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christian louboutin thigh high boots アノニマス・ガーデン/記憶のほとりの庭で |七里ヶ浜駐車場レフト・サイドで2000tの雨に打たれるまであと7日と13時間29分

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七里ヶ浜駐車場レフト・サイドで2000tの雨に打たれるまであと7日と13時間29分

 

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 曖昧で、名前すらつけることのできない空を見上げながら雨の気配を探る日々。かつて、われわれはそのような日々を「夏休み」と呼んだ。夏のはじまりにふさわしい純真と清冽と茫洋とあらかじめ失われた彼女の指先と彼女の「人生との和解」を見つけだすためにこそ私の夏はあった。


 遠い日の冬の夜明け前。
「あなたが帰ってくるとわたしの夏は始まるの」と彼女は言った。乳白色の手の中にティー・カップを包みこんだまま。「人生はやっぱりにがいより甘いほうがいい。冷たいよりあたたかいほうが。冷めた紅茶なんか見るのもいやよ」
 彼女の背中、右の第五肋骨のちょうど下にある大きな傷痕にふさわしいだけの言葉がみつからない。
「わたしの手に包まれたとたん、あたたかくて甘いはずのミルク・ティーはみるみる熱を失ってにがくなっていくの」
 彼女の手に包まれているティー・カップからはひとかけらの湯気も立ちのぼっていない。ひとかけらも。
「こんなふうにしてわたしの中からは日々、熱が奪われてゆくのよ。そして、最後にはわたしのすべての細胞は動きを止めて、マイナス273.15℃になっちゃう」
「だから僕は年に一度帰ってくるんだ。いくつもの悲しみをくぐりぬけて冷えきったきみを暖めるためにね」
「でも、そのあとは? その先は?」
「また来年」
「ふん」
 鼻を鳴らしたあと、彼女は唇を尖らす。そして、両手を目の前にひろげて指をみつめる。
「それにしても10本の指、じょうずに切り落とせたものだわね。ずっと昔からそうだったみたいに第一関節から先がない。完璧といえばこれくらい完璧なのはロートレアモンの『マルドロールの歌』とフェルメールの『青いターバンの少女』とバッハの『フーガの技法』くらい。いまでもわたしの10本の指先、ちゃんとしまってある?」
「もちろんだよ」
「いつかは返してよね。わたしの指」
「返すさ。返すだけじゃなくて、元どおりにくっつけてやるよ」
 私が言うと彼女はミルク・ティーをひと口だけすすった。
「やっぱり人生もミルク・ティーも冷たくてにがいよりあたたかくて甘いほうがいい」
「冷めたらまた火にかけて温めればいいし、にがいなら砂糖を足せばいい」
「もう!」
「偶蹄目?」
「ちがう! ちがう! ちがーう! ちーがーいーまーすー! まったくあなたって人はなんにもわかってない。初めて会った頃と少しも変わってない。成長なし、進化なし。いいこと? 苦渋と絶望はちがうものなのよ。苦渋は熱を生むこともあるけど、絶望は8月の太陽からも熱を奪い去るだけ。おぼえておいて」
「まちがいなくおぼえとくよ。次の夏までにはね。浪子不動に誓って」

 私は確かに浪子不動に誓いを立てた。しかし、彼女は夏が来る前に自ら死を選んでしまった。彼女がこの世界から消えて数えきれないほどの季節が過ぎていった。彼女の死とともに世界は徐々に色も匂いも熱も失っていき、いまはなにも色がない。匂いもない。熱もない。私の前にはなにもない茫漠とした世界がただ広がっているだけだ。
 夏が来て、雨の気配を探る日々が始まるたびに彼女のことを思い出す。そして、8月31日には七里ヶ浜駐車場レフト・サイドで2000tの雨に打たれる。彼女が残した10本の指と一緒に。2000tの雨に打たれてもなにも感じない自分が今年もそこにいるはずだ。

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