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christian louboutin pigalle cutout pump アノニマス・ガーデン/記憶のほとりの庭で |演劇部の美人部長M子とすごした1975年10月14日(火曜日)の放課後の音楽室【第1楽章】

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演劇部の美人部長M子とすごした1975年10月14日(火曜日)の放課後の音楽室【第1楽章】

 
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「料理はセックスである」と大江健三郎に言ったのは17歳のわたくしであるが、その考えはいまも変わらない。変わらないどころか、より強固に頑迷になっている。わたくしが「料理はセックスである」と考えるに至った出来事について記す。臆病者と偽善者と卑怯者とユビキタスを信じない者はここから先を読んではいけない。

「大江健三郎の『敬老週間』を文化祭の出し物として演じたいので脚本と演出を頼みたい」と演劇部の美人部長M子がわたくしを訪ねてきたのは1975年10月14日、火曜日の放課後の音楽室だった。わたくしはカラヤン指揮ベルリン・フィルでグスタフ・マーラの『交響曲第五番第四楽章 アダージェット』に聴き惚れていたところだったので、いくぶんか眉をしかめて演劇部部長のM子を見た。M子はかなり怯えていた。わたくしは学校内では知らぬ者のない札付きのワルで、凶悪なうえに突拍子もない言動をする人物として生徒はおろか教師どもにまで恐れられていた。それゆえに、まさか学校でも才色兼備の誉れ高い演劇部部長のM子が単独で訪ねてくるなどまったく予想外の出来事であった。わたくしは言った。
「おれがここにいるって誰に聞いたんだ? あーん?」
「は、はい。担任の小松原先生に」
「小松原め。まったく余計なことを」
「怒ってらっしゃるんですか?」
「そりゃね。でも、あんたは美しいうえにいい声だからゆるす」
「あ、ありがとうございます!」
「で、用件は?」
「は、は、はひぃ。じ、実は脚本と演出をお願いしようと思いまして   
 眉がぴくりとした。
「まったくなにかと思えばそんなことか。答えは決ってる。お断りだ」
「やっぱりダメですか   
 深々とした溜息とともに、M子の大きな瞳から大きな涙がひと粒こぼれ落ちるのをわたくしは見逃さなかった。
「異化済みのリゾート・マンションがニョッキのゴルゴンゾーラ・ソースのパスタひと皿と等価な世界が見つからないからと言って希望を失っちゃいけない。なぜなら、そもそもわれわれの旅には目的地などないからだ。いつか、黙っていても急ぎ足になるような、そのような健やかでちょっと哀しい旅。そんな旅をおれとしたいとは思わないのか?」
 わたくしがそう言うとM子は大きな瞳をさらに大きく見開き、大粒の涙をぬぐい、そして、大きくうなずいた。大きくうなずいたが彼女がわたくしの言ったことを本当に理解できたとは思えなかった。わたくし自身がわからなかったのだから当然である。わたくしはつづけた。
「少なくとも僕らはゆっくりと歩みを進めよう。急ぐ旅でもあるまい」
「わかりました。そうします」
 M子の顔が輝きを取り戻した。そして、彼女は深々と一礼し、帰りかけた。
「待てよ。話はまだ終わっちゃいない」
 M子はびくりとして振り向いた。
「話を聞こう」
「よろしいんですか?」
「うん。ところで、あんた、3年だろう? 年下のおれになんで敬語を使うんだ?」
「こわいから」
「なにがこわい?」
「みんながそう言ってます」
「あんたはおれから直接こわい目にあわされたことがあるのか?」
「ありません」
「それなら、なぜ?」
「Sさんが好きだからかもしれません」
「なんだそりゃ?」
「わたしにもよくわかりません」
「あんたがわからないならおれはもっとわからない。だけど、なんだかちょっとうれしいな」
 M子が初めて笑った。胸の奥が疼くような奇妙な気分だった。
「ピアノは弾ける?」
「はい」
「グリークのピアノ協奏曲をキース・ジャレット風に弾くことは?」
「弾けると思います」
 M子は南の島の通過儀礼のような手つきで卒業生からの寄贈品であるベーゼンドルファー・インペリアルの鍵盤蓋を開けた。眼を閉じ、両肩をまわし、一度だけ深く息を吸い込んでからまっすぐな眼で鍵盤を見た。鍵盤に両手を置き、覆い被さるように頭を垂れるM子。M子は微動だにしない。息すらしていない。長い髪が白鍵と黒鍵の狭間で揺れている。あまねき存在からの啓示を待っているようにもみえる。口元が微かに動いている。呪文? 聴きとることはできない。そして、生涯にわたって忘れえぬ異界の刻が始まった。
 第一音からキース・ジャレットだった。わたくしは息をのみ、居ずまいをただした。M子の口から呪文のような言葉の連なりが途切れることなく吐き出された。第1楽章が終わり、第2楽章が終わってもM子の演奏の冴え、緊張感はかわらなかった。そこには確かにキース・ジャレットがいて呪文のような呟きが聴こえた。鳥肌が立った。
「すごいな」
 わたくしは思わず口にした。そのとき、M子が怒鳴った。雷鳴のような声だった。
「うるさい!」
 M子は髪をふり乱し、鍵盤にありったけの怒りをぶつけているように思われた。第3楽章はとうに終わり、M子が弾いているのは、その年の初めにキース・ジャレットが行った奇跡のパフォーマンス、『ケルン・コンサート』だった。しかも、寸分たがわぬ演奏。
「どうして   
「黙りなさい!」
「でも、どうして?」
「降りてきてるのよ」
 わたくしは唾を飲みこみ、M子の顔を覗きこんだ。M子の顔は会ったこともなければ見たこともない別人の顔にかわっていた。その顔は美しかったが凄絶で禍々しかった。そして、1975年10月14日の放課後の音楽室に魔物がやってきた。

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