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ぼくの不思議なマーラくん#1

 
 
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ぼくの不思議なマーラくんがぼくの家にやってきたのはおおきな地震で世界が揺れて真っぷたつに裂け、おおきな真っ黒い重金属の塊りのような津波が街を根こそぎにし、プルトン城の3つの尖塔が大爆発して世界中にラジオの精液を撒き散らした翌朝だ。

ぼくの不思議なマーラくんはぼくの部屋に入ってくるなり、「腹へった。なんか喰わせて。パンの耳でもロバの耳でもサムラゴーチの耳でも王様の耳でもいいからなんか喰わせて。ついでにエヴィアン汲んできて」と言った途端にポーちゃんのまねをして大鼾をかいて眠ってしまった。台湾式仮設住宅に住むお隣さんのオーヤンフェーフェーは大音響を轟かせながらアイフモーフェーを飲んでいた。

ぼくの不思議なマーラくんの耳元で蝸牛と鐙骨と砧骨と槌骨と三半規管にまで届けとばかりに100万dbちょうどで怒鳴っても、ぼくの不思議なマーラくんはうんともすんとも名誉毀損で訴えるとも笑っていいともとも言わず、かわりに平然として寝言で「耳がきこえる」とだけハンド・サインを送ってよこした。

ぼくの不思議なマーラくんがぼくの家にやってきてからもう3年になる。ぼくはぼくの不思議なマーラくんのおかげで『大地の歌』がとてもじょうずに歌えるようになった。音楽のタツゾー先生に褒められまくりだ。巨人の友だちが9人できたし、『千人斬りの交響曲』をたかっしーにただで作曲させたし、頭を思いきり壁に100万回打ちつけてもラ音の耳鳴りはしなくなった。

もう、ぼくの人生の日々には杖も補聴器も包帯もいらない。もう頬杖はつかない。リタリンもケタミンもパキシルもアモキサンもコンサータもデパスもいらない。でも、ハッパはちょっと欲しいな。フラワートップスとスカンクは大ゴキゲンだ。アカプルコ・ゴールドなら言うことなしだけど、Flower Travellin' Bandはふざけた楽隊だ。ふざけすぎて、ジョー山中は死んじゃったんだ。内田裕也が死ねばいいのに。内田裕也は全然ロックしてないからな。ロックはしてないけど、いい年齢こいて勃起はしてそうだな。どっちにしたところで、内田裕也はマイケル・マクドナルドとおなじくらいブルシットであることにかわりない。

そんなわけで、ハッパはすごくいい。バッハはもっといい。世界がありつづけるかぎりいい。だから、ダイヤモンドは傷つかない。著作権もいらない。損害賠償請求なんか知ったことか! 借金は踏み倒す。髪の毛は元美容師の女詐欺師に剪ってもらう。

お涙だって、もういらない。お涙ちょうだいなんて口が裂けても耳が聞こえなくなっても目が見えなくなっても口がきけなくなっても車椅子のお世話になるような事態がやってきても言わない。

涙くん、さよならさよなら。永遠にさようなら。また会うことなんか絶対ない。泣きながら食べるパンなんか味も素っ気もない。涙とともに食べるパンで手に入れられるものは東京電力の電気料金請求はがきかサムラゴーチの耳垢くらいのものだ。

少年の魔法の角笛を手に入れて、世界中にいるお腹を空かせてさまよい歩くこどもたちをアルゴーの酔いどれ船に乗せれば、ぼくの物語がいよいよ始まる。問題はぼくの不思議なマーラくんがいつまで経っても目をさましてくれないことだ。だが、それでいい。なにごともアダージョ・アダージョだ。急ぐ必要はこれっぽっちもない。迷ったらダ・カーポと噂の真相を読めばいい。(岡留のやつめ。いったいいつになったらゴールデン街深夜プラスワンのツケを払うんだろう?)


Gustav Mahler: Adagietto for Cello & Piano - Symphony No.5 - 4th mvt. by fav.Classiqua (Sakuraphon)




     
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