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天国からカミナリ、天国にアローハ!

 
 
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IZはひとつ年下だった。IZは1997年6月26日午前0時18分に死んだ。38歳になったばかりだった。春の終りに天上界からやってきたIZは夏の初めに天上界へと帰っていった。

IZが死んだとき、まちがいなく世界は軽くなった。370kgぶん。そして、宇宙の涙の総量が2パーセント減った。吾輩はIZを悼んでチャンティングした。ポリネシアンたちが集まってきて最後は大合唱のようなチャンティングになった。

「そんなふざけた話があってたまるか」と思った。生きていなければならないやつが死に、死んでしまったほうが世界が2パーセントくらいよくなる吾輩のような者が生き残る。まったく世界はふざけた話ばかりで出来あがっているものだと思ったぜ。


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IZよ。おまえがいなくなって世界は確実に2パーセントくらいつまらなくなった。HAPAの『Pau 'Ole Ka 'I'ini』とテレサ・ブライトの『Hula Heaven』がなぐさめてくれた時期もあったけど、所詮、焼け石に水だ。長続きはしない。やっぱり、おまえがいないとな。そんなことは初めからわかりきってはいたんだ。F1にアイルトン・セナが欠かせなかったように、音楽、少なくともハワイアン・ミュージックにはIZが欠かせないんだ。少なくともこのおれの世界においてはな。


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IZよ。世界はますますつまらなくなっていくぜ。地上の楽園なんてとんでもない。そんなものはこの広い宇宙のどこにもありゃしない。地上の楽園があると言う奴やあると信じている奴は救いようのないバカか大うそつきかオニヒトデか野村沙知代か田嶋陽子だ。

地上の楽園なんかとっくに消滅しちまったんだ。地上の楽園があって、そこでは人間も動物も森の樹々たちも仲がよくて、毎日毎日、朝から晩まで笑い転げて暮らしていられたのは、おまえがまだ地上にいたころの話、昔々の大昔、神さまがまだヘソを曲げる前の話だ。

いまここは陰険で冷酷で姑息で臆病で狭量で鈍感で狡いやつばかりがおおきな顔をしてのさばる世界だ。息をするのさえ苦しいぜ。おれだけじゃない。大勢のやつが「息もできない」「居場所がない」って、落下傘も蝙蝠傘もなしでエンパイア・ステート・ビルヂングから飛降りてみずから死を選ぶ始末だ。中にはマリアナ海溝の一番深いところにスクーバ・タンクもレギュレーターもBCDもウェイトもフィンもマスクすらもなしで潜って、最期はスルメイカみたいにぺしゃんこになって死ぬやつもいる。

これもエンパイア・ステート・ビルヂングから落下傘なし蝙蝠傘なしで飛降りたやつらとおなじだよな? なんでこんなことになっちまったんだろうな。おまえはいい時期に逝ったのかもしれないぜ、IZ。

ん? カミナリが鳴ったな。聴いてたんだな、IZ。天国からカミナリとはな。いかにもおまえらしい。え? 「情けねえぞ、兄弟」って? そりゃね、歳も歳だしね。うんうん。そうか。いやなことばかりじゃないって? そうだ。そのとおりだ。

ついこのあいだの明け方、おれもそう思ったよ。いやなことばかりじゃない。いやなやつばかりじゃないってね。うんうん。オーケイ。アローハだよな。おまえの言うとおりだ。Akahai/やさしさと思いやり、Lokahi/調和と融合、Oluolu/よろこびをもって柔和に、Haahaa/ひたすら謙虚に、そして、最後にAhonui/忍耐と我慢だな。

オーケイ。わかった。もうすこしだけがんばってみることにするよ。お? またカミナリだ。うんうん。「そうだ。それがいい。もうすこしだけがんばるんだ、兄弟。アローハ!」ってか? わかったよ、IZ。天国に「アローハ!」のお返しだ。アローハ! 何度でもアローハ! どこにあるのかも、あるのかどうかさえわからない虹の彼方にも、このろくでもない素晴らしき世界にもアローハ! また夜が明けてきた。


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Israel "IZ" Kamakawiwoʻole


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