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「三枝点」をめぐるいくつかの視点#1

 

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 イラッシャーイ。宇宙人生構造力学上、もっとも重要な概念である「三枝点(SAEGUSA FULCRUM POINT, SAEGUSA SUPPORT POINT)」について述べる。「三枝点」は次の3点からなる。

 1. 新たな自分への旅が、その刹那に始まる地点
 2. 新たな世界への扉が、その刹那に開かれる地点
 3. 新たな宇宙への時間が、その刹那に動き出す地点


 三枝点について論及する前にわれわれは時間についての問題を共有することから始めなければならない。「時間は垂直に積み重なるのか。水平に連なり進むのか」というヘラクレイトス以来未解決の問題の前でわれわれは1指パッチンに65刹那の身悶えをする。このとき、われわれは「垂直に積み重ねられたはずの過去がワンクリックですべて水平に並列に現象化すること」を経験する。そして、次の声を聴くこととなる。

「そう、あのテラス席は確かにけやき坂だった。そして、レナウン・イエイエガールの祝福の吐息はマセラティ5台とフェラーリ3台よりも大きな富と悲しみを与えてくれるのよ。」

 この声の主はだれか? 声の主はさらにつづける。

「そういえば、ガーデンプレイスで拾ったタクシーの運転手さんは、都内で一番、麻布十番界隈が嫌いだって毒づいてたわ。一通も多いし道は狭いし、なによりも今はなき旧地名の坂! 地図で探せない坂ばかりを行き先で告げられる!って。あなたは階段の坂の下のカフェでカプチーノなんて、ありきたりでバカみたいって思うでしょうけど、やっぱり傾く午後の陽射しは気持ちよくて、相手と半分こしたはずのケーキは、わたしの方が多く食べちゃって、やっぱりこんなのバカみたいって思うけど、そう思うことがバカみたいでバカみたいなのはわたしだと、ようやく観念してみたりするのよ。わかる?」
「わかるよ。」

 だれだ? 「わかるよ。」と言ったのは。ダイアローグはつづく。

「なんだか、真夏の夜の夢みたいね。垂直に積み重ねられたはずの過去がワンクリックですべて水平に並列だなんて。」
「垂直に積み重ねられたはずの過去がワンクリックですべて水平に並列な件については、海南鶏飯食堂のウッドデッキでシュレディンガーの猫を膝にのせて撫でながら、六本木高校の壁の野郎、おもいっきり迫ってきやがるぜ! 小西! ガチャピン! 借景のつもりだろうが、そうは問屋制家内手工業だぞ! マッキャン・エリクソンに言いつけちゃうからな! と純粋理性の二律背反することでほぼ解決するらしいよ。らしいよ。」
「ふと思うのよ。そもそも時間というのは垂直に積み重なるのか、はたまた水平に連なり進むものなのか? って。やっぱり飼うなら、アビシニアンでもアメショーでもなく、シュレディンガー・キャットにかぎるわね。それともなければ、チェシャ猫。六本木高校の壁の上に、最後まで笑い声を残して消えていくの。ねえ、世界はこんなことでいいのかな?」
「いいんだよ。これでいいんだ。いつか、きっとどこかにたどり着ける。円環はまちがいなく閉じられる。だから、われわれは悠々として急がなくちゃならない。いいね?」
「うん。Festina Lente! ね!」
「そうだとも!」


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 たとえば、検非違使忠明が障子に映った下女の影に怯えて押し入れの中に隠れちゃう。そんで、奴はぶるぶる震えつづける。1回震えるごとに「1ぶっさり」徴収するとして、10回震えたら10ぶっさり。このあたりは「ローマはなぜ滅んだか?」を因数分解するセットで習ったよね。X軸Y軸Z軸それぞれに「縁」がまとわりついているわけだから、もうひとつの軸は当然にLA VIE EN ROSEでなきゃならない。ということはつまり、21時57分にドイツ軍兵士が真空管ラジオに齧りついたのだってまんざら理解できないこともないし、「パリは燃えているか?」ってロンメルに直電したアドルフの気持ちもいくぶんかは汲んでやらなくちゃならない。そうすれば、午後のお茶の会だっても、きっと豊饒と親和と神話に満たされるはずさ!

 と、ここまで私は自動書記したわけだけども、これこそが、イマ・ココの時間の連なり、換言すれば「遅延」「差異」の集積になるわけです。本来、ないはずの「時間」を現前化させる作業がディスクールすることにほかならないと言える。ブランショもデリダも言ってるんだから、まちがいない。エコール・ノルマル・シューペリウールの68年で乾杯するに値するくらい美しく危うく妖しい結論だ。だが、問いはまたすぐに産声をあげる。

 ゆるいカーブを描いて並べられたドミノのように、教師の授業なんか耳に入らない学生が描いた教科書の片隅のパラパラ漫画のように、世界はまだ存さぬ、しかし確かな将来と延びた軌跡をなぞるものだなんて、そんなアフォーダンスまがいは神経症の学者の夢だった。

「指をパチンとはじいた一瞬に、刹那は65コも詰まっている。まだ見ぬ大陸の葡萄畑の午後、吹き渡る黄金色の風は豊穣そのもの。そしてオーパス・ワンのテイスティングは25$/1グラス」

 声の主、夏服を着た女はクレープデシンのワンピースの裾を66涅槃寂静のあいだ摘んだあと、67無量大数分のため息をついた。

「ちがう。初めていっしょに観た映画は『グレート・ギャツビー』なんかじゃない。あの人はいつも肝心なところでまちがえる。」

 夏服を着た女のまわりで淡い紫色の雲が踊りはじめる。夏服を着た女は思う。「人間」が打ち寄せる波によって消し去られて以降、都市には記号と仮説が溢れはじめた。いわく、おセレブさん。いわく、イケメンくん。いわく、ヒルズ族。いわく、ヤマンバ・ギャル。だけど、彼らのいずれもが「孤独の人」の住まう、中心が空虚なドーナツ・シティで踊っていることに気づいていない。だから彼らはイカさない。だから彼らは異化しない。他個どもに囲まれて蛸踊りに興じるだけだ。かくして、イカとタコの階級闘争は永遠につづく。

「それにしても、あの人はいったいいつになったら”本当のこと”を教えてくれるんだろう?」

 夏服を着た女はコケモモのジュレをスプーンで掬いながら思う。「どうでもいいことはいっぱい教えてくれたのに。」

 夏服を着た女のまわりで踊っていた淡い紫色の雲が群青色に変わった。ブルカニロ博士がタリーズ麻布十番店のオープン・カフェの階段でつまずき、通りを挟んで向かいにある薬局のぽっちゃり女はサプリメントの陳列に余念がない。榛色のグレート・デーンを連れたタトゥー女は今日も不機嫌である。


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