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超越論的美食学をめぐる人と超人とピュグマリオーンのためのキュイジーヌ#1


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勉強と事務処理と残務整理のために自分だけの集中した時間が欲しかったので、虹子とおねいちゃんたちとキッズどもを「今年の冬将軍様のおでましは早そうだから今のうちに南仏で光と風を体内に取り込んでおきなさい」と有無を言わせずに追い出す。帰還は2週間後だ。2週間の一人暮らし。ということは2週間の貴族生活。
なにはともあれ、朝のマルシェへ。朝夕の空気にはすでに冬将軍様の容赦のない気配がある。ダッフルコートの水牛フックを一番上までかけ、マフラーをきつく締めなおす。手袋を持ってきてよかった。元妻3号の見立てで買ったものだ。もう30年以上使っている。若かったな。ただひたすら若かった。ほかに表現のしようがない。そして、30年を経て、再婚相手に先立たれた元妻3号がおなじ屋根の下に暮らしはじめるという奇想と天外。世界の天井には実に色々なことが降りかかる。まあ、楽しいといえば楽しいし、愉快といえば愉快ではあるのだが。ただ、元妻3号に吾輩のアンビリーバボー・ライフ、ジェットコースター・デイズに付き合いきるだけのアビリティがあるかな。そこだけが気がかりだ。
楽しくないことは長つづきしない。無理と我慢をするからだ。それでは意味がない。無理と我慢は楽しい人生の大敵である。人生は思い出づくりのための舞台だが、その思い出は楽しくなければならない。嫌なこと気分の悪いことを我慢してえられるものになどこれっぽっちも価値がない。価値がないどころが害悪でさえある。はっきり言ってしまえば時間の無駄である。我慢して。辛抱して。無理をして。そんなものをありがたがる風潮が日本人にはあたりまえのように浸透蔓延し、肩で風を切っているが、うそっぱちもいいところだ。人生は苦いより甘いほうがいい。冷めた紅茶より温かくて甘いカフェ・オ・レのほうがいいに決まっている。「遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそ動がるれ」そして「なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」ということだ。
マルシェのテント張りの店々をひやかしつつ買物をするのは至福の時間である。食料自給率世界一の「農業国フランス」の面目躍如を目撃できるのはマルシェだ。おふらんすの文化を支えているのはまさにこの一点にこそある。実存主義も構造主義もサルトルもカミュもフコもレヴィ=ストロースもお腹をふくれさせてはくれない。ひときれのパンも生まない。涙とともに食べたパンは味がしない。人はパンのみのために生きている者がほとんどだ。それがレアリスムということである。
4軒目の肉屋でいいブレス地鶏を入手。20ユーロまけさせた。
「この商売をはじめて40年になるが値引きを要求したジャポネはムッシュが初めてだ。ムッシュはなぜそんなにフランセーズがうまいんだ?」
「吾輩が話しているのはフランセーズではない。そもそもフランセーズなどという言語は存在しない。吾輩が話しているのはフランシアンだ。おまえさんがもう少しまともなフランコプロヴァンスを話せるようになって、まともなフランコフォンになったら、そのときは正真正銘正統なラング・ロマネを教えてやるよ」
肉屋のおやじは目を丸くし、まいりましたとばかりにおまけのブレス地鶏を1羽袋に放り込んだ。なにごとも度胸だ。度胸が貴重なブレス地鶏を1羽いただくことをも可能にする。

ごくごくシンプルにキュイジーヌすることに決める。岩塩をすり込み、しばらく寝かせ、そのあいだに大嫌いな事務処理仕事をいくつか済ませる。顔面土左衛門が千年に一人の大食わせ者次官の勝栄二郎に操られる国のことを一瞬だけ考える。ややげんなりな気分。ふん。どうせもうじき終了する国だ。気に病むこともあるまいと自分に言い聞かせる。ときどきスカイプのコールがあるが黙殺。集中しているときの吾輩に取りつく島はない。頃合いを見計らってオーブンへ。待つこと37分。そのあいだに『赤と緑と青と Rouge, Vert et Bleu』の恋の道行きの相手方、マダム・プレヌリュンヌから電話。やや心拍数が上がる。香ばしく豊饒な香りがストゥーディオを満たしはじめる。オーブン・ザ・ルージュ・ドア。ルージュのオーブンの扉。虹子は実にセンスがよろしい。成功。傑作の部類に入る。当然、セ・シ・ボン。やはりマルシェで6本1ケースを6ユーロ(交渉のすえ、配達付きに)で仕込んだシャブリの白を3本も飲んでしまった。弟子のMITキッズが物欲しそうにみるので相伴させてやる。そのうち、仕事を片づけた弟子どもが次々と乱入。まさに、人生はバラ色である。酔いどれる前に師匠らしきことを言ってやった。
「いいか。おまいら。酒は飲んでも飲まれるなよ。いいな? わかるな? つねに、いつも、吾輩が死んだ以降のことを考えて仕事をしろ。そして、一人残らず本物の一流になれ。いいか? 一人残らずだぞ。いいな?」
だれも聴いていない。好き勝手に飲み、貪り食い、吾輩のオーディオ装置をいじりたおしている(どうでもいいけどさ。ソナス・ファベールのストラディヴァリ・オーマジュに少女時代だのKARAだのアフター・スクールだののK-POPを歌わせるのだけはやめてくれ!『Paparazzi』はたしかにイカした曲だが。TIFFANYちゃんはものすごくカワイイが)。吾輩のMac miniちゃんを操作している不届き者までいる(辻褄の合わないメール、メッセージ、コメントは弟子長の東京都港区出身マツダイラ・タダヨシの仕業ですので御承知おきください)。まことに極楽にいるような気分のひとときであった。そろそろ呂律がまわらなくなってきたたたたたったたたのでえぢあお終り。
「おっさん、一番酒に飲まれてるのはあんたじゃんよ!」という声が遠くに聴こえる。ありがたい。ありがたい。ナム・エクリチュール。ナム・ディスクール。ナム・イグズィスタンス、ナム・コーギトー・エルゴ・スム。ナム・ジュ・パンス・ドンク・ジュ・スィ。ナム・フィガロ。ナム・ル・モンド・・・・・。

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