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流儀と遊戯の王国#15 扇子とセンスとパラダイムとエピステーメーと蘭奢待の女

 

Kyara800PX.jpg
 

 京都嵯峨野に工房を構える孤高の扇子職人の手になる渋扇のいくたりかを入手した。七寸五分の渋扇。扇骨は本煤竹、扇面は本手漉きの嵯峨野和紙、かなめは錫、手描きの景色、「矯め皺」の景色。いずれも素晴らしい。文句のつけようがない。溜息が出るほどだ。本伽羅が実にほどよく薫きこめてある。扇ぐと仄かで品のよい甘い香りをともなって清風が起こる。蘭奢待ほどではないが濃厚濃密さが奥のほうにひっそりとある伽羅。
 おもしろいので、ガジンに目利き、見立てをさせようと思った。ガジンは鼻が利くだけでなく、審美眼、観察力、鑑識に秀でているので、果たしてガジンがいかような目利き、見立てをするものか、心が躍り、浮き立った。
 早速、電話する。呼び出し音3回目でガジンは電話に出た。めずらしいことだ。よほど心の塩梅がよいとみえる。事の成りゆきを話すと、ガジンは愛想もへったくれもなく、ぶっきら棒に「今から行く」とだけ言って電話を切った。来たら、薪雑把でぶっ叩いたうえに、雑袍に包んで外縁川に放りこんでやる。


Sensu800PX.jpg


「こりゃ、すごい。無駄も華美も思わせぶりもなにもない。なにもないというところがすごい。無の美。あるいは捨象、切り捨ての美だ」
「ほほう。では、こいつが中国製の100円ショプものだと言ったらどうする?」
「それはないね。絶対にない。中国製の100円ショプものに伽羅が薫きこめてある道理がない」
「ところが ──」
「ところが?」
「中国製の100円ショプものだ」
「うそだろう?」
「うそだ」
「やっぱり」
「さて、せっかく遠路はるばる来たんだ。ここからどこかへ着地しようじゃねえかよ」
「だな。じゃ、センスの話にしようぜ。相手は扇子なだけに」
「そのまんまじゃねえかよ」
「そのまんまだろうとなんだろうと、おれは今ちょうど、センスのことについて考えているところなんだ」
「ほうほう。で、答えは出たのか?」
「出た。センスの悪い輩とは金輪際関わらない」
「そりゃ、大正解だ」
「うん」
「センスの悪い奴はなにをやっても駄目だからな。センスの悪いやつは大抵の場合、恥知らずだし」
「だな」
「で、センスとはなんだと思う?」
「さて、そこだよ。そこ。センスってのは一体全体なんなんだ?」
「情報と知見の組み合わせ方だ」
「情報と知見の組み合わせ方」
「そうだ。情報と知見の組み合わせ方がセンスの善し悪しを決定する。情報弱者、デジタル・ディバイドは論外として、いまや情報、知見はPCとネットの応分のスキルさえあれば大概は手に入れられる。センスの問題はそこから先に、得た情報、知見をいかに組み合わせるかということだ」
「だな」
「そして、その組み合わせ方の善し悪しはすべて内なる真言が決定する。内なる真言を持たない者は情報弱者と五十歩百歩ってこった」
「センス、パラダイム、エピステーメー。それら中にあるモノとコトを統合するのが内なる真言ということだな」
「まさにな」
「で、この扇子は内なる真言を持つ者の作ということでFAなわけか?」
「だ。おまえにも1本くれてやる」
「ありがてえ。最近、妙にいやな汗をかくことが多かったもんでね。遠慮なくもらっとく」
「もらっとく? ただで?」
「カネとんのかよ!」
「おれのマネー・センスについちゃあ、よく知っているはずだ」
「ひでえ!」
「ダーティ・センス、ヒール・センスについても」
「相変わらず鬼だなあ」
「鬼こそは無駄無様不調法不作法を一切合切省いた者のことである」
「鬼のいぬ間に命のセンス磨きをしなきゃな」
 二人同時に笑い声をあげたとき、伊達帯に鳥獣戯画の描かれた京扇子を白刃のように挟んだ蘭奢待の女が格子戸の隙間から入ってきた。蘭奢待の幻惑蠱惑の濃密な香りが部屋を押しつぶしそうなほどに広がった。また命が削られる。


Ranjatai1000PX.jpg





     
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