FC2ブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://diogenezdogz.blog.fc2.com/tb.php/22-dccdb60f

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

目的語のない女が「待つこと」に疲れはじめた夏の朝


morningsummer02.jpg


「わたしだけ、ひとりぼっち」と目的語のない女は言った。わたくしには目的語のない女にかけるべき言葉のひとかけらもなかった。彼女の味わっている孤独と不安と困難を癒すことのできない己が不徳、不甲斐なさにはらわたがよじれた。
 1995年冬。17年前から始まったジェットコースター・デイズをともに生きてきた戦友でもある目的語のない女。いつも予告なく姿を消すわたくしと、ただひとり代々木の殺風景な部屋に取り残される目的語のない女。放埓にかまけるわたくしから部屋の鍵を受け取り、南麻布から代々木まで、泣きながら歩いて帰った遠い春の日をおまえは生涯忘れぬだろう。ひとかけらのやさしさもねぎらいもなく出てゆくわたくしを見送ったあとの、寒いほどの孤独な夜。窓際のオーディオから流れる松任谷由美やゴンチチやモーツァルトをおまえはどんな気持ちで聴いていたんだ? 不条理、理不尽に待たされつづけた品川駅前、代々木の地下のバーをおまえはおぼえているか? にがいだけのジム・ビームのソーダ割りをおまえは飲み干せたのか? 「バーボン、バーボン」とおどけるおまえの目にたまっていた涙のゆくえを見届けることもなく、ふりかえることもなく、足早に去った。「けっこうありますよ」と言ってひろげた手の平には360円。金目のものをすべて売り飛ばし、「かたちになりました」と言って、わたくしに数枚の1万円札を差し出すおまえの顔の、なんと晴れ晴れとしていたことか。目黒の雑居ビルの3階。敷く布団もかける布団もない晩秋の夜。泡の時代の名残りのブルックス・ブラザース、ゴールデン・フリースのくそ重いオーバー・コートに二人くるまって眠った。フローリングの床がすごく痛かったな。寒かったけれども、暖かかったな、目的語のない女よ。冬の夜、厚顔無恥にも訪ねてきた馬鹿女に遠慮して、サンダルばきで出ていったおまえの後姿を忘れることはあるまい。目的語のない女よ。つらく、困難にみちて、不安と孤独にまみれてはいても、すべては宝石で、現在の日々もいつか必ず宝石になる。夏の朝の成層圏にはいつもいい風が吹く。

ブログランキング・にほんブログ村へ



    関連記事
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    http://diogenezdogz.blog.fc2.com/tb.php/22-dccdb60f

    トラックバック

    コメント

    コメントの投稿

    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    Appendix

    プロフィール

    自由放埒軒

    Author:自由放埒軒
    Festina Lente.
    No Pain, No Gain.
    Fluctuat nec Mergitur.
    R U Still Down Gun 4?
    玄妙の言葉求めて櫻花
    薄紅匂う道をこそゆけ

    最新トラックバック

    カテゴリ

    Festina Lente.

    R U Still Down Gun 4?

    カレンダー

    07 | 2018/08 | 09
    - - - 1 2 3 4
    5 6 7 8 9 10 11
    12 13 14 15 16 17 18
    19 20 21 22 23 24 25
    26 27 28 29 30 31 -

    アクセスランキング

    [ジャンルランキング]
    小説・文学
    1129位
    アクセスランキングを見る>>

    [サブジャンルランキング]
    オリジナル小説
    199位
    アクセスランキングを見る>>

    QRコード

    QR

    樽犬の子守唄

    Didie Merah
    Blessing of the Light

    樽犬が全速力で探します。

      上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。