FC2ブログ

Entries

なにごとかから卒業する世界中のすべての「きみ」へ

 

graduation00_1200PX.jpg
 

 J.P.サルトルは『存在と無』の中で感受性や思考がステレオタイプの人間を「くそまじめな精神」とそやし、もっとも軽蔑唾棄した。「くそまじめな精神」は自己や他者の本質のあらゆることどもを引きずりだそうとする。Aは「信用のおける男」だから信じていい、Bは「卑劣な男」だから付き合ってはならない、Cは「軽薄な男」だから用心しなければならない、という具合だ。

 一人の人間があるときある行為をすることについての仕組みは、実はよくわかっていない。ある行為の「原因」はほぼ無数にあり、追跡不可能であるにもかかわらず、われわれは行為のあとでわずかばかりの要因を「動機」として都合よく抽出し、「それらの動機が行為に駆り立てた」という「お伽噺」をでっちあげて得々としているにすぎない。
 動機ばかりではない。この世界において「解決済み」とみなされている因果律、意志、善悪、自由、存在などの諸概念がいったいなにを意味するかについてはいまだにわかってはいない。哲学することの「善きこと」は世界のほぼすべての事柄、事物、事態、事象は厳密にはなにもわからないのだということを知ることにあるとも言いうる。
 成長し、世界や社会や世間の冷厳冷徹な風雨荒波にさらされていくうちに「善く生きること」「哲学すること」はどうでもよくなり、「とにかく生き延びなくては」というお決まりの文句がすべてを薙ぎたおす。そうならないよういまのうちに気を引き締めておくがいい。得体の知れない不安にさいなまれ、震えているきみに「Bon Voyage!」の言葉とともに、持ち時間に比例して広がる可能性の素晴らしさときみの手中にあるものの大きさと深さと豊かさをいくぶんかの羨ましさとともに告げる。

 サルトル流にいうならば誰でもが否応なく「自由」のただ中に投げ出されている。禍福を他者のせいにするのも自由である。面倒なあれやこれや、あれか・これかを考えずに、あたかも「物」のように自身を固定化していくのも自由である。しかし、そういった類の選択はきみの精神を痩せ細らせる。貧しくする。つまらなくする。きみから真の意味の「自由」を奪ってしまう。「不幸」とはそういうことだ。
「自分はダメ人間なんだ」ときみは嘆く。そして、自分の本質を「ダメ人間」として意識・無意識のうちに決定し、それがきみ自身の「だれにもなりかわりようのない人生」を決定する。その責任はまぎれもなくきみ自身にある。つまり、きみは自分自身で自分を「ダメ人間」として選択したのだと言っていい。そのようなきみは未来永劫にわたって「ダメ人間」だろう。しかし、いったいなにが人間のやり方や行為を決定するかは「そのとき」にならなければわからないとも言いうる。まさに「一寸先は闇」なのだ。だからこそ、「いままで」を完全に絶ち切ってまったく新しいことを選択できるとも言える。

 おとなになるための条件は端的に言って二点である。ひとつは一人立ちすることだ。すなわち、親やその他の保護者の庇護の元から独立することである。社会的に認められる仕事に就き、経済的に独立することだ。もうひとつは他者に依存しない生き方を実現することである。これは自戒の意味もこめて言うが、自分と異質な人々を切り捨てるのではなく、大切にすることはいずれ人生の宝になる。もちろん、きみと異質な彼らは理不尽不条理に敵対もするだろう。彼らとの交流はいくぶんかの困難と困憊をもたらすかもしれない。そうであってもなお、彼らとの関わりはきみを宝石にする。これは経験則だ。

 いつかの遠い日の夏、285714285714粒/secの雨が降る七里ガ浜駐車場レフトサイドで「善きおとな」となったきみに会えるのをたのしみにしている。
 




     
    関連記事
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://diogenezdogz.blog.fc2.com/tb.php/315-3b2c82b0

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    プロフィール

    自由放埒軒

    Author:自由放埒軒
    Festina Lente.
    No Pain, No Gain.
    Fluctuat nec Mergitur.
    R U Still Down Gun 4?
    玄妙の言葉求めて櫻花
    薄紅匂う道をこそゆけ

    最新トラックバック

    カテゴリ

    Festina Lente.

    R U Still Down Gun 4?

    カレンダー

    10 | 2019/11 | 12
    - - - - - 1 2
    3 4 5 6 7 8 9
    10 11 12 13 14 15 16
    17 18 19 20 21 22 23
    24 25 26 27 28 29 30

    アクセスランキング

    [ジャンルランキング]
    小説・文学
    778位
    アクセスランキングを見る>>

    [サブジャンルランキング]
    オリジナル小説
    121位
    アクセスランキングを見る>>

    QRコード

    QR

    樽犬の子守唄

    Didie Merah
    Blessing of the Light

    樽犬が全速力で探します。