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日曜の夕暮れ前のスターバックスのテラス席と『言語にとって美とはなにか』と金持ちの団塊男#1

 

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 金持ちの団塊男は『言語にとって美とはなにか』で呪法と変容する。 E-M-M

 M-Dの『ビッチェズ・ブリュー』を愛する男は孤独に耐えきれなくなっていた。 E-M-M


 いま、横須賀の軍港を目前にするスターバックスのシーサイドビレッジ店の2階のテラス席にいる。夏の始まりを告げる乾いた風が心地いい。巨大な潜水艦が3隻、星条旗がたなびく巡洋艦が5隻、最新鋭のイージス艦が2隻停泊している。まさに軍港だ。そして、国際政治のいくぶんかを象徴する風景でもある。
 30分ほども前から隣りの席の人物が気になって仕方ない。年の頃60代後半から70代前半。まちがいなく団塊世代だ。身なり服装からみていかにも裕福そうだ。腕時計はパテック・フィリップのカラトラバ。淡いブルーの麻のパンツ。素足にはトップサイダーのネイビーのデッキシューズを履いている。元町若松屋で誂えたインド綿の白いBDシャツ。BDシャツのすそを外に出し、オフホワイトのサマーセーターを肩から羽織っている。髪型はクルーカット。中々の男前。眼鏡はサビルロウのSR-エグゼクティブ。加山雄三と村上春樹とワイルドワンズの融合体だと思えばほぼまちがいない。問題は彼の表情には爽快さ、明るさがないことだ。深刻そのもの。苦悩と痛みがあらわれすぎている。身なり服装とふさわしくない表情の原因は彼が読んでいる書物、あるいは読書自体にあるのではないかと私は考えた。気づかれないように書名を確かめる。吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』だった。
 私はあやうく椅子から転げ落ちそうになった。功成り名を遂げた金持ちの団塊の男が日曜の夕暮れに海に面したスターバックスのテラス席で吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』を読んでいるというのは、まちがいなく異質な風景であるように思われた。吉本隆明に特別の思い入れでもあるか、逆に強い憎しみを持っていなければありえないことだ。
 彼の姿は読書というよりも苦行に勤しむ修行僧にみえる。痛々しいほどだ。眉間の皺、ときおり吐き出す嘆息のような呻き、ごく小さく呟きも聴こえる。呪文のようだ。『言語にとって美とはなにか』を呪法の書として読んででもいるのか? いや、そんな話は聴いたことがない。しかし、世界は思っている以上に広く、想像を遥かに超える風変わりな出来事が起こる。今私が目撃しているのも「広い世界に起こった風変わりな出来事」のうちのひとつかもしれないのだ。このあと、私の興味本位から始まる些細な出来事は思いもよらない方向へと急展開をみせ、想像を遥かに超える地点に着地する。




     
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