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東京ディープ#1

 

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 東京は日々誕生し、刻々と死ぬ。

 東京は深部、深場だらけだ。路地を一本入っただけでディープな光景が矢継ぎ早に目に飛び込んでくる。目線、眼差し、聞き耳、嗅覚、手触り、速度、そして覚悟。あるいは直感。あるいはひとかけらの勇気。必要な道具はそれだけだ。「トーキョー海っぱた探索」の帰路、暮れなずむ晴海埠頭の深部へとなにかに誘われるようにして迷い込んでみた。吾輩を誘ったのは東京の磁力でもあったろう。磁場には金属が蝟集する。その磁場の中心、その磁場の意志の中心がメタル。


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 晴海埠頭はそのやけに晴れやかな名の裏側にメタル墓場とでも呼ぶべき影の部分を抱え込んでいる。巨鯨の骸の群れのように折り重なった業務用冷蔵庫とディスプレイとコピー機、暗い熱情を発する大型変圧器、スパイラルな鎮魂歌を奏でる自動車の衝撃吸収材、終りなき巡礼に悲鳴を上げながら腐敗しゆく樹脂とタイヤの山脈。その他もろもろの金属の瓦礫。かつての最先端技術が無秩序と混沌の墓場に埋葬されるときを待っている。その向こうに聳えているのは無際限に増殖しつづける巨大な構造物群だが、まぎれもなくその群れは巨大な墓標にしかみえない。その巨大さは巨大さゆえに「意味」を失いつつあるようにも思える。そしてやがて、廃棄物の王が風に乗り、水に運ばれ、日々の糧、食物に溶け込んでわれわれの生活の中に一陣一閃のナイフとなって音もなく侵入する。ベクレルあるいはシーベルトという冠を拝戴して。その冠は否応なく一人一人の人間に冠される。被曝という名のもとに。
 出口なし。逃げ場なし。永遠の囲い込み運動のただ中でわれわれは呼吸し、生殖し、生き、死ぬことを強いられる。われわれを軛する者たち自身もこの「軛」から逃れることはできない。そのような桎梏の物語を紡ぎ、語り、生きることを選択したのはほかでもない、われわれ自身である。


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 吾輩は幻視する。死にながらいまだに「意味」を問うモノと、生まれながらに「意味」を喪失しているモノを。死んだものと生まれるものを。このふたつが目線の先で重なりあい、絶妙の阿吽で呼応する。そして目と鼻の先の銀座では、きょうも無防備な欲望をさらけだす人々がわが世の春を謳いあげている。生産と消費と廃棄の無限のトリロジーを読み解く術はいまのところない。
 予告され、先送りされた「終末」と引き替えにだれも足を踏み入れていない「異界」へ、だれも踏んだことのないステップで吾輩は研ぎ澄まされたナイフとなって深く静かに侵入する。疾走し、閃光を放ち、白刃となった吾輩はつかの間、異形の者となる。東京ディープのはじまりだ。


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 蛇足
 その昔、東京都が公募したゴミ、廃棄物を減らそうというプロジェクト、「東京スリム」の標語公募で最終審査において落とされた吾輩の応募作のキャッチコピー。そりゃ、落とされるはな。呵々大笑。だが、そのときのA4版300ページに及ぶ企画書とボディコピーはいまだに有効である。いや、いまこそ有効である。いずれ公開する。

 おまえら、そのゴミどうすんの?




     
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