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ジュークの春#3 ナチュラル・ボーン・サディスト

 

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 パトカーは3台やってきた。雪崩を打つように路地に入ってくるなり、荒々しくドアが開いた。中からいかにも屈強そうな男たちが6人飛び出してきた。「こんなゴリラどもに警らをやらせる理由はなんだ?」と思ったが、考えても無駄だった。警官にさよならを言う方法がないことと、彼らにまともな「論理」を求めても無駄なことはフィリップ・マーロウとコンチネンタル・オプがとっくの昔に証明している。
 ゴリラどものうち、一番年寄りのゴリラがジョンソン&ジョンソンのシャット巡査くんになにごとかを耳打ちした。クサイにおいは元から絶たなきゃダメ巡査くんは涙目で何度もうなずいてから吾輩のほうを見もせずにその場から去っていった。そして、年寄りゴリラが吾輩に近づいてきた。
「あんた、名前は?」
 今度は本当に息がウンコちゃんだった。それも糞袋に三日も四日も御滞在あそばした逸品のウンコちゃん。吐きそうになった。いや、実際吐いた。年寄りゴリラの息は臭いだけではなくて、いやな熱を帯びていた。ウンコちゃん臭いといやな熱とが腕を組んで吾輩の顔面にまとわりつく。吾輩は鼻で息をしないように注意しながら年寄りゴリラの眼を見据えて言った。
「名前? なんで見ず知らずのあんたに言わなきゃならないんだ?」
 年寄りゴリラはほんの少しだけうろたえた。吾輩はすかさずたたみかけた。「警職法に基づいてまず警察手帳を提示しろよ」
 吾輩と年寄りゴリラのやりとりをすぐそばで見ていたゴリラどもが間合いを詰めはじめた。年寄りゴリラはそれを制するように手を振り、胸のポケットから警察手帳を取り出した。
「見えない。もっと近くに」
 年寄りゴリラは警察手帳を開き、吾輩の鼻先まで近づけた。あ。指先がイカ臭い。ひどいじじいだと吾輩は思った。息はいやな熱を帯びたウンコちゃんで、指先はイカ臭いなんて警察官はそうそういるものではあるまい。吾輩は鼻に指を突っ込んだ。
「名前その他を書き留めさせてもらうぜ」
 吾輩は銀杏のシンボルマークの入った大学ノートに年寄りゴリラの名前を書き留めた。「で、どうする?」と吾輩は言った。
「仕事だから」と年寄りゴリラが言った。
「主語も目的語も抜けているからあんたの言いたいことはまったく伝わらない」
「名前と住所を教えてくれよ」
「教えなければならない義務はない。犯罪の嫌疑でもあるのかよ」
「ないよ」
「ないなら答える必要はないじゃねえか」
「だから仕事なんだよ。訊くのが」
「あんたにとっちゃ仕事でもおれにとっては不愉快で臭くて時間の無駄なんだよ」
 楽しくなってきた。すごく楽しくなってきた。吾輩はNBS, ナチュラル・ボーン・サディストだ。




     
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