FC2ブログ

Entries

幾千億の朝、幾千億の波。そして、幾千億の太陽#1 あれは幻の波だったのか?

 

BIGWAVE800PX0103.jpg
 

 あれから10年も忘れられたBIG WAVE 遠くに揺れてるあの日の夢 K-K-K


 40年近くが経ったいまでも思う。「あれは幻の波だったのか?」と。そして、「伝説の水曜日の大波を待ちつづけながら生きた日々は夢だったのではないか?」とも。いや。あれは幻でも夢でもない。実際にあったことだ。伝説の水曜日の大波も伝説の水曜日の大波を待ちつづけながら生きた日々も。伝説の水曜日の大波が押し寄せる轟々という音ははっきりと耳に残っているし、伝説の水曜日の大波を待ちつづけながら生きた日々に起きたことどもはこの拳と眼と肌と、そしてなによりも心の中にくっきりと残っている。焼印、烙印のように。いくら時間が経っても癒されぬ痛みさえともなって。それを感傷と呼びたければ呼ぶがいい。どうとでも好きなように解釈するがいい。なんと言われようと思われようと痛くも痒くもない。探られる腹は贅肉の鎧で覆われている。腹の中身はいつからかサヨリもびっくりして背びれをおっ立てるほどの真っ黒黒助だ。心はとっくのとうに石ころ同然、転がせばコロコロカラカラと乾いた音がする。


BIGWAVE800PX0205.jpg


 幾千億の波と幾千億の太陽と幾千億の星と幾千億の朝の話だ。波乗りと波乗り野郎どもと湘南の話でもある。タフでクールでヴァイオレンスでハードボイルド・ワンダーランドだ。村上春樹? それってうめえのか? ダシはきいているか? 歯ごたえはどうなんだ? 村上春樹とやらがハルキンボ・ムラカーミのことなら、やつはササキマキ色のベントレーの後部座席にふんぞり返った揚げ句に、株と素人だかカブトシローだか相手に株価操作を喰らわして兜町界隈でお尋ね者になったのをこれ幸いと株価を乱高下させ、最期はカフカ海岸で腰抜けのくせに図体だけはでかい大波にさらわれちまって、いまは行方不明だ。悪いがよそを当たってくれ。係じゃない。完璧な文章の話も完璧な絶望の話も出てこない。鼠やら羊やら双子の姉妹やら色きちがいどもも出てこない。巡礼だのナイーヴなロースハムなんぞ知ったこっちゃない。
 登場するのは異形ベイビーのおれ様と元牛乳屋の七里ガ浜珊瑚礁のアロハ髭デブおやじと伝説の水曜日の大波、人呼んで稲村ジェーンとそれらにかかわる人々だ。酒の話はテンコ盛りだ。どいつもこいつも大酒飲みばかりだからな。食いものの話もシコタマあるぜ。なんせ、アロハ髭デブおやじは洋食屋の偏屈店主だからな。それと音楽。そして、当然女。そして、いくつかの不思議。感傷は少しだけあるが、手にあまるほどではない。悲しみもいくつかあるが、泣くほどのことではない。第一、他人様に見せるほどの量の涙はもう一滴だって残っちゃいない。最後のダイヤモンドの一滴はとっておきだ。秘密の場所に隠してある。江ノ島と稲村ヶ崎と渚ホテルを結んだ三角形のどこかにな。三角形の内側か外側か。そいつは教えられないね。死んだアロハ髭でぶおやじとの約束だ。

 幾千億の朝を迎え、幾千億の波を超えてもなお、われわれが求める本物の波をわれわれはこの手につかめずにいる。だが、この話はそこから始まる。終りがあるかどうかはわからない。間に合うかどうかさえ。間に合えばいいが。いつかは伝説の水曜日の大波をはるかにしのぐ本物の波に会えればいいが。そして、アロハ髭でぶおやじに届けばいいが。


BIGWAVE800PX1958B.jpg


*珊瑚礁のアロハ髭デブおやじよ。おれはあんたがくたばった齢をとうにすぎ、いまや偏屈乱暴狼藉爺さんまっしぐらだ。2000年にあんたが死んで以来、おれは七里ガ浜にも稲村ヶ崎にも背を向けてきたが、13年を経て、おれは帰ってきた。あんたの七里ガ浜に。あんたといっしょに稲村ジェーンに乗った稲村ヶ崎に。笑ってくれ。そして、少しだけ微笑んでくれ。そして、例のくしゃくしゃの笑顔を一瞬でもいいから見せてくれ。そして、あの頃とおなじドスのきいた嗄れ声を聴かせてくれ。そして、ベランメエ調で説教し、あの頃のように「馬鹿野郎!」と怒鳴ってくれ。
 あんたが手塩にかけた珊瑚礁は海店も山店も安泰だ。若衆たちはどいつもこいつも礼儀正しく、元気溌剌オロナミンC百年分だから安心しな。ただし、1日3食限定の「海老みそカレー」がメニューから消えたのはどうしても納得いかねえぞ。なんとかしてくれよ。おれ様はと言えば、大好物の「ビーフサラダ」が、いまではひと皿平らげるのもやっとこさっとこという体たらくさ。あの頃は3つも4つも喰えたのにな。寄る年波ってこったな。笑ってくれ。
 お頼みひとつだ。おれが海に入るときはいい波を立たせてくれ。波乗りの神サマに取り合ってさ。豊葦原瑞穂国、東海の小島の磯に初めてロングボードを持ち込んだあんたがそれくらいしたって、バチは当たるまい。ただし!「バッチグー!」なんぞと抜かしやがったら、ピュアブラック&ホワイトのライトニング・ボルト仕込みの稲妻アッパーでブットバース!



SITIRI_SUNSET800PX_20130728110719.jpg





     
    関連記事
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://diogenezdogz.blog.fc2.com/tb.php/572-2d0ab7c9

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    プロフィール

    自由放埒軒

    Author:自由放埒軒
    Festina Lente.
    No Pain, No Gain.
    Fluctuat nec Mergitur.
    R U Still Down Gun 4?
    玄妙の言葉求めて櫻花
    薄紅匂う道をこそゆけ

    最新トラックバック

    カテゴリ

    Festina Lente.

    R U Still Down Gun 4?

    カレンダー

    10 | 2019/11 | 12
    - - - - - 1 2
    3 4 5 6 7 8 9
    10 11 12 13 14 15 16
    17 18 19 20 21 22 23
    24 25 26 27 28 29 30

    アクセスランキング

    [ジャンルランキング]
    小説・文学
    688位
    アクセスランキングを見る>>

    [サブジャンルランキング]
    オリジナル小説
    103位
    アクセスランキングを見る>>

    QRコード

    QR

    樽犬の子守唄

    Didie Merah
    Blessing of the Light

    樽犬が全速力で探します。