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ジョナサン・リヴィングストン・シーガル氏の無謀なる賭け#1

 

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 取り立てて生きる理由はないが、同様に死ぬ理由もない。苦労してまで捨てるほどの価値は人生にない。 J-R


 15歳。歯を剥き出し、体中の毛を逆立て、自分自身さえをも傷つける愚かで凶暴で欲望にまみれた季節。

「こんなことではだめだ。あの孤独で明晰な長距離走者のように、スミス少年のように、もっと洗練されたやり方で世界に反旗を翻すんだ! おれはどんなに苦しくとも、自分ひとりの力で世界を駆け抜けてゆく長距離走者なんだ。疾走しろ! 疾走するんだ! ゴールの物干綱など引きちぎってやれ! なんなら、ガンソープもエイレシャムも引き連れて」

 反逆の精神と反抗の才能を手に入れるためにアラン・シリトーを探す旅に出てから3日目、15歳の私は海辺の街の断崖でジョナサン・リヴィングストン・シーガルと出会った。1958年生まれ。55歳。ジョナサン・リヴィングストン・シーガルの眼は炯々として辺りを睥睨し、射抜くような眼差しは実際に2羽のカモメを射ころしてしまった。鮮血に染まったカモメの意志を失った骸はひらひらと舞うように青い海面に向かって落下していった。
「おれに逆らえばこうなる」
 ジョナサン・リヴィングストン・シーガルは群青色の海をみつめながらつぶやいた。ぞっとした。次の瞬間、ジョナサン・リヴィングストン・シーガルは断崖から飛び出してしまった。
 断崖の縁に駆け寄る。海面まであと50メートル。20メートル。ジョナサン・リヴィングストン・シーガルは流線型の青い弾丸に変わっている。目も覚めるような青さ。群青の海がくすむほどの青さ。青い海に向かって突き進む、世界のすべてを撃ち抜く青い弾丸。
 落下速度はどんどん速くなっていく。当然だ。生身の人間が重力加速度の影響から逃れることはできない。万有引力の法則からも。
 海面まで5メートル。2メートル。1メートルまで迫ったところで、ジョナサン・リヴィングストン・シーガルの大きな体が一瞬にしてコバルト・ブルーのカモメに変わった。青いカモメは眼を凝らさなければ海に溶けいってしまうように思われた。
 ジョナサン・リヴィングストン・シーガルは海面すれすれで右の翼を大きくひねり、反転した。それがジョナサン・リヴィングストン・シーガルの危険きわまりない賭けを見た最初だ。




     
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