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異世界レストラン#3 ひときれのナン

 

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 昔々の大百足昔、タゴール系インド屋としてインドをほっつき歩いていた頃のこと。パンジャブ州のフランチスク・ムンテヤーヌ村で何日かを過ごした。村を離れる朝、村の長老が鮮やかなサファイア・ブルーのインド更紗の包みをくれた。
「旅のお方。本当にお腹がすいたときに包みをあけて食べなさい。ナンが入っている。この村はとても貧しいので、このひときれのナンでひと家族の晩ごはんです」
 長老がくれた包みをふところに入れ、村をあとにした。その後、旅のあいだ、カネがなくなってまともな食事にありつけないとき、ふところの包みを服の上から何度も何度も撫でた。空腹は変わらなかったけれども、撫でるたびに心だけは満ち足りた。
 旅はずっと貧しく孤独で空腹つづきだった。インドでは「死」は日常のごくありふれた一部なので、行き倒れていてもだれも気にもとめてくれない。
 万事休す。文無しで、いよいよ「そのとき」がやってきたようだった。ふところのインド更紗の包みを取り出し、ゆっくりと開いた。包みの中にはさらにオレンジ色のインド更紗の包みがあった。それをあけると今度はバイオレットのインド更紗の包み。それをあけるとさらにダークブラウンのインド更紗の包み ── 。そんなことがしばらくつづいた。そして、漆黒のインド更紗の包みをあけると、一枚の紙切れが入っていた。紙切れには下手糞な字でこう書かれていた。


 艱難汝を玉にす。なんとかなる。ナンなだけに。「インド人もビックリ!」なんてナンセンス。インドのことをなんにも知らない南京玉すだれ野郎だ。そんな野郎の口には南京錠をかけて南極に軟禁しろ。「なんでも見てやろう」の心意気でいい旅を!


MATUKEN800PX.jpg ORIENTAL800PX0.jpg INDIAN_SUPRISED800PX0.jpg


 以来、インドもインド人も、そして、インド更紗も大好きだ。インコの丸焼きは因業な味がする。『陰翳礼讃』はインポータントにしてインティメートな愛読書だが引用しないと決めている。ハンバーガー用のバンズにハンブルガーSVの往年の名フォワード、Uns Uwe=ウーヴェ・ゼーラー以外のなにを挟もうとうまいわけがない。ワインはチリのサンタ・カロリーナで必要にして十分だ。いまどき、「オシャレ」などという死語を使う輩の気が知れない。そんなようなテスタ・ディ・カッツォでファッチャ・ア・クーロでファンクーロな餓鬼畜生下衆外道は大方、精神の飢餓にでも見舞われているにちがいあるまい。




     
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