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ハルキゴンチチ・デイズ#5 日曜日のうた、光のうた

 

Hubris-Richard_Beirach1000PX.jpg
 

 雨上がりの日曜の世界が光匂い満ちてあるように。 E-M-M


 正確に35年ぶりにリッチー・バイラークのピアノ・ソロ作品、『Hubris』を聴いた。1曲目、『Sunday Song』がしみた。とてもしみた。
『Hubris』を手に入れたのはキース・ジャレットをはじめとするECMレーベルの音源をすべて集めようとしているさなかだった。
 生まれて間もない嬰児をかき抱くように『Hubris』を抱いて帰った。部屋に着くなり、アンプリファイアーに灯をいれ、DENON DL-103の針先をメンテナンスし、厳粛な儀式に臨むような気分で『Hubris』の汚れのない盤面に針を落とした。1曲目、『Sunday Song』。かすかなスクラッチ・ノイズのあとに、透明で悲しみさえたたえたピアノの音が聴こえはじめた。一ヶ所、なんの前触れもなく転調するところでは心が軋み、揺れた。ミニマルとも思えるような主旋律が繰り返される。そのメロディは心の奥深くまで染みこんでくる。染みこみ、静かに、とても静かに揺らす。揺さぶる。揺りかごの中で揺れているようにも思える。母親の白く細い腕と手さえみえるようだ。なぜか涙があふれた。涙は次から次へ、はらはらといくらでも出た。
『Sunday Song』。5分24秒の悲しみ。3度目の「5分24秒の悲しみ」が終わろうとするときに電話が鳴った。
「OとTが死んだ。コンテナに突っ込んだ。即死だ。本牧で。本牧埠頭で」
 電話の主はうめくように言った。必死に涙をこらえているのがわかった。1978年6月16日金曜日の夕方、雨上がりだった。雨は前の週から1週間も降りつづいていた。
 電話をきり、再び、『Sunday Song』、「5分24秒の悲しみ」に針を落とした。そして、繰り返し聴いた。『Sunday Song』が葬送の曲のように聴こえた。早すぎ、惨すぎる死を迎えた二人の友の底抜けの笑顔が浮かんでは消えた。

「いきなり転調しやがって。”革命的な死” ”英雄の死”ってのはこのことかよ。へたくそなポロネーズだ。愚か者めが」

 何度目の『Sunday Song』だったか。部屋の中が急に光に満たされた。あたたかくやさしくやわらかな光だった。幾筋もの光の束がまわりで舞っていた。純白の睡蓮の花弁からこぼれでるおぼろげな光。その光の束はジヴェルニーからやってきた淡く儚くおぼろな光だった。
 やがて光の束は窓を抜け、晴れ上がった世界のただ中へ帰っていった。それは死んだ友の葬列ともみえた。そして、『Sunday Song』を、『Hubris』を封印した。二人の友の思い出とともに。
 35年が経った。もうそろそろ封印をとこう。彼らについて語るときがきたのだ。たとえそれが他者にはどうでもいいようなことであっても、私にはかけがえのない時間、世界、言葉を孕んでいるのだから。彼らを思い、彼らの笑顔を思い、彼らの言葉を思って語りはじめよう。そして、雨上がりの日曜には『Sunday Song』を繰り返し聴くことにしよう。雨上がりの日曜の世界が光匂い満ちてあるように。(Closed BooK)

 Sunday Song - Richie Beirach




     
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    [C142] 寝言は寝て言え。小僧。

    おれとガジンの日々は、言葉はおまえのような小僧若造には永遠にわかりえぬフェーズにあるんだ。おれの眼を注がせるくらいの言説を身につけてからおれになにか言え。
     シークレット・コメントなんぞという腐れたことはするな。それが「吾輩文体」だ。おぼえとけ。
    • 2013-06-16 20:24
    • 自由放埒軒
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    • 編集

    [C143] 大天才と大秀才の原爆固めだ。

    大天才と大秀才の原爆固め合戦をdionくんはリアルタイムで目撃できていることをありがたく思うがいい。黙って、ライパチ末次してればいい。おわかりか?
    • 2013-06-16 20:30
    • 自由放埒軒
    • URL
    • 編集

    [C144] 1文字100円だぞ。dionくん。

    おわかりか? なにごとも「本物の一流」はお高くつくんだ。おぼえとけ。そして、二度と忘れるな。忘れるようなら、「物静かに退場しろ」ってこった。おぼえとけ。
    • 2013-06-16 20:33
    • 自由放埒軒
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