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アカエイと淫する南方熊楠翁のガマン汁の元は粘菌である。#1

 

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 すでに我が国馬関辺では、アカエイの大きなのを捕えて砂上に置くと、その肛門がふわふわと呼吸に連れて動くところへ、漁夫が夢中になって抱きつき、これに婬し、終わるとまた他の男を呼び、喜びを分かつのは、一件上の社会主義とでも言うことができ、どうせ売って食ってしまうものなので、姦し殺したところで何の損にもならない。情欲さえそれで済めば一同大満足で、別に仲間以外の人に見せるのでもないので、何の猥褻罪も構成しない。かえってこの近所の郡長殿が、年にも恥じず、鮎川から来た下女に夜這いし、細君がカタツムリの角を怒らせ、下女は村へ帰っても、若衆連中が相手にしてくれないなどに比べれば、はるかに罪のない話である。 南方熊楠『人魚の話』


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 さて、古今東西に並ぶ者なき「森羅万象の巨魁」「知の大巨人」である南方熊楠翁の記憶力、博覧強記ぶりにはほとほとあいた口が塞がらぬ吾輩である。
 ある小春日和、武蔵野の小春おばさんの家の縁側で日向ぼっこがてらに『和漢三才図会』の綴じを繕っていた南方熊楠翁が突然、「きみきみ。近頃、中沢新一とかいう小僧がバッハバッハと喧しいようだが、あれはいったいぜんたいどういう料簡なのだ?」と言い、「耳にたいそう小癪なので、行ってどうにかしてきてくれまいかね?」と吾輩を促した。
「先生がどうしてもと仰るのであれば、わたくしとしてはその中沢新一とかいう小僧を野うさぎと一緒に煮るなり、野生野蛮焼きするなり、チベットまで蹴り飛ばすなりいたしますが、どういたしましょうか?」
「どうしてもというほどでもないのだがね。小癪に障るていどなのだがね」
「ではこうしましょうよ、先生。先生秘伝の粘菌汁の大元を少しくわたくしに分けていただけますまいか? ちょいとこのごろ、アレのほうの塩梅がいまいち潤いに欠けておりますもので」
「きみきみ。それはまた随分と難儀なことを申し向けてくるじゃないかよ。吾輩も寄る年波でアッチもコッチもガタが来ているところへもってきて、昨今の愚劣愚鈍な土地開発土地改良によって粘菌どももめっきり数が減っているのだよ。よって、粘菌汁の手持ちは吾輩の分しかない」
「うーん」
「ではこうしようじゃないかよ。アカエイのいいのをつらまえて、きみに極上極楽の思いをする秘法を伝授しようじゃないか」
「ええええええっ! あの湯ぼぼ酒まらを凌ぐとも言われるアカエイボボリコをですか!」
「そうさ」
「是非是非にお願いいたしますよ、先生!」
「よし。わかった。ではさっそくアカエイをばとっつかまえにいこうではないかよ」

 こうして、南方熊楠翁と吾輩はアカエイ獲りの仕度に取りかかった。


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