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Z-ZONE#1 有効射程距離のリアリズム

 

Vasilij_Zajtsev800PX.jpg


 生きてゆくうえで重要なのは自己のリアルな有効射程距離を見極めることだ。そして、邪魔者は撃ち墜とす。E-M-M


 亡霊を撃墜するところからこの話は始まる。

 史上最高のゼロ戦パイロットの老人は象太のエンドゾーンの右コーナー、右のこめかみに有無を言わさずボッシュの無段変速電気ドリルをぶち込んだ。チタン加工が施された6.0mmの鉄鋼加工用六角軸ドリルは情け容赦なく象太の上皮組織を破り、真皮を蹴散らし、肉を粉砕し、ついには頭蓋骨に6.0mmの穴をあけた。意外にも血しぶきはあがらない。それどころか、象太は涼しい顔をしている。苛立ちの汗を噴き上げながら池袋ウェストゲート・パークを歩くイラマッツィオ野郎の石田伊良部ラヴーよりもよほど涼しそうだ。
「象太よ。この右のこめかみの6.0mm穴こそはおまえのZとしての根拠、Zという立場、Zの視座、Zの論点、Zの立ち位置、AtoZの仕組み、ZOTAKの理念、KATOZの結束、ENZO ZONEの突破、Z-ZONEの象徴だ」
「ああ。わかってる」
「象太よ。おまえはもう子供ではない。この夏でおまえの少年時代は終わった。大昔、クラークとかいう毛唐が ”小僧っ子どもよ、野望を持て” と言ったが、冗談じゃない。ガキ、こども、小僧、少年なんぞに野望も野心も持てるはずがない。大事なのはリアルな自分の有効射程距離を見極めることだ。わかるな?」
「ああ。この夏で自分の有効射程距離はグリップした。おれはあんたをいつでも撃墜できるってこともな」


FIGHTER800PX.jpg


 言い終えると同時に、象太は史上最高のゼロ戦パイロット、伝説の戦闘機乗りの手からボッシュの無段変速電気ドリルを捥ぐように奪い取り、人差し指でトリガーを絞った。そして、閃光のような素早さで唸りを上げる6.0mmドリルを伝説の戦闘機乗りの眉間の中心に突き立てる。伝説の戦闘機乗りの頭蓋骨が砕ける鈍い音。象太は一気に根元まで押し込む。
 一瞬の出来事だった。伝説の戦闘機乗りの眉間から花火のような血しぶきが上がった。象太は全身血にまみれた。黒と白のチェス盤のようなリノリウムの床に鮮血がみるみるひろがってゆく。しかし、象太は表情ひとつかえない。
「どうだ? 爺さん。おれの有効射程距離は思っていた以上に長いだろう?」
 返事はない。当然だ。史上最高のゼロ戦パイロットはすでに事切れているからだ。


DOG_FIGHT800PX.jpg


「戦闘機乗りは敵に見つかれば命を失う。こっちから敵を見つけるために昼間の星でも見えるくらい視力を鍛え上げろ。見えなければ殺される。そう思って視力を鍛え抜け。そう言ったのは爺さん、あんただ。おれの視力は研ぎ澄まされ、視えない自由さえ視えるようになった。未来までもな。あんたがおれを裏切り、背き、おれに照準を合わせるのがはっきり視えた。だから、おれはあんたに殺される前におれのトリガーを引いたんだ。悪く思うなよ、爺さん」
 象太は夏の容赦のない陽盛りの街に出る。4ヶ月ぶりに目にする外の世界。象太は少しだけ目を細めてから、突き抜けるような夏の盛りの青空を見上げる。街の通りのどこかからハング・ドラムの音が聴こえてくる。Hang Massiveの『Skånegatan』が終わり、『Once Again』が始まる。
「もう一度だけ人生をやりなおそう。もう一度だけ。そして、視えない自由を視えない銃で撃ち抜くヴァシリ・グリゴーリエヴィチ・ザイツェフのようにクールに精緻に生きよう。臆病で逃げ足だけは速いウサギのような日々とはきれさっぱりお別れだ。もうザイシャはつくらない。次におれが狙いを定め、トリガーを引く敵、標的、獲物はドーナツの穴の中にいる。おれのためのケーニッヒ少佐、トールヴァルト大佐は。照準にも照星にも狂いはない。コンマ1mmもだ。誤差はZERO。完全無欠完璧無窮の精度。おれはまずそいつを確実に仕留める。心を少しも動かさずに。眉毛ひとつ動かさずに。Z-ZONE英雄称号にふさわしく。そのあとは、薄汚いドブネズミどもを一匹残らず始末する。この世界から一掃する。ドブネズミどもとの最終戦争に勝利するのはおれだ。そして、おれは精緻明晰な世界に生きる。狂いも誤差もない精緻明晰な最終最後の世界。それこそがおれのリアリズム、おれの有効射程距離、おれのZ-ZONEだ」


Range800PX.jpg





     
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