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22歳の天才がいずれ時代を変える。井上銘『First Train』

 

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ゴキゲンな始発電車に乗って天才音楽青年はやってきた。Take The A to Z Trainだ!


途轍もない天才が出現していた。井上銘(May Inoue)。1991年5月14日生まれ。5月生まれのMay. 神奈川県出身。出現(アルバム・デビュー)は2011年。
幼い頃からピアノ、ドラムスなど、幅広く楽器演奏に親しんできた井上銘は15歳でギターを始める。そして、高校入学後にジャズ・ミュージックと出会い、名手・宮之上貴昭に師事。高校在学中に都内の有名ジャズクラブでプロフェッショナルとしての演奏活動をスタートさせた。高校3年で日本ジャズ界の重鎮、オマサンことベース奏者の鈴木勲グループに参加。同時に川嶋哲郎(ts)、大森明(as)らとの共演を経験する。
2011年にはボストンのバークリー音楽大学の授業料全額免除スカラーシップを獲得した。バークリー音楽大学(旧名称は「バークリー音楽院」)はニューヨークのジュリアード音楽院とともに世界中から「音の俊秀たち」が集まってくる音楽のアカデミアだ。卒業生には錚々たる音楽表現者たちが名を連ねている。クインシー・ジョーンズ、ゲイリー・バートン、ジョン・スコフィールド、アル・ディ・メオラ、アラン・シルヴェストリ、スティーヴ・ヴァイ、日本人では渡辺貞夫、穐吉敏子、佐藤允彦、ミッキー吉野、MALTA、小曽根真、大坂昌彦、大西順子、上原ひろみらがいる。

20歳のときのデビュー作である『First Train』は11曲中6曲がオリジナル・ナンバーで構成されている。物真似、模倣ではない確固としたジャズ・イディオムがあることに驚かされる。まぎれもない井上銘のジャズ、井上銘の音楽、井上銘の表現。これはたいへんなことである。井上銘に未来の音楽シーンの在りようをみることすらできるように思える。ジャケットのタイトル文字はブルーとグリーン。マイルス・デイヴィスの初期のアルバムを意識したものか? いずれ、井上銘の考えるマイルス・デイヴィスへのオマージュ作品を送り出すことの予告でもあるか。井上銘によるスタンダード・ナンバー演奏をすべて聴いてみたいものだが、中でも『Blue in Green』を井上銘がどのように消化し、解釈し、表現するかに強い興味がある。


Blue_Haze-Miles-Davis800PX42.jpg


1曲目のタイトル・ナンバー『First Train』におけるパフォーマンスはすでにして完成されたビバップ・スタイルの中に井上銘独自の解釈を加味した素晴らしいプレイである。ハービー・ハンコックの名曲『Tell Me A Bedtime Story』では憎いほどの歌いっぷり。そう、井上銘のギターは歌っているのだ。軽やかに輝かしく、そして、芳醇馥郁と。

フレージングには随所に宝石のような輝きと閃きをみせる。しかも、温かく豊かで深い音色と繊細流麗なフレージング。その王道をゆくテクニックは勿論のこと、スロー・ナンバー、バラード・ナンバー、歌ものにおける叙情表現は筆舌に尽くし難いほどの出来で、すでにして世界で通用するものである。また、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、エリック・クラプトンのナンバーもカバーし、ふところの深さ、広さをみせる。

新人のデビュー盤は大抵の場合、レコード会社その他関係者の言いなりになりがちで、当たり障りのないスタンダード・ナンバーがアルバムの大半を占めてお茶を濁すようなことですますのだが、井上銘はちがう。選曲に自分の意志、音楽に対する姿勢を強く打ち出している。この点も高く評価できる。

なににつけ、自己のない者、自己の世界観、価値観、美意識、流儀を通せない者は、遅かれ早かれ消えるものだ。井上銘の関係者は「何も足さない。何も引かない」という姿勢、態度で、井上銘を伸びるに任せておけばよい。余計な匙加減、彩色は一切無用にして不要である。そんなものはなにひとつ井上銘のためにならないばかりか、井上銘の類まれなる才能をスポイルすることにもなりかねないからだ。

井上銘にはこれまでの価値観、守旧派の思惑、利害得失、損得の物差しは一切通用しないものと心えるべきだろう。繰り返すが、井上銘の音色、透明感と深みとやわらかさと豊かさを併せ持ったギター弾きは希有なのだ。

音色にかぎって言うならば、今の段階で井上銘は渡辺香津美より、パット・メセニーより上をいっている。井上銘の紡ぎだす音色は意図して出せる類いのものではない。そして、音楽が人間の心、魂のためのものであるとするならば、いかなる楽器であれ(生身の人間の「声」も楽器のひとつだ)、最終的に行き着くのは「音色」であるということ。これは重要なタームである。さらに、井上銘の独特の速度感とリズム感。これは是非ともいい方向で伸びていって欲しいものだ。

井上銘はギターを手にしてから5年でジャズ・セオリーとテクニックを完全にマスターし、日本ジャズ界のトップ・シーンに躍り出た。「天才」という表現のほかに言葉がみつからない。これにさらに速度感と強靭さが加わったなら、音楽史に名を残す表現者になれるだろう。海外留学を契機として、世界に向けて井上銘は飛翔する。

Super Mayよ、どこまでもどこまでも飛翔んでゆけ。井上銘の始発列車は終点のない最終列車、最終解答、αでありΩである。


First Train - May Inoue/井上銘

Track Listing
01. First Train (May Inoue)
02. Hawk’s Eyes (May Inoue)
03. Ganeze (May Inoue)
04. Tell Me A Bedtime Story (Herbie Hancock)
05. Village (May Inoue)
06. Relaxin’ (May Inoue)
07. Darn That Dream (Jimmy Van Heusen)
08. Kashimir (Jimmy Page, Robert Plant, John Bonham)
09. Diamond Dust (Barney Holland)
10. The Other Side Of The Earth (May Inoue)
11. Change The World (Gordon Scott Kennedy, Wayne Kirkpatrick, Tommy Sims)


Personnel
井上銘 May Inoue (g)
泉川貴広 Takahiro Izumikawa (pf,key,org)
柵木雄斗 Yuto Maseki (ds)
若井俊也 Syunya Wakai (b)
太田朱美 Akemi Ohta (fl)
早川惟雅 Yuiga Hayakawa (as)
松井宏樹 Koki Matsui (as)
*メンバーは全員20代。

First Train - May Inoue
Tell Me A Bedtime Story - May Inoue




     
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