクリスマス目前、兄公は吾輩の前に姿を現した。やはり、なんらの前触れもなく。吾輩の誕生日祝いにとラブレーの『ガルガンチュワとパンタグリュエル』の稀覯本を携えて。 いくつかある音楽に関する「原風景...

冬のはじまりに考える「世界が孕むある種のやさしさ」

  不遇にある人々にその暖炉のぬくもりのひとかけらとそのあたたかい食事のひとすくいが届けばいい。 冬のニューヨークは厳しい。ニューヨークにおでましの冬将軍様の傍若無人ぶりは凄まじいの一語につきる。秋のニューヨークは死ぬまでに一度は経験しておくべき素晴らしさにあふれているが、「最高のシーズン」も長くはつづかず、駆け足で冬がやってくる。そのニューヨークから心あたたまる話が舞いこんできた。ニューヨーク市...

沈黙ノート#666

 生まれ変わることはできない。少しずつ変わることはできる。   ソス・ド・ヴィはオー・ド・ヴィへ...

R U Still Down Gun 4?/SUBMERSION OF JAPAN

  日本国を襲う四つの災害・災厄民主党・鳩山政権発足時に廃止された「事務次官会議」は「全省庁連絡会議」と名を変えて復活した。官僚=木っ端役人のお得意常套手段である「看板の付け替え」が臆面もなく行われたのだった。閣議前日に行われる「全省庁連絡会議」で決定されたことが翌日の閣議で承認、最終決定する。この国を動かしているのは内閣ではない。官僚である。木っ端ひとつさえも生み出すことのない木っ端役人どもが国...

巴里で午睡#6 昼下がりのワラビー・モーリな件。

  ワラビー・モーリが吾輩の前にそのあまりにもなトラッド、ラルフ・ローレンぶりで往年の名MF、アソシエーション・フットボールの上手な愚か者ポール・ガッザ・ガスコインがオーナー・シェフとして厨房に立つ安食堂『ガスコーニュ&コリン・スゲット・サンダーランド・マッケム・ニューカッスル・ユナイテッド』に姿を現したのは日曜の昼下がりのことだった。ワラビー・モーリはクラークスの焦茶のワラビー・ブーツを履いていた...

カルミナ・ブラーナ 血の歌 第1の歌 レチタティヴォ #1

 曾祖父宛のカール・オルフの手紙をきっかけに、『カルミナ・ブラーナ』の写本をめぐる謎解きの旅はその緒についた。アノ・ドミニ紀元2000年の冬の盛りのことであった。『カルミナ・ブラーナ』「ボイレンの歌」は300編余りあり、それらはラテン語、中高ドイツ語、古フランス語、古イタリア語で記されていて、解読するだけで7年の歳月を要した。その間、わたくしは妻と飼犬の死にまみえ、さらにはわが血に宿る呪われし病を発するに...

ある賢者の死

  恩師が逝った。K先生。64歳。肝臓がん。高校時代、K先生には倫理社会と日本史Bを教わった。当時、K先生は正教員ではなく非常勤講師だった。私が通っていた高校は教員も生徒も「偏差値」と「東大合格者数」しか頭にないつまらぬ輩ばかりだったが、K先生はちがった。志があった。「読むべき本」「観るべき映画」「聴くべき音楽」、そして「考えるべき事」のリストが新学期の最初の授業の冒頭に渡されるのみで、教科書の類いはい...

賤妾は君と共に糜をくらわん

  表題の「賤妾は君と共に糜をくらわん」は『楽府詩集』の中にある「東門行」という歌の一節である。「糜」とは粥のこと。『楽府詩集』は中国の北宋の時代(12世紀くらい)に編纂された愛唱歌集のごときものであって、前漢以前の大昔から唐末五代にかけての勅撰楽章や民間に伝わる流行歌などを集めている。今風に言うならば『My Favorite Songs Book』『お気に入り歌集』ということにでもなるのだろうと思う。  さて、「賤妾は君...

わたくしの読書遍歴

 黎明期    サルからヒトへ 偶然半分、自分の意志半分で5歳の秋にC・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を読む。中野好夫の翻訳だった。おそろしく長い話なのだが一週間かそこらで読み終えたのではないかと思う。読んでいるさなか、二度ばかり大泣きした記憶がある。そのあと、立てつづけにディケンズものを読んだ。『オリバー・ツイスト』『二都物語』『大いなる遺産』『クリスマス・カロル』などである。ディケ...

牌の痕 ── そして、銀座2丁目の路地裏に朝がきて、男たちはそれぞれの戦場へと帰還した。

    泡の時代のまっただ中、1988年の冬。クリスマス・ソングが街のあちこちから聴こえていた。私は血煙を上げながら仕事をしていた。カネはうなるほどあった。いずれ、世界一の大金持ちになってやると思っていた。愚かだった。舞い上がっていた。奢りたかぶっていた。生涯最高最悪にして忘れえぬ麻雀の対戦が迫っていた。その頃、私は30歳になったばかりの若造だった。怖いもの知らずの小僧っこだった。心をゆるしたごく少数の...

