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スタンドバイミーの男#2 ワイルドで行こう

 
 
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イージー・ライダーズ
逗子の森戸海岸の海に真っ逆さまに沈んでゆく夕陽に赤く照らされながら、スタンドバイミーの男、ITは「イージー・ライダーズを結成する」と宣言した。その翌日、ITは盗んだ新聞屋のホンダ・スーパーカブ90に乗ってやってきた。中学1年の夏休み初日の朝だ。

ITは私の家の玄関前で「ダ~リンダ~リン♪」とホンダ・スーパーカブ90のアクセルを吹かしまくった。けたたましい音だった。世界中のお昼寝中の赤ん坊と眠りの森の美女と何年も大いなる眠りについている大鹿マロイが目を覚ますほどの。

窓をあけるとホンダ・スーパーカブ90にまたがるどや顔のITがいた。ITはチョッパー・ハンドルのハーレー・ダビッドソンに乗ったデニス・ホッパーとピーター・フォンダがプリントされた『イージー・ライダー』の黒いTシャツを着ていた。

「その重いケツを持ち上げて、とっとと仕度しろ。そして、ママにお別れのキスをしてこい。おれたちには時間がないんだ」
ITはそう言うとTシャツの左袖に巻き込んだハイライトを取り出して口にくわえた。私はもう何ヶ月も洗濯していないリーヴァイス501を履き、ちょっと酸っぱい匂いのするヘインズのTシャツを着てから、台所で朝めしを作っている母親に声をかけた。
「出かける」
「朝ごはんは?」
「いらない」

私は母親を抱き寄せ、キスし、別れを告げた。そして、家を出た。


「きょうからおれたちはイージー・ライダーズだ」
「いかすぜ」
「おれがビリーで、おまえがキャプテン・アメリカだ。いいな?」
「オーケイ。ハンセンはだれにする?」
「そうだな。だれがいいかな。ルート16をかっとばしながら考えよう」
「うん。それがいい。だけど、おれのキャプテン・アメリカ号がない」
「あるよ」
ITは斜め向かいの外人ハウスの玄関脇に停まっているシルバー・メタリックのホンダDAXを指差した。
「そりゃ、ちょっとやばすぎるだろうよ」
「なんにもやばくない。おれたちは自由だ。自由なイージー・ライダーなんだ。ビバ・アメリカだ。Born To Be Wild だ。ワイルドで行くんだ。おぼえとけ」

このようにしてわれらが「イージー・ライダーズ」は結成され、ひと夏のワイルドでMG5でウッドストックで生涯にわたって忘れえぬ冒険の旅は始まった。まずはハンセン探しからだ。

Steppenwolf - Born To Be Wild




     
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