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シュールストレミングのシュールな夜#1

 
SURSTRÖMMING_BLOG800PX

 忘れもしない。1990年12月24日、クリスマス・イヴのことだった。泡の祭りでひと山当てた成り上がりどもの集まり。
 食通を自認する地上げ屋のFが言った。
「ものすごいチーズがある。エピキュアという悪魔がね。いま、うちの冷蔵庫に入っている」
 いまは安売り王としてふんぞり返っている風車を巨人と勘ちがいした突撃ロバ男が言った。
「エピキュアなんぞかわいいもんだ。カオリフェより臭い食いものはこの世にない」
 それまで黙って聴いていた画商がここが出番とばかりに言った。
「一週間時間をくれ。そうしたら、おまえさんがたを地獄の底に突き落とすようなものすごいものを喰わしてやる。一週間後はちょうど大晦日だ。 ”そいつ”を囲んでパーティーと洒落込もうじゃないか。どうだ?」
 異議を唱える者はいなかった。吾輩は画商の言う「地獄の底に突き落とすようなものすごいもの」がなにか、おおよその見当はついていたが黙っていた。成り上がりの銭ゲバどもをぎゃふんと言わせるいい機会だと思ったからだ。一本独鈷でもある男たちは決断も話もはやい。宴の場所は修善寺にある老舗の温泉宿と決まった。
「樽。明日の朝一番でストックホルムまで飛んでくれ。いいな?」
「わかりました」
 その画商は吾輩の仕事上の重要なクライアントでもあったので断ることはできない。しかも、彼は「クィック・レスポンス」を信条とする気難しい人物でもあった。かくして、生涯にわたって忘れえぬ「シュールストレミングのシュールな夜」への胡散臭いことこのうえもないカウント・ダウンが始まった。




     
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