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夢二女とヴァン・ドンゲン・ウーマン

 
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 先々週の金曜日の夕方に和光の前で拾った宝くじが二等に当たって棚から牡丹餅で1000万円のお宝がふところに入ったので、自分になにか御褒美をあげようと思って伊東屋でファーバー・カステルのディレクターズ・ペン140番を100本と木箱入りのアルブレヒト・デューラー水彩鉛筆120色セットを買った。眼の下にうっすらと隈をこしらえたすごいような美人の店員を口説こうかどうか思案しているうちに腹の虫がぐうと鳴ったので口説くのはやめにした。腹がへっていれば口だって臭かろう。口が臭いと思われたのでは口説くどころではない。昼めしに煉瓦亭でポーク・カツレツを喰おうと決めて中央通りの日陰側を歩いていると、向こうから夢二式美人とヴァン・ドンゲン・ウーマンが連れだって歩いてくる。夢二式美人はお初だがヴァン・ドンゲン・ウーマンは馴染みというより腐れ縁だ。すれちがいざま、ヴァン・ドンゲン・ウーマンが私の右袖を引張って「黒船屋で一杯おごってよ」と言うので、「黒船屋はもう厭き厭きだ。煉瓦亭で昼めしを喰おうと思っていたところなんだが一緒に来るかい?」
「煉瓦亭ならいま行ってきたところよ。小娘と小僧とババアばかりでうるさいったらありゃしない。あんまりにもうるさいので我慢できなくなって、さっさと店を出ちまったわ。おかげでオムレツをひと口残しちまったわよ。口惜しいったらありゃしない。お代はおまえさまにつけておいたからお願いね」
「ありゃしないありゃしないって、おまえねえ、いっつも言ってきかせているだろう? この世界はありえないことでできあがっているんだって」
 私が言うとヴァン・ドンゲン・ウーマンは白い喉元をみせてからからと笑った。「そいじゃあ、こうしようじゃあねえかよ。交詢社通りの一本裏手に『檻』って店ができたんで、そこへ行こうじゃねえか。開店以来、世界をひっくり返そうって了簡の野獣のようなやつらがうじゃうじゃ来てるそうだぜ」
「あら、たのしそうじゃないのさ。みんなで野獣になってやろうじゃないの。ウワオ。ワオワオ」とヴァン・ドンゲン・ウーマン。
「おまえ、それじゃあ笠置シヅ子じゃないかよ。それよりか、おまえさんがよくたって、そちらの夢二の絵から抜け出てきたようなお嬢さんはどうだろうね」
「あたくしならどんなような地獄でもごいっしょいたしますわよ」と夢二女。

vandongenwoman03.jpg

「こりゃ、たまげたね」
 夢二式美人はなにを思ったのか、抱いていた黒猫を地べたに思いきり叩きつける。
「ちょいとちょいと。あんた、動物虐待で取っ捕まるぜ」
「いいえいいえ。これは猫みたようにみえますが、ほんとのところは虎屋の羊羹ですのよ。お気になさらずに。猫可愛がりしすぎたら虎が猫になってしまってつまらない思いをしていましたし、先だって虎屋から東京羊羹に鞍替えしましたもので、もう未練はございません」
 まったく世の中には不思議不可解な女がいたものだ。女も不思議不可解なら地べたに叩きつけられた黒猫とみえた虎屋の羊羹もたいしたもので、苦しいようすもみせずに通りかかったクロネコヤマトのトラックにさっさと乗ってしまった。
「トキオの兄さん、はやくに行こうよう。『檻』へさあ。はやくしないと夢がさめちまうよう」とヴァン・ドンゲン・ウーマンがちぎれるのではないかというくらいに強い力で袖を引っ張る。『檻』へ向かう道すがら、夢二女は「ファム・ファタール。ファム・ファタール。ファム・ファタール」と地獄の底から聞こえてくるような声で呟きつづけた。そのときの私は、まさか夢二女が自分の「運命の女」になろうとは思いもしなかった。(つづける。)

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