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食神譚#1「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男

 

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 厳冬のペンノキ鼻で海草類と数頭のトッカリと不運な船乗りを屠って生き延びた「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男は、金緑色に輝くジストステガ・ペンナータが密生した巨大な山毛欅の倒木の縁に腰かけている。「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男は一筋の光の帯が射しこむだけの薄暗い木立の中で前後左右に揺れながら立ちつくす森のひとにたずねた。
「神々の住処をを御存知ありませんか?」
「知ってるよ」
「それはどこでしょうか? 神々が住まう場所というのは」
「知ってどうする? 知ったところでおまえにはたどり着けない」
「記録したいのです。神々を。神々が現れるところを」
「命を差しだす覚悟はできているのか? 神々と会うというのは命と引き換えだぞ」
「けっこうです。どうせとうに捨ててしまった命です」
「捨てた命を神々に差しだすことはできない。神々の怒りを買うだけだ」
「では、どうしたらいいでしょう?」
「捨てた命をもう一度拾いなおすか買い戻すかするんだな。話はそれからだ」
「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男は眼を閉じ、考えこむ。深々と息を吐き出す。
「わかりました。そうします」
「では、出発しよう」
「ありがとうございます。どこに向かうんでしょうか?」
「大瀬崎と戸田の御浜岬」
「なるほど」
「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男は山毛欅の倒木から腰をあげ、樹海を幽けく照らすペーパームーンを見上げる。「崩壊する時間」と樹海を記録しつづける男のすぐ横に純白の羽衣をまとった豊饒の女、一人の巫女が現れ、無言で立っている。ゴブリンどもが宿ったジストステガ・ペンナータは音もなく妖かしの光をあたりに放っている。
「で? おまえの本当の目的はなんだ?」
「 ── 神々を屠ることです」




     
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