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ジュークの春#5 筋肉ダルマゴリラ現る。

 

Gorilla1000PX.jpg
 
 落としのヤスさんにつづいてやってきたのは年の頃40代半ば、猪首で脳味噌が筋肉でできていそうなダルマゴリラだった。右耳がつぶれて新華楼のギョーザのようになっている。おそらく、一番強面の奴を送り込んできたんだろう。愚かな奴らだ。
「おう。あんちゃん。うちのデカ長をずいぶんいじめてくれたそうじゃねえか。え? どうなんだ?」
 吾輩はしばらく筋肉ダルマゴリラを観察分析することにした。筋肉ダルマゴリラの弱みを把握するためだ。
 筋肉ダルマゴリラはドブネズミ色の机をその分厚くてうすらでかい手でガンガン叩いた。筋肉ダルマゴリラが机を叩いている間、吾輩は世界をシャットアウトし、ヴェルディ・ミドリカワ・マコの『ジャン=ピエール・ウィミーユとピエール・ヴェイロンのためのル・グルマン24のソネット』とフランツ・ヨーゼフ・ハイドンの『弦楽四重奏曲第41番 ト長調 Vivace Assai』を交互に大脳辺縁系ならびに大脳新皮質で奏でていた。射精寸前の快感が全身に広がった。
 2度目の『ジャン=ピエール・ウィミーユとピエール・ヴェイロンのためのル・グルマン24のソネット』第3楽章が終わったところで世界を再び元に戻した。筋肉ダルマゴリラのダミ声が耳に入ってきた。
「ダンマリかよ、あんちゃん。時間はたっぷりあるんだ。じっくりいこうじゃねえかよ。え?」
 吾輩は『ジャン=ピエール・ウィミーユとピエール・ヴェイロンのためのル・グルマン24のソネット』と『弦楽四重奏曲第41番 ト長調 Vivace Assai』を交互に大脳辺縁系ならびに大脳新皮質で奏でながら考えていた筋肉ダルマゴリラに言うセリフを一気にまくし立てた。
「おう。ゴリさんよお。ずいぶんと御大層にワルぶってすごんでるけどよ、あんた不良経験あんのか? あん? どうなんだよ。無免もチャンサイもやったことねえんだろ? 殴り合いのケンカしたこともねえんだろ? おう? どうなんだよ」
 筋肉ダルマゴリラが息を飲むのを吾輩は見逃さなかった。「イジメられっ子が柔道にでも精を出してクソ田舎の県大会で優勝したか? いや、一番ってつらじゃねえな。ぎりぎり6位入賞ってとこがせいぜいだろうぜ。得意の組み手は右の奥襟か? 機動隊じゃあ鉄砲玉だったんだろ? 全学連の小僧っ子どもに鉄パイプだかゲバ棒だかでぶっ叩かれて何回気を失ったんだ?」
 筋肉ダルマゴリラは口をもごもごさせた。ここは一気にたたみかけるところだ。
「ようよう。どうしたんだよ。図星で驚いたのか? え? なんとか言いやがれってのよ。脳味噌も筋肉でできてんのか? 憲法読んだことあるか? 刑法は? 刑事訴訟法は? 刑事訴訟規則は? 少年法は? 世界人権宣言は? マグナ・カルタは? 御成敗式目漢字で書けるか? 武家諸法度は? ジャン=ジャック・ルソーの『孤独な散歩者の夢想』を読んだことあるか? なんとか言えよ、能無し!」
 筋肉ダルマゴリラはぶるぶると震えだした。顔面蒼白。歯を食いしばっている。歯軋りしている。目に涙を浮かべている。白目充血。鼻腔が大きく膨らんでいる。地団駄を踏んでいる。グロッキー状態。あともうすこしでTKOだ。いや、完全なK.O.だ。
「昇進試験は何回落ちたんだ? まだ警部補になれねえのかよ。うすのろの税金泥棒野郎! 穀潰しのうすらばかめが!」
 筋肉ダルマゴリラは完全に戦意喪失していた。
「口惜しいかよ、うすらばかうすのろまぬけの筋肉ダルマゴリラさんよ。どうしたんだよ。袈裟固めでもかけてみるか? 得意なのは寝技だけだろう? あるいは馬鹿のひとつ覚えの一本背負いか? 内股か? なんとか言いやがれよ! このポンコツボンクラヘッポコスカタン!」
 筋肉ダルマゴリラがどんどん小さくなっていく。縮んでいく。いいぞ。そのまま跡形もなくなっちまえ。
「特別公務員暴行凌虐罪知ってるか? 知らなきゃ教えてやるよ。刑法第195条だ。7年以下の懲役または禁錮だぞ。馬鹿女房が泣くな。くそガキは学校でイジメられるだろうな! おまえが刑務所に入っているあいだに、おまえの馬鹿女房はどんな野郎と乳繰り合うんだろうな。何人の男のチンポをしゃぶるんだろうな? いまここで椅子から転げ落ちて頭かち割ってやろうか? それとも机に顔面打ちつけるか? そんでおまえにやられたって裁判官に泣きついてやるよ。民事の損害賠償請求もたっぷりしてやるからな。これから先、訴訟の嵐が待ってるぞ。身ぐるみ剥いでけつのケバまで1本残らず抜いてやるからよ。腹くくっとけよ」
 吾輩はさらにつづける。
「定年まであと何年だ? 定年後はガードマンか? 薄暗い倉庫で守衛か?」
「もう勘弁してくれよ」
「勘弁しねえよ。てめえが発狂するまでつづけてやる」
 筋肉ダルマゴリラは半べそだ。いや。もう滂沱の涙を流している。ざまあない。吾輩は天下御免のNBFMS, ナチュラル・ボーン・ファンキモンキー・サディストだ。




     
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