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時間とベケットとラマヌジャンとメタモルフォーシス

 
 
Metamorphosis-Philip_Glass800PX1.jpg


ガジンと並んで大きなラピスラズリの石に腰かけ、きわめて加算的付加的なインド音楽のリズムでサミュエル・ベケットを待っているあいだ、時間は普段よりずっと間延びし、のっぺりとした貌をみせつづけた。

私とガジンの前をラヴィ・シャンカール色のタクシーがひっきりになしに通りすぎた。ガジンは私が制するのも聞かずにラヴィ・シャンカール色のタクシーのナンバーからラマヌジャン・タクシー数1729を91個みつけた。

「悪魔が来ちゃうじゃないか」と私はガジンに言った。
「あんたが悪魔だろう?」
「なんだ。知ってたのか」
「そりゃね。知らなきゃ、伊達や酔狂で酷寒のミル・プラトーの頂上で2年もデジタルべジタリアンとしてデジタル・デバイド・バイトの日々を引き受けたりしない」

そのうち、「間の山」のほうから『浜辺のアインシュタイン』と『屋根の上の1000台の飛行機』と『水素のジュークボックス』と『めぐりあう時間たち』と『メタモルフォーシス』が聴こえてきた。

「もう一日待とう。明日ベケットがこなければ首を吊ろう」

私が言ってもガジンはもはや私の言葉を理解できない怪物に変身していた。フィリップ・グラスの『メタモルフォーシス』の作品5が終わると同時にガジンは蒼穹に向かって急上昇し、小さな点になり、消えてしまった。「明日ベケットがこなければ首を吊ろう」と思った。

Philip Glass: Metamorphosis




     
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