『討論 三島由紀夫 VS 東大全共闘/美と共同体と東大闘争』を読む

  【檄】澄まし顔、したり顔で愚にもつかぬ能書き・御託を並べ立てる団塊老人どもに「1970年11月25日、あなたはどこでなにをしていたか?」と訊ねよ! 視えない自由を射抜く矢を射れ!1970年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地総監室。三島由紀夫(平岡公威)、森田必勝ほか「楯の会」構成員による「東京事変」勃発。テラスから「檄」を飛ばす三島由紀夫をだらけきった姿で見上げる自衛官。飛び交う怒号と下衆な野次。私はこの日、一報...

ダニーボーイの夢/かなわぬ夢と知りながら

  目下のところのもっとも甘くほろにがい夢は、アイルランドの鉛色の海を見下ろす断崖の際にひっそりと建つ小さな家で、わが人生の同行者である虹子と一番弟子のミニチュア・セントバーナードのポルコロッソに看取られながら、それまでの人生で聴いた最高の『ダニーボーイ』を聴きながらくたばることである。どうせくたばってから行きつく先は鬼か亡者か閻魔が待ちかまえているようなところであろうから、せめてくたばるときくら...

【霊長類最強の男が負けた日】異形の王、アレクサンドル・カレリン

  霊長類最強の男が負けた日2000年9月27日、シドニー・オリンピック、レスリング・グレコローマン・スタイル130kg級決勝。霊長類最強の男が負けた。それもノー・マークの、ただ体重が重いだけの凡庸な若者に。不敗神話はついに終止符を打った。格闘王・前田日明をして「どの分野でも強い人間はいるが、カレリンはまちがいなく『最強』だ」と言わしめた「最強の男」は、表彰台で終始、視線を落としたままだった。マットを降りると...

【センス・エリート100箇条】

  30歳を目前にした熱い夏、ある輸入ビールの広告制作の依頼が舞い込んだ。当時はキリンビールが圧倒的なシェアを有していて、どいつもこいつも当たり前のようにキリンビールを飲んでいた。そういった状況に異議申立てしたかった。そして、「センス・エリート/1番が1番いいわけではない。1番ではないことがクールでカッコイイことだってある」というコンセプトで企画を立て、広告文案を書いた。自分自身に言い聞かせるような意味...

17歳の地図 ── わが安吾体験

  人間は変わりはしない。ただ人間に戻ってきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。AN-GO17歳の夏、「自殺」を解読しようとしたことがある。自殺の動機、方法、自殺者の年齢、職業、性別など、「自殺」にかかる事柄のすべてを収集分析し、定量化しようという無粋な試...

七里ヶ浜駐車場レフト・サイドで2000tの雨に打たれるまであと7日と13時間29分

  曖昧で、名前すらつけることのできない空を見上げながら雨の気配を探る日々。かつて、われわれはそのような日々を「夏休み」と呼んだ。夏のはじまりにふさわしい純真と清冽と茫洋とあらかじめ失われた彼女の指先と彼女の「人生との和解」を見つけだすためにこそ私の夏はあった。 遠い日の冬の夜明け前。「あなたが帰ってくるとわたしの夏は始まるの」と彼女は言った。乳白色の手の中にティー・カップを包みこんだまま。「人生...

哀しい視線 ── 小林秀雄といふ事

 「小林秀雄が生きていれば」と思うことがよくある。戦後、たちまちキャラメルママ・デモクラシーのまやかしにしてやられ、そのふしだらきわまりもない言説に迎合したあげく、" 進歩的文化人 " に変貌したり、懺悔したりする知識人らを尻目に、「頭のいい人はたんと反省するがいい。僕は馬鹿だから反省しない」と小林秀雄は言い放った。清潔な態度に深い共感を持った。 この夏、小林秀雄の評論集『無常といふ事』をゆっくり時間...

逆説の犬/パラドクス・ドッグス

 わが愛犬、くんちゃんのことを『フツーの犬のこと』に書いて以降、驚くほど多くの方々から問い合わせのメッセージをいただいた。中には、「あんたには犬を飼う資格はない!」「いまごろ、くんちゃんは涙で目を泣きはらしているぞ!」「かわいそうに! あんたのしたことは動物虐待とおなじだ!」「犬にだって犬の権利、犬権があるんだ! 幸福で文化的な最低限度の生活をする権利は憲法で保障されているんだ!」というお叱りや、「...

フツーの犬のこと

 ワン公を里親に出した。ワン公の名前はくんちゃん。つきあいは17年になる。灰色の、冴えない、ごくごくフツーのワン公であるくんちゃんは、ある時は私を励まし、ある時は私を叱咤し、ある時は私を勇気づけてくれる、サイコーにゴキゲンなやつだった。  くんちゃんと初めて会ったのはバブルがはじけ、街からけばけばけばとげとげした空気が消え、だれもがフツーであることになにかしらの魅力を感じはじめた頃だった。夕暮れどき...

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自由放埒軒

Author:自由放埒軒
Festina Lente.
No Pain, No Gain.
Fluctuat nec Mergitur.
R U Still Down Gun 4?
玄妙の言葉求めて櫻花
薄紅匂う道をこそゆけ

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