FC2ブログ

Entries

2B OR NOT 2B #1 柑橘系世界におけるある種の完全性

 

 吾輩は冬がこわい。恐怖と言ってよろしいと思う。冬将軍のやつに借りたまま返していない一般ピープー風の件と又三郎の風邪薬をくすねた件もさることながら、毎冬、吾輩はみかんをはじめとする柑橘系どもの食いすぎによる「黄疸症状」を呈するからである。吾輩はふだんは赤鬼のごとくに烈火の炎のごとくに赤い。ホピ族の盲目の長老が吾輩のあまりの赤さに驚いて炎の中心から飛び出したほどだ。浅草芸者の胡徳と豚八でめしを食っていたいとうせいこうなどと来た日にはビビって糸井重里と浅草小学校の教頭に「もう二度と自宅闘争なんかしませんから助けてください」とおかっぱ前髪を振り乱して泣きついた。そのときにいとうせいこうが限りなく透明な「禿毛」に近い「薄毛」であることが露呈したのである。高橋源一郎にいたっては元女房のバカ女、室井佑月こと八戸蕪島子の舌を引っこ抜き、マーズ合衆国大統領の口の中に放り込んで暗殺を謀った。室井佑月が舌足らず脳味噌のしわ足らずなのはそのせいである。
 さて、毎冬みかんをはじめとする柑橘系どもの食いすぎによって「黄疸症状」を呈する吾輩に救世主が現れた。マルセル・プルーストを読んだ物言う猫だ。マルセル・プルーストを読んだ物言う猫はふだんはときどき行方不明、たまに消息不明になるていどのファンキーぶりで周囲を木天蓼の煙りに巻くこととキース・ジャレットのパートタイム愛人をしているほかはいたって普通の女子刑務所の看守である。風にそよぐ斎藤こず恵の三段腹を見上げているときと喫茶室でおだやかな周囲のファム・ファタールどものさんざっぱらな罵詈雑言を聞いているときと100億円分のナメクジに全身を這いずりまわられる自分を想像しているときに「生きててよかった。JAL123便に乗り遅れてよかった」とモフモフするような人物である。マルセル・プルーストを読んだ物言う猫は猫だがついでに人間でもある。その証拠にマルセル・プルーストを読んだ物言う猫には人間の配偶者と人間の子がいる。「だからどうした?」と問われれば、「八百屋の五郎だ」と答えるしかない吾輩なわけではあるが。
 マルセル・プルーストを読んだ物言う猫の周りにはいつもチャイコフスキーの交響曲第6番ロ短調『悲愴』の第四楽章が聴こえている。うらやましい。しかも、指揮はセルジュウ・チェリビダッケでオーケストラは松脂をビチビチ飛ばしまくるチェコフィルである。それだけではない。マルセル・プルーストを読んだ物言う猫のまわりでは実に不思議な出来事が日常茶飯事、加藤TEAの女癖のように頻発する。枕からグレン・グールドの1955年と1981年の『ゴルトベルク変奏曲』が交互に聴こえる。これは毎週月曜日。火曜日はディヌ・リパッティのJ.S. バッハ『パルティータ No.1 in B Flat Major』、水曜日はエリック・ドルフィーの「音は虚空に消えてゆく」というつぶやき、木曜日はアルチュール・グリュミオーのパガニーニ『超絶技巧協奏曲』、金曜日は棟方志功による高橋竹山『津軽三味線ひとり旅』の朗読、土曜日はサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院聖歌隊による『グレゴリアン・チャンチキオケサ』、そして日曜日はサマンサ・タバサの『日曜は奥様は魔女はダメよ』が枕に頭をのせているあいだ中聴こえてくるのだ。腰枕にするとビミョーな振動がお役立ちらしい。ほかにもマルセル・プルーストを読んだ物言う猫の不思議な出来事は山ほどある。そのようにも類まれな幸運にめぐまれていながら、マルセル・プルーストを読んだ物言う猫は炬燵でわびしく「ピカピカみかん」の制作に没頭してwktk(和歌山とてもかても気になる樹)する旧財閥日立系の日々を生きる者でもある。侍月の半ばに卑怯にもいきなり飛びかかってきた仕事人中村ル・モンドに組みしかれ、ル・フィガロされ、ヴォーグされ、J.P. サルトルされ、デコンストリュクシオンされ、パロール・エクリチュール・ディスクール・ラングされ、シニフィエ・シニフィアンのバゲットされ、振りまわされ、頭突きをかまされたことを差し引いたとしてもうらやましい。裏山で待ち伏せしてやる。そして、マルセル・プルーストを読んだ物言う猫のこの冬に向けた剥けまくりの会心作がこれだ。

KAKURONMIKANLARGE.jpg

SORONMIKANLARGE.jpeg


 総論剥き御鎮座みかん、各論一列縦隊みかんともにすばらしい。ここには柑橘系世界におけるある種の完全性がある。「この猿剝き、ちょっとC1000タケダでしょ?」というエア・キャプションがいかにもマルセル・プルーストを読んだ物言う猫らしく奥ゆかしい。空っとぼけてはいるがなかなかどうしてその言語表現レベルがただごとでないことはお見通しだ。「ふつうのプールでおおおおおおおおおたくさんおよいでみたい」とディスクールする小学校1年生の女の子といい勝負ができると吾輩は思う。弟子が若輩にしてすでにみかんの皮剝きに「起承転結」を取り入れているというのであるから、小学1年生の秋の終り、自然が持つ二面性のうちに時間の経過を読み取った吾輩に通ずるものがあると言わざるをえない。この発見のよろこびは高円寺純情商店街裏手の愛人マンション屋上、ねじめ正一民具屋店主副業脳膜メンマ・カフェで無農薬栽培された紅玉りんごによる苺1a号パフェを見つけて心が躍ったときのF-1, F-2, F-3, F-4同時「ハーイ♪(シーベルトくん)」心的現象論本論42ページに似ている。オレンジがかったローズピンクの中にほんのりしたチェレンコフ・ブルーかつ低線量被曝の明るさがこもったベクレルの森のラジオアクティブな不思議さとでも言おうか。あるいは、「夕焼け色のジャンバラヤ」とも「早起きジム・ジャームッシュ」とも言いうる。これで、吾輩は「黄疸症状」など少しもこわくなくなった。どんどんじゃかすか柑橘系世界の王として世界を真っ黄色にしてやるのだ。冬よこい。「春よこい」はマットンヤ・ユミーンに任せてある。とにかく、春の前に、その全然前に冬よこい。まかりまちがって春の奴めが先に来ようものなら吾輩はおかどちがいに花粉症について心を痛めなければならない。それはまったくもって困りものだ。こまどり姉妹の右のほう、リリーズのやっぱり右のほう、ザ・ピーナツのポンコツ沢田研二と結婚していたほう、ついでにリットン調査団のつまらないほう(つまり両方)でさえもんどりうってしまう。そして、あさってからついに「ナット・キング・コール・クリスマス」が始まるのだ。

NATKINGCOLEXMAS01LARGE.jpg
 
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://diogenezdogz.blog.fc2.com/tb.php/183-a24e480a

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

自由放埒軒

Author:自由放埒軒
Festina Lente.
No Pain, No Gain.
Fluctuat nec Mergitur.
R U Still Down Gun 4?
玄妙の言葉求めて櫻花
薄紅匂う道をこそゆけ

最新トラックバック

カテゴリ

Festina Lente.

R U Still Down Gun 4?

カレンダー

10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
688位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
103位
アクセスランキングを見る>>

QRコード

QR

樽犬の子守唄

Didie Merah
Blessing of the Light

樽犬が全速力で探します。