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あるギター弾きの死と再生

 

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 またひとり、死んでいた。Michael Hedges/マイケル・ヘッジス。ギタリスト。超絶技巧のスーパー・ギタリスト。1997年12月2日。交通事故死。享年43歳。 
 再度、言う。またひとり死んでいた。20年も前に死んでいた者さえいる。死んでいたのは、いずれもある時期の吾輩のアイドルたちである。消えてなくなればいい奴が大手をふって生きのび、生きていなければならない者が死ぬ。ふざけた世界だ。なぜ彼らの死に気づかなかったのか? 答えは簡単だ。彼らがこの世界とオサラバしたとき、吾輩は彼らのかかわっていた「世界」と断絶した「世界」に生きていたからである。それは吾輩の「音楽を聴かない時代」でもあった。そのような時期が20年つづいた。


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 1981年、マイケル・ヘッジスは、ウィンダムヒル・レーベルの総帥、ウィリアム・アッカーマンが満を持して世に送りだした『Breakfast in The Field』で衝撃的なデビューを飾った。名手にして古強者のアッカーマンをして「マジック!」と言わしめるほどのド胆を抜く超絶技巧の持ち主であった。デビューしてほどなく、マイケル・ヘッジスは、いわゆる「ニュー・アクースティック」の旗手として、その動向が注目された。それにこたえるかたちでギターの可能性、新境地を切りひらくような作品を発表していった。


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『Breakfast in The Field』はオーディオ装置のバランスをチェックするリファレンス・ソースのうちの1枚だった。とにかく録音がよかった。アクースティックの響きを損なうことなく、たっぷりと厚みのある音が記録されていた。1曲目『Layover』の1音がスピーカーから聴こえてきたときの衝撃はいまでもはっきりとおぼえている。
 ギターの常識をはるかに超える奏法。弾く、爪弾くだけではない。打つ。叩く。小手先、指先のみならず、全身を駆使してギターという「存在」と対峙する姿がありありと聴こえ、視えた。
 マイケル・ヘッジスの演奏にはギターという弦楽器がアルプスを越え、イラン高原を越え、太古のメソポタミアにたどり着くグレート・ジャーニー、「大いなる弦の物語」が語られているように思えた。
 吾輩は驚き、動揺し、うろたえて、部屋の中をあちこち動きまわり、しまいには頭を抱えこんだ。

 なんだこの音は! なんだこいつは!

 吾輩はまた彼らの生きていた世界に帰還した。そして、彼らの生きていた証しをCDプレイヤーで再生する。iTunesで再生する。彼らはとっくに死んだが、いま、こうして何度でも再生する。いい奴は死んだ奴だが、彼らは死の世界から何度でもよみがえり、生きつづける。彼らをよみがえらせるのは、われわれなのだ。

 アルテックA7シアターがうなりをあげ、鳴り響く。鳴り渡る。

 マイケル・ヘッジスよ、吾輩は帰ってきたぞ。

 Michael Hedges - Aerial Boundaries


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