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ハルキゴンチチ・デイズ#4 Sex, Drugs and Rock'n'Roll

ハルキゴンチチ・デイズ#4 Sex, Drugs and Rock'n'Roll
 

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 Sex and drugs and rock and roll is all my brain and body need.
 Sex and drugs and rock and roll are very good indeed.
I-D+C-J


『風の歌を聴け』の鼠は「セックスシーン」がなく、だれも死なない小説を書くことを試みる。だが、これは20世紀末世界においては欺瞞に満ちた行為だ。20世紀末世界においては、だれもかれもが手当り次第にセックスをし、ベトナムを中心とした「戦場」で多くの人が挽肉となって死に、アフリカとバングラデシュでは毎日何百何千という人々が、「文学」やら「ロンパリ・サルトル」やらによっては救いえないかたちで餓死していた。そのような状況の中で「セックスシーン」がなく、人間が死なない小説を書こうするのは、マフィアに「道徳」を説くのとおなじ程度に無意味で不毛だ。あるいは木っ端役人どもに善良さを求めるようにも。20世紀末世界においては、年端もいかない小学生までもがナパームの慈雨を浴びながらピンクパンサー色のカブトムシとセックスをしていて、緑のおばさんはおぼつかない足取りで横断歩道を渡るニクソン・ベイビーの首を刎ねていたのである。もっとも、20世紀末世界においては世界は無意味と不毛とロックとドラッグで出来上がっていたから、鼠の試みはなにがしかの象徴的な意味を持っていたと言えないこともない。そして、悪いことには、21世紀初頭世界は「性」と「死」の意味はさらに混迷を深めている。

 金持ちの友人が一人いた。彼の家は横浜の磯子にある、のちに山王台という高級住宅地となるエリアの地主だった。近くには磯子プリンスホテルがあって、ホテルの敷地は庭先のようなものだった。その友人こそが「森の漫才師サルー」だ。森の漫才師サルーはことあるごとに言ったものだ。
「途方もない額のカネや広大な土地やいったい0がいくつつくのかわからないような財産は人間を愚かにする。守りきれるわけがないのに守ろうと必死になるからだ。おれは金持ちが大嫌いだ。親も兄弟も親戚もみんな嫌いだ。自分自身もね」
 そのときの森の漫才師サルーの眼からは怒りと憎しみの炎が吹き出していた。その炎に焼かれ、実際に何度か火傷したほどだ。火傷の跡はいまでも右腕の上腕二頭筋に残っている。
「でも、そのおかげでおれたちは七里ガ浜の別荘で1985年のひと夏をたのしめたんだ。愉快で痛快で爽快な『アール・クルー日和』をすごせたんだ。おまえが満足げに乗り回しているロールスロイスだって、おまえの家が金持ちだから手に入れることができたんじゃないか。おまえのそういう態度をこそ”欺瞞”て言うんだ」
 森の漫才師サルーは反論できなかった。反論できるはずもない。森の漫才師サルーは金持ちであることによってあらゆる快楽と不思議と冒険を手に入れていたからだ。
 小田実は『何でも見てやろう』の結論として、「カネがないことによって、本来、旅のさなかに経験できるはずのことが限定されてしまうくらいばかばかしいことはない」と言ったが、旅にかぎったことではない。この腐った世界はカネがなければ見ることも聴くことも食べることもできない。口笛ひとつ吹くにもなにがしかのカネがいる。指パッチン1回につき500ドル徴収する街がアメリカ南部にはあるし、パリのフォーブル・サントノーレ通りにはウィンドウ・ショッピングしていると8フラン請求してくるブティックがある。バゲットが2本買える値段だ。まったくもってふざけた世界だ。カネにからむ問題は間尺に合わないことだらけである。しかし、それがわれわれが生きている世界の実態でもある。さらにばかばかしいのは、それほど幅をきかせているカネが実は国家という暴力装置、夜郎自大が生み出し、押しつけているつまらぬ「幻想」にすぎないということだ。どんな高額紙幣であっても尻ひとつ満足に拭けやしないことを忘れるべきではない。大陸風に向ってたどりつけるのは苛酷酷寒のミル・プラトー、ゴビ砂漠にすぎない。ミル・プラトーとゴビ砂漠には拭く尻すらない。(Closed BooK)




     
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