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ジョニーの冬と泥んこ水とブルースの兄弟

 

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 窓に広がる夏の空の青さを計測しながらトマゾ・ジョヴァンニ・アルビノーニの『アダージョ ト短調』を聴いていると、ジョニーがやってきた。右手には泥んこ水が満たされたバケツをぶら下げていた。


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「やあ、ドビ・ブロー。ひさしぶりぶり。ブルースマンのおいらが来ましたよ」
「やあ、ジョニー。ひさしぶりぶり。ちょうど退屈しはじめてたとこさ」
 ジョニーはバケツを床に置き、壁に無造作に立てかけてあるギブソン・ファイヤーバードに眼をやった。
「弾いてもいいかい? 兄弟」
「もちろんさ」
「おいらが弾くと部屋が冬になっちゃうけど、それでもいいかい?」
「暑いのは御免蒙るけども、寒いのは大歓迎だよ」
「そりゃ、よかった」
 ジョニーはギブソン・ファイヤーバードを生まれたてのシーズーの赤ちゃんを抱き上げるみたいに注意深く引き寄せ、持参したストラップを手慣れた手つきでセットした。そして、『Be Careful With a Fool』をおそろしい速度で弾きはじめた。人差し指、中指、薬指が蜃気楼のように霞むほどの速さだった。


WATERS800PX.jpg


 ジョニーが3度目に『Be Careful With a Fool』のリフを超絶技巧で弾いているとき、バケツの泥んこ水がざわめきだした。
「なんでい! なんでい! 息子よ、おまえもずいぶんと老いぼれちまったなあ。寒くっていけねえや」
 シカゴ・ホワイトソックスのユニフォームを着た泥んこ水が言った。
「ジョニーよ。わが息子よ。こっちにはいつごろ来るんだ?」
「親父! 達者かよ? この夏にはおいらもそっちの住人になれるだろうさ」
「そうか。そいつはたのしみだ。だが、寒いのだけは勘弁しろよな」
「わかってるよ。おいらが、こんど親父に会うときは、泥んこジョニー・ウォーター様さ!」
「へっ! へっ! へっ! せいぜい、リフの腕を磨いときな。おまえはまだまだ小僧っ子だ!」
「言ってやがらあ!」
 ジョニーと泥んこ水は同時にこちらを見ると、声をそろえて叫び、そして、消えた。いつのまにか現れたブルース・ブラザースの二人も消えた。

 I'm a Bluesman! We Are Blues Brothers!
 I Just Want to Make Love to You!


 彼らが消えると、また部屋に夏のふやけた暑さが戻ってきた。ギブソン・ファイヤーバードもバケツもきれいさっぱり消えていた。夏の後姿も時雨れてゆくか。




     
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