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On the Road, On the Beat, And Load Out#2 路上の結末(2/42)

 

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 さあ、出発しよう。そして、歩きつづけよう。いつまでも。どこまでも。ピスタチオのように香ばしく、マカダミアン・ナッツのようにしたたかに。 E.M.M.

 うしろから肩を叩かれる。森の漫才師サルーだった。森の漫才師サルーは噴水の水溜りの中に膝まで浸かっていた。森の漫才師サルーは震えながらヘッドフォンを外すように促す仕草をした。初舞台に立った新人俳優のようにぎこちない動きだったが十分に森の漫才師サルーの意図は伝わった。大事なのは相手に伝わるかどうかだ。それ以外はクソの役にも立たない。吹けば飛ぶような嘘くさいことこのうえもない百万言の感謝の言葉も人助けと称するまやかしの善意も。

「あんたがいま聴いているのは The Brooklyn,Bronx & Queens Band の『On the Beat』だろう?」
「うん。なぜわかった?」
「へっへっへ。耳と勘だけはいいもんでね。生まれつき」
「うらやましい。では、ぼくも。きみは先週からジャック・ケルアックの『On the Road』を読んでいるね?」
「うげっ! こりゃたまげたな。なぜわかった?」
「ふふふ。観察眼と山勘だけはいいもんでね。生まれつき」
「こりゃ、まいったね。おれは森の漫才師サルー。あんたは?」
「苦悩するビーバー・カモノハシ」
「いい名だ。いいともだちになろう」
「うん。そうしよう」
「手始めに乾杯だ」
 森の漫才師サルーはそう言うと、ヒップポケットからマイヤーズ・ラムのヒップボトルを取り出した。そして、モリアーティの右ストレートのように勢いよくキャップをあけて飲んだ。ゴルフボールくらいある喉仏が動くのが妙に生々しくて心臓がドキドキした。
 森の漫才師サルーはマイヤーズ・ラムを3口飲んでから私にボトルをよこした。私はパラダイスのように用心深くボトルを受け取った。私はマイヤーズ・ラムを注意深くひと口だけ飲んだ。私が飲み終えて息を整え、マイヤーズ・ラムのボトルを返すと森の漫才師サルーが言った。
「おれがマカダミアン・ナッツで、あんたがピスタチオということでいいのかな?」
「いいんだよ。それでいいんだ」
「香ばしさと旨味ではあんたにはかなわないけど、歯ごたえのよさとしたたかさならおれだって負けちゃいないぜ」
「うん。わかってるよ。きみの言うことはとても的確で簡潔でわかりやすい」
「ありがとう。では、出発しよう。そして、歩きつづけよう。いつまでも。どこまでも。ピスタチオのように香ばしく、マカダミアン・ナッツのようにしたたかに」
 いったいどこに向かって歩けばいいのかはちっともわからなかったが、とにかく歩きだすことになにかしらの意味があるように思えた。いままで生きてきた場所や街とはちがう場所、ちがう街。そして歩いてきた道とは別の道。ほかの街にはまた別の道があるんだろう。そんなことを考えていた。

 THE ROAD - Jackson Browne


RUNNING_ON_EMPTY-JACKSON BROWNE-1200PX





     
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