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夢破れ、ふけゆく秋の夜の旅の空に一人わびしき思いをかかえている戦友Hへ

 

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メール読んだ。三回読みかえした。四回目の途中で読むのをやめた。おまえのテクストは「てにをは」「句読点」「文法」はまちがいだらけで小学生レベルだし、「誤字脱字」はめまいがするほどだったが、おまえの言いたいこと、思い、気持ちはよくわかった。正直に言うならばとても心にしみた。
そうか。旅の空にあるのか。齢を重ね、夢破れ、一人わびしき思いをかかえて。おまえは今、ふけゆく秋の夜の旅の空になにを見ているんだろうな。おまえの文面からはいたずらに齢を重ねたのではないことがはっきりと読み取れた。そのことには敬意をもってのぞまなければなるまい。

25年ぶりの「再会」がインターネット/メールとはいかにも出来すぎだが、時代の趨勢ということでもあるんだろう。
おれはこの25年のあいだにおまえになにがあり、おまえがなにを経験してなにを感じ、なにを考えたかにはいささかも興味がない。それらのことについては悪いがほかを当たってくれ。おれの係ではない。竹馬の頃、飼育係として天才的な手腕を発揮していたおまえには変わることなき親愛を持ってはいるがね。ただし、「いきものがかり」とかいう小便臭く青っ洟垂らしたような尻の青みもとれぬ青二才の小僧と小娘は大きらいだ。

おれが知りたいのはおまえがこの25年のあいだ、炎の中心にいたかどうかということだけだ。炎の中心にあって尻込みしなかったかどうか。それだけに興味がある。結果などは時間が前後すればいくらでも評価、価値は変わる。時代などパッと変わるということだ。おれ自身がそう信じてきょうまで生きざまをさらしてきたということでもあるがね。
残るのはやったことだけだ。結論でも結果でも答えでもない。やったことだけが残り、やらなかったことは無惨な後悔に変わり果てる。冷厳にして冷徹。おれは沈香も焚かず屁も放らぬような腰抜け腑抜けに用はない。おれは行為者/行動者だけとおなじ陣営に拠す。それは昔も今も変わっていない。

おれはこのところ、「文部省唱歌」と「童謡」と「讃美歌」とネイティブ・アメリカンの音楽とケルト・ミュージックばかり聴いている。聴きながら、ときどき、おまえや死んだやつらのことを考える。『故郷』なんぞを聴いていると、小鮒を釣ったことも兎を追ったこともないのに、それらがまるで本当に経験したかたのごとくに薄桃色の靄がかかったような幻の光景として思い浮かんできさえする。おれも齢をとったものだ。冥土の旅のマイル・ストーンをいくつ越えてきたのかについては、もう随分昔に数えるのをやめた。

まったく馬鹿げて子供じみているけれども、じきに日本におさらばしてアメリカに渡り、モヒカン族の酋長になろうなどと考えることがある。ラスト・モヒカン、最後のモヒカン族になるためだ。そして、死ぬ。ボリビア軍に真っ正面から突っ込んでいったブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのようにな。考えただけで鳥肌が立ち、笑いがこみあげてくるぜ。

夢破れ、ふけゆく秋の夜の旅の空に一人わびしき思いをかかえている戦友であるおまえに犬童球渓の名作唱歌『旅愁』を贈る。鮫島有美子の歌唱だ。黒人霊歌の『深い河』もともに。しみわたる。しみる秋の夜ふけにこそふさわしい。『旅愁』は日本では歌い継がれているが、原曲の" Dreaming of Home and Mother (家と母を夢見て) "は本国のアメリカではほとんど忘れられてしまったという。実に残念なことだ。

夢破れて山河あり。夢はどれもこれも粉々に砕け散ったが、捨てたとは言っちゃいない。わが戦友よ、おまえもだろう? 深く暗い河であっても渡れ。渡った先には白木蓮の馨る父と母と兄弟たちの待つ故郷、約束の地がある。おれもともに渡る。会うことはできずとも、ともにある。


旅愁
作詞:犬童球渓
作曲:John P. Ordway

ふけゆく秋の夜 旅の空の
わびしき思いに一人悩む
恋しやふるさと なつかし父母
夢路にたどるは 故郷(さと)の家路
ふけゆく秋の夜 旅の空の
わびしき思いに一人悩む

窓うつ嵐に夢も破れ
遥けき彼方に心迷う
恋しやふるさと なつかし父母
思いに浮かぶは杜の梢
窓うつ嵐に夢も破れ
遥けき彼方に心迷う


旅愁 - 鮫島有美子
Deep River - Mahalia Jackson
深い河 - Norman Luboff Choir; Stokowski Conducting (Inspiration)




     
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