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夏を追悼せよ/今はもうどこにもない、あの海を探して。

 

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 未来は保証するものではなく、追悼すべきものだ。E-M-M


 プレイステーション2の『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』にハマりにハマった時期がある。2002年の夏のことだ。長い浪人時代のただ中だった。繰り返し流れるテレビCMの映像に魅かれ、秋葉原まで出かけて手に入れた。イラストレーターの上田三根子によるキャラクター・デザインはとてもキュートで魅力的だった。上田三根子は、最近ではライオンのハンドソープ/ボディソープ「キレイキレイ」のキャラクターの作り手として活躍中である。
 2002年の夏は『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』とともに始まり、生き、過ぎゆき、そして、終りを告げた。あの夏のあいだ中、ずっと『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の中に生きているような錯覚さえ覚えた。エンディングでロケットが空高く飛翔けのぼっていくシーンでは不覚にも涙した。
 少年のひと夏の冒険。実に心そそられるテーマだった。沈没船。サイダーの王冠探し。樹上の秘密基地。秘密の小部屋。麦わら帽子。虫取り網。虫かご。昆虫採集と昆虫標本づくり。虫相撲。花火遊び。朝顔の観察日記。油蝉とミンミンゼミと蜩の声。夏の灼けつくような陽の光の中に仄見えるもの。水の音。風にそよぐ梢。小川のせせらぎ。寄せる波。返す波。海に沈みゆく太陽。潮騒。波打ち際。魚釣り。宝探し。肝試し。探検。うつろう魂。隠された伝説。夏の終りと別れ。『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』は胸をときめかさずにはおかない要素がふんだんに盛り込まれていた。『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』は『ファイナルファンタジー7』『バイオハザード』とともに、「アノニマス・ピープルとしてバーチャルの中に生きること」を決意させるきっかけとなった。
『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』は、「少年の夏」を題材としたものでは、2003年公開の映画、『ウォルター少年と、夏の休日(Secondhand Lions)』とともに2000年代初期におけるトップ2であるように思える。

 昭和50年(1975年)8月、母親が臨月を迎えたことから主人公である9歳の少年「ボク」が、夏休みの1ヶ月間、伊豆半島の陸の孤島のような海辺の町「富海」で民宿を営む叔父の家にあずけられるところから「ボクの夏休みの物語」は幕を開ける。
『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の舞台のモデルとなった場所が伊豆半島にあると知り、実際に出かけもした。しかも、自転車で。『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の舞台のモデルとなったのは静岡県伊東市の富戸だが、吾輩の「2002年僕の夏休み 海の冒険篇」の舞台は沼津市の戸田(当時は沼津市との合併前で「静岡県田方郡戸田村」)となり、その数年後、戸田は吾輩にとってさらなる重要な意味を持つ「場」となった。

『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』は随所に使われる音楽も実に効果的で魅力があった。主題歌である沢田知可子がカバーする井上陽水の『少年時代』に始まり、夜になると相楽家のBGMとして流れるエリック・サティの小品の数々。『ジムノペディ第1番』『ナマコの胎児』『ノクチュルヌ第3番』『ジュ・トゥ・ヴー』等々。
 中でもとりわけて印象深いのは、夏の終りの夕暮れに登場人物の一人が民宿のテラスでギターを奏でるシーンだ。曲はフランシスコ・タレガの『Recuerdos de la Alhambra/アランブラ宮殿の思い出』だった。音楽と映像とがとても合っていて、去りゆく夏、夏休みの終りのせつなさをとてもよく表現していた。ゲームの進行とまったく関係はないが、そのシーンでゲームを一時中断し、BGMがわりに1日中聴いていたこともある。
 そして、10年の歳月の流れ。あの夏は帰らないが、それでも、夏が来るたびに、そして、夏に別れを告げる時期になると思いだす。まるで少年時代の宝石のようななつかしい思い出を思いだすように。

 夏が過ぎ、八月は夢花火。ひと夏の夢はつまり、思い出のあとさき──。
 さらば、夏の日々よ。夏の終りの陽を浴びて潮風に息吹く花たちよ。その束の間に消えゆくことと知りながら。



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