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3人のギター超人がストリート・ファイトしたサンフランシスコの夜の地中海の舞踏

 

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 1980年の冬の初めだった。サンフランシスコのウォーフィールド・シアター。ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラのスーパー・ギタートリオのライブ。最前列。ど真ん中。開演のずっと前から胸は激しく高鳴っていた。スーパー・ギタートリオ。すでにして伝説、神話の領域にいる三人のギター超人のライブ。冷静でいられるわけがない。
 3人のギター超人はとてもいい顔をしていた。修行僧のような風情のパコ・デ・ルシア、才気あふれ、まぶしい輝きを放つアル・ディ・メオラ。そして、ギター界の大御所ジョン・マクラフリン。3人のギター超人がそろいもそろって超絶技巧、超絶のインプロビゼーションを炸裂させた。一糸乱れず。しかも、ライブ。夢のような夜だった。


Meola-Paco-McLaughlin800PX.jpg


『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』が始まったとき、わが耳を疑った。「これはなにかの冗談だろう?」とさえ思った。それほどに凄まじいパフォーマンス。『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』はアル・ディ・メオラの2枚目のアルバム『Elegant Gypsy』における白眉の名曲であって、のちのちのアル・ディ・メオラの評価を決定的にする名演を、おなじパコ・デ・ルシアとやっていた。吾輩は『Elegant Gypsy』における『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』を諳んじられるほど、曲末に入っている深々とした数秒の口笛まじりの嘆息をそっくりそのまま真似できるほど聴きこんでいた。
 アル・ディ・メオラの出現も、『Elegant Gypsy』における『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』のパフォーマンスも衝撃だった。左チャンネルがパコ・デ・ルシア、右チャンネルがアル・ディ・メオラ。若きアル・ディ・メオラの鋭角的先鋭的なギター・プレイとパコ・デ・ルシアの超人的なプレイ。
 アル・ディ・メオラはひとまわり以上も歳上であるフラメンコ・ギターの超絶技巧の名手、パコ・デ・ルシアを向うにまわして互角以上に闘っていた。凄まじいバトルだった。二人のギターからは激しい炎が吹き出している。焼く。灼く。焼きつくす。
 あさはかにも、アル・ディ・メオラを「速弾き」のひと言で片づけようとする愚か者が大勢いた。訳知り顔したり顔でアル・ディ・メオラをこき下ろす声を聴き、目にするたびに、「おまえたちには疾走する者のかなしみがわからないのか! 救いようのない愚か者どもめ!」と無性に腹が立った。


Elegant_Gypsy800PX.jpg


 録音は1976年末から1977年初頭にかけて。『いちご白書』の季節も「連帯を求めて孤立を恐れず」がスローガンだった政治の季節も浅間山荘事件も三島由紀夫の東京事変もまだ生々しさを失っていない時代。そんな時期に世界の片隅の薄暗いレコーディング・スタジオで、23歳の若者が歴史に残る名演を繰り広げていたという事実。そのことに心震えた。
『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』はまぎれもなく疾走していた。これは途轍もないことになると思った。なぜだか知らぬが涙が溢れてきた。涙は次から次へいくらでもあふれた。あの涙はいったいなんの涙だったのか。過去も現在も、そして未来すらも置き去りにして疾走する者のかなしみにまみえた涙でもあったか。

 ライブの夜の『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』は『Elegant Gypsy』に収められているオリジナル音源を軽々と凌駕していた。4年のあいだに二人はさらなる高みへと駆けのぼっていたのだということを思い知らされた。「一瞬たりともおなじところにとどまっていてはならない」と言われているような気がした。「つねに、目にもとまらぬ速度で疾走し、ステップを踏め」「動きつづけるものにしか力は宿らない」とも。11分を超える演奏が終わると同時に、会場であるウォーフィールド・シアターは地鳴りのようにどよめき、割れんばかりの歓声と拍手に包まれ、揺れた。2000人を超える満員のオーディエンスが熱狂した。初めて『Elegant Gypsy』で『Mediterranean Sundance/地中海の舞踏』を聴いたときとおなじように、しかし、そのときよりも熱い涙が出た。そのようにして、サンフランシスコの夜はふけていった。


 Friday Night in San Francisco - Al Di Meola, John McLaughlin, Paco de Lucía (1980)


 Released: August 10, 1981
 Recorded: Friday December 5, 1980. The Warfield, San Francisco, CA
 ("Guardian Angel" recorded on May 1981 at Minot Sound, White Plains, NY)
 Genre: Flamenco-Jazz
 Length: 40:39
 Label: Philips
 Producer: Al Di Meola, John McLaughlin, Paco de Lucía


 Track listing
 1.  "Mediterranean Sundance (Al Di Meola) / Río Ancho (Paco de Lucía)" – 11:25
 Performed by: Paco de Lucía (Left Channel) and Al Di Meola (Right Channel)
 2. ”Short Tales of the Black Forest" (Chick Corea) – 8:39
 Performed by: John McLaughlin (Left Channel) and Al Di Meola (Right Channel)
 3. “Frevo Rasgado" – 7:54 (Egberto Gismonti)
 Performed by: John McLaughlin (Left Channel) and Paco de Lucía (Right Channel)
 4. ”Fantasia Suite" (Al Di Meola) – 8:41
 Performed by: Paco de Lucía (Left Channel), John McLaughlin (Middle Channel) and Al Di Meola (Right Channel)
 5. ”Guardian Angel" (John McLaughlin)(Studio Recording) – 4:00
 Performed by: Paco de Lucía (Left Channel), John McLaughlin (Middle Channel) and Al Di Meola (Right Channel)


 Personnel
 Al Di Meola – Acoustic Guitar
 John McLaughlin – Acoustic Guitar
 Paco de Lucía – Acoustic Guitar

*『Pavarotti & Friends for War Child』における『Mediterranean Sundance』のパフォーマンスも負けず劣らず素晴らしい。上記2曲の『Mediterranean Sundance』ではジョン・マクラフリンは加わっていなかったが、『Pavarotti and friends』のライブでは3人で白熱のギター・バトルを展開している。


 Meditarena Sundance/Río Ancho - Al Di Meola & Paco de Lucía (Elegant Gypsy 1976)
 Meditarena Sundance/Río Ancho - Al Di Meola & Paco de Lucía (Friday Night In San Francisco 1980)
 Meditarena Sundance - Paco de Lucía, John McLaughlin and Al Di Meola (Pavarotti & Friends for War Child 1996)




     
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