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On the Road, On the Beat, And Load Out#3 路上の結末(3/42)

 

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 史上最高の植物漫才コンビ、フェルディナント・フォン・ソシュールミューラーとジャン・ジャック・マグナムを乗り越えることが私と森の漫才師サルーの当面の目標だった。

 私と森の漫才師サルーは国会議事堂の正門前で並んで立ち小便をし、警備の警察官どもに追いかけられた。自民党本部あたりで息が切れかけたが、われわれには捕まるわけにはいかない事情があった。マーサー・ガーサー爆弾を持っていからだ。マーサー・ガーサー爆弾は『腹腹時計/都市ゲリラ兵士読本』を愛読していた森の漫才師サルーのものだ。森の漫才師サルーの5歳上の姉は東アジア反日武装戦線のメンバーのパートタイム愛人だった。
 赤坂見附の高架を走っていると、みるみる力が漲ってきた。青山通りに出てもわれわれは速度を緩めなかった。緩めるどころかひと足ごとにわれわれの歩く速度は上がっていった。
 スウェーデン大使館の近くの高橋是清記念公園の林の奥のベンチ。
「苦悩するビーバー・カモノハシよ。われわれは本物の革命家だな」と森の漫才師サルーが言った。そして、ヒップ・ポケットから銀色のボトルを取り出して勢いよくキャップをあけて飲み、袖口で真っ赤な口をワイルドにぬぐってから私にボトルをよこした。ボトルの中身はスピリトゥス・レクティフィコヴァニだった。火の酒。なまくら者を灼きつくす酒。銀河系宇宙一強い酒だ。そのときの私と森の漫才師サルーには強くて揺るぎない酒が必要だった。私は眼を閉じ、世界のささやきに静かに耳を澄ました。青山通りを群れをなして泳ぐ数百万の『アメリカの鱒釣り』たちが水面を跳ねる音が聴こえ、かれらの黒ずんだ鰭がまばゆく輝くのがはっきりとみえた。
「そのとおりだ。われわれは史上最高の革命家だ」


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 夜明けの青山通りを歩いていると、神宮外苑の銀杏並木からマイケル・ヘッジスの『Funky Avocado』を口ずさみながらミスター・ダンディの「エマージェンシー・ジョルジュ・ムスタッシュ」をつけた女の子が現れた。そして、私と森の漫才師サルーの前に立ちはだかった。
「あたしはファンキー・アボカド娘のアサガスエ・カミ。ちゃんとおぼえておくのよ。夜明けの青山通りを歩くときはいつもかならずあたしのことを思いだしなさい。いい? わかった?」
「うん」
 私と森の漫才師サルーは同時に答えた。
「それとね、物事を簡単に諦めちゃだめよ。いい? 絶望しても諦めない。絶望でさえ生きる力になることがあるの。わかった?」
「はい」
 私と森の漫才師サルーはやはり同時に返事をした。
「ところで、ファンキー・アボカド娘さんは人間ですか? 神様ですか? それとも妖精とか精霊のたぐいですか?」
 森の漫才師サルーは妙に改まってたずねた。もっともで的確な質問だ。
「あたしは幻の精よ。眩ましの精でもあるけど。夏にはゲンゲンムシに変身して新ワラシベ・システムの拡大に精を出すの。あなたたちもどう? 新ワラシベ・システムをひと口」
「おもしろそうだけど僕たちは一文無しなんだ」と私は言った。
「おカネ? おカネなんか一銭もいらないわよ。あたしから1本のワラシベを受け取って、それを価値が右肩上がりしていくようにあの手この手を使って物々交換していけばいいだけのことよ。わかった?」
「すごくよくわかったけど、裏があるんじゃないの? 実はマルチ商法だったとかいう。あるいはインチキ宗教かカルト教団の手を替え品を替えた勧誘とか」
「ないない。絶対にない! 世紀のファンキー・オーバー・ザ米寿のトヨ婆の保証付きよ!」
「ええええええっ! あのトヨ婆が?!」と森の漫才師サルーが驚きの声をあげた。
「そうよ! トヨ婆はあたしのおばあちゃんよ!」
「やります! いますぐ始めます! 新ワラシベ・システムを!」と森の漫才師サルーはウナズキ・ブラザーズの右のほうのように立てつづけにうなずいた。
「あなたはどうする? ピスタチオくんは」
「どうして僕のことを?」
「新ワラシベ・システムを一所懸命やってるとなんでもお見通しになるのよ。で? どうする? あなたはやるの? やらないの?」
「ではひと口乗らせていただきます」
 ファンキー・アボカド娘のアサガスエ・カミはラオス色をしたイナバウアー状態のモンクさんが描かれたキャンバス地のトートバッグからみごとにしょぼくれたワラシベを2本取り出した。ちょうど青山通りに朝の光が射し始めたところだった。ワラシベは朝の汚れのない陽の光を受けて神々しく輝いた。青山通りの反対側で偽物ボブとマーサー・ガーサーがわれわれに向かって手を振っているのがみえた。

 Load Out/Stay (Just a Little Bit Longer) Live BBC 1978 - Jackson Browne


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