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フツーの犬のこと

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 ワン公を里親に出した。ワン公の名前はくんちゃん。つきあいは17年になる。灰色の、冴えない、ごくごくフツーのワン公であるくんちゃんは、ある時は私を励まし、ある時は私を叱咤し、ある時は私を勇気づけてくれる、サイコーにゴキゲンなやつだった。 
 くんちゃんと初めて会ったのはバブルがはじけ、街からけばけばけばとげとげした空気が消え、だれもがフツーであることになにかしらの魅力を感じはじめた頃だった。夕暮れどき、くんちゃんは防衛庁近くの六本木の路上で、南米系の胡散臭い毛唐のそばに、アルパカの毛糸の帽子やらナスカの地上絵の猿や蜘蛛やハチドリが刻まれた石ころやら安っぽいラピスラズリのペンダントやら賞味期限が切れていそうなターコイズのブレスレットやらまがいもの臭いケーナやらに囲まれてじっとうずくまっていた。

「イヌ、買うですか?」と南米系毛唐。
「イヌ、買うです」と私。
「千円ですか?」と南米系毛唐。
「千円ですか?」と私。
「千円、いいです」と南米系毛唐。
「千円、いいです」と私。

 交渉成立♪ 私はくんちゃんを受け取り、乃木神社に寄り道して1時間ばかり考えごとをし、それから家に帰った。そのあいだ、くんちゃんは吠えもせず、オシッコもせず、ただじっと、フツーの犬としての役回りをたんたんとこなしていた。17年間、くんちゃんはいついかなるときにもくんちゃんだった。変身も変節も変体も変態もしない、フツーであることを忠実にこなすワン公だった。スーパー・ドッグに仕立てあげようと、あーでもないこーでもないそーでもないと色々なことを試みた時期もあったが、くんちゃんにはどうやらスーパー・ドッグになるための才能がないらしく、ただ私をじっと見つめるしか能のない、けれど物静かでやわらかでしなやかなからだと心を持った、血統書もワン力もない、ただの、フツーの犬のままだった。でも、くんちゃんを見ていると、フツーであることのよさを考えるきっかけを与えてくれる瞬間がよくあった。フツーの犬がフツーのままフツーに生きつづける。それはもしかしたらすごいことなんじゃないのかとか、くんちゃんは考えさせてくれるのだ。だから、くんちゃんは、私にとっては名犬ラッシー以上に名犬で、忠犬ハチ公よりも忠義にあついサイコーのワン公だったのだ。くんちゃんを里親に出したのは、くんちゃんにフツーでサイコーでワンダフルなだけのワン公じゃなくて、立派なワン公になってもらいたかったからだ。それで、私は「讃岐うどん傷心旅行」のさなかに知り合った西の国の探偵さんにあずけることにしたのだ。 

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 くんちゃん。私はおまえを捨てたわけじゃないよ。いつか、おまえがフツーでサイコーでワンダフルで立派な犬になったらば、かならず私はおまえを迎えに行くからね。 
 くんちゃん。それまで、夏の初めの空みたいに爽やかで広くてしなやかな心を持った探偵さんの言いつけをちゃんと守って、一所懸命、フツーでサイコーでワンダフルなワン公でいるんだよ。いいね、くんちゃん。私は1秒だってもくんちゃんのことを忘れたりしないから。いつも、いつでも、くんちゃんのことを思ってるから。そして、いつか、くんちゃんがフツーでサイコーでワンダフルで立派なワン公になったとき、私はおまえを迎えにいくよ。たとえ、それが真夜中でも、私はすっ飛んでいく。そしたら、昔のようにふたりでいっしょにさくら橋のたもとの土手で日向ぼっこしようね。そして、いつまでもいつまでも、ずっとずっと、いっしょにいよう。その日までさようなら、くんちゃん。夏の初めの空みたいに爽やかで広くてしなやかな心を持った探偵さん。フツーでサイコーでワンダフルなくんちゃんを、どうぞよろしくお願いします。

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