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「イマ、ココハ、戦場ダ。」「兵士ヨ。スベテヲ終ワラセロ。」「グッバイ・ソルジャー。」

 
 
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「ファルス!」と叫んで夏服を着た女は消滅した。


「夏の愉しみは夏の終わりの蜩だ」とエゴン・シーレが頭を大きくして言った。

「けやき坂には64本の欅があって、蜩どもがつれづれに縄張り争いをするんだ」とクリムトが尻を全能神ゼウスに突き出して言った。

「夜ふけ、TSUTAYAでCD試聴したり、スタバでペンティ・サイズのキャラメル・マキアートを飲んでいると、いつのまにか傍らにレナウン・イエイエ女が立っていて、三半規管やら鐙骨やらにそっと息を吹きかけてくれるんだ。そうするとLOTO6億円が当たる」とルイ・イカールが言ったとき、アール・グレイは泡と弾けた。2ヶ月後、日経の紙面にひっそりとアール・グレイ崩壊の顛末を伝える記事が載った。

真夏の夜の夢か。でも、まだ真夏までは遠い。夏がやってくるかどうかさえ、わからない。夏服を着た女が口をひらく。

「そう、あのテラス席は確かにけやき坂だった。そして、レナウン・イエイエガールの祝福の吐息はマセラティ5台とフェラーリ3台よりも大きな富と悲しみを与えてくれるのよ」

マジかよ。そんなにおいしい話がまだあるのかよ。生きててよかった。さらに夏服を着た女がつづける。

「真夏の夜の夢・・・。わたしがいま見ているものもそうなのかしら」

私はだれにも聴こえないように秘密の合い言葉を口にしてから夏服を着た女に告げた。

「2004年の夏と2012年の夏を1クリックで往還できるんだから、これを”真夏の夜の夢”と言わずしてなにを麻布自動車と言うや! でも、麻布仙台坂はカンパニョロ・レコードをセットアップしたデ・ローザでもきついらしいよ。らしいよ」
「そういえば、ガーデンプレイスで拾ったタクシーの運転手さんは都内で一番、麻布十番界隈が嫌いだと毒づいてたわ。一通も多いし道は狭いし、なによりも今はなき旧地名の坂! 地図で探せない坂ばかりを行き先で告げられるって。あなたは階段の坂の下のカフェでカプチーノなんてありきたりでバカみたいって思うでしょうけど、やっぱり傾く午後の陽射しは気持ちよくて、相手と半分こしたはずのケーキはわたしの方が多く食べちゃって、やっぱりこんなのバカみたいって思うけど、そう思うことがバカみたいでバカみたいなのはわたしだとようやく観念してみたりするのよ。わかる?」
「わからないよ」
「わかってよ」
「わかったことにするよ」
「ちゃんとわかってよ」
「ちゃんとわかったことにするよ」
「なんだか真夏の夜の夢みたいね。垂直に積み重ねられたはずの過去がワンクリックですべて水平に並列だなんて」
「垂直に積み重ねられたはずの過去がワンクリックですべて水平に並列な件については海南鶏飯食堂のウッドデッキでシュレディンガーの猫を膝にのせて撫でながら六本木高校の壁の野郎おもいっきり迫ってきやがるぜ! 小西! ガチャピン! 借景のつもりだろうが、そうは問屋制家内手工業だぞ! マッキャン・エリクソンに言いつけちゃうからな! と純粋理性の二律背反することでほぼ解決するらしいよ。らしいよ」
「ふと思うのよ。そもそも時間というのは垂直に積み重なるのか、はたまた水平に連なり進むものなのか? って。やっぱり飼うならアビシニアンでもアメショーでもなく、シュレディンガー・キャットにかぎるわね。それともなければチェシャ猫。六本木高校の壁の上に最後まで笑い声を残して消えていくの。ねえ。世界はこんなことでいいのかな?」
「いいんだよ。これでいいんだ。いつかきっとどこかにたどり着ける。円環はまちがいなく閉じられる。だから、われわれは悠々として急がなくちゃならない。いいね?」
「うん。Festina Lente! ね!」
「そうだとも!」


イマ・ココの時間の連なり、「遅延」と「差異」の集積
たとえば、検非違使忠明が障子に映った下女の影に怯えて押し入れの中に隠れちゃう。そんで、奴はぶるぶる震えつづける。1回震えるごとに「1ぶっさり」徴収するとして、10回震えたら10ぶっさり。このあたりは「ローマはなぜ滅んだか?」を宇宙際タイヒミュラー理論を解法するセットで習ったよね。X軸Y軸Z軸それぞれに「縁」がまとわりついているわけだから、もうひとつの軸は当然にLA VIE EN ROSEでなきゃならない。ということはつまり、21時57分にドイツ軍兵士が真空管ラジオに齧りついたのだってまんざら理解できないこともないし、「パリは燃えているか?」ってロンメルに直電したアドルフの気持ちもいくぶんかは汲んでやらなくちゃならない。そうすれば、午後のお茶の会だっても、きっと豊饒と親和と神話に満たされるはずさ!

と、ここまで私は自動書記したわけだけども、これこそが、イマ・ココの時間の連なり、換言すれば「遅延」「差異」の集積になるわけです。本来、ないはずの「時間」を現前化させる作業がディスクールすることにほかならないと言える。ブランショもデリダも言ってるんだからまちがいない。エコール・ノルマル・シューペリウールの68年で乾杯するに値するくらい美しく危うく妖しい結論だ。だが、問いはまたすぐに産声をあげる。

ゆるいカーブを描いて並べられたドミノのように、教師の授業なんか耳に入らない学生が描いた教科書の片隅のパラパラ漫画のように、世界は、まだ存さぬ、しかし確かな将来と延びた軌跡をなぞるものだなんて、そんなアフォーダンスまがいは神経症の学者の夢だった。

「指をパチンとはじいた一瞬に刹那は65コも詰まっている。まだ見ぬ大陸の葡萄畑の午後、吹き渡る黄金色の風は豊穣そのもの。そしてオーパス・ワンのテイスティングは25$/1グラス」


都市には記号と仮説が横溢する
夏服を着た女はクレープデシンのワンピースの裾を66涅槃寂静のあいだ摘んだあと67無量大数分のため息をついた。

「ちがう。初めていっしょにみた映画は『グレート・ギャツビー』なんかじゃない。あのひとはいつも肝心なところでまちがえる」

夏服を着た女のまわりで淡い紫色の雲が踊りはじめた。夏服を着た女は思う。「人間」が打ち寄せる波によって消し去られて以降、都市には記号と仮説が溢れはじめた。いわく、おセレブさん。いわく、イケメンくん。いわく、ヒルズ族。いわく、ヤマンバ・ギャル。だけど彼らのいずれもが「孤独の人」の住まう中心が空虚なドーナツ・シティで踊っていることに気づいていない。だから彼らはイカさない。だから彼らは異化しない。他個どもに囲まれて蛸踊りに興じるだけだ。かくして、イカとタコの階級闘争は永遠につづく。

「それにしても、あの人はいったいいつになったら”本当のこと”を教えてくれるんだろう?」

夏服を着た女はコケモモのジュレをスプーンで掬いながら思う。

「どうでもいいことはいっぱい教えてくれたのに」

夏服を着た女のまわりで踊っていた淡い紫色の雲が群青色に変わった。ブルカニロ博士がタリーズ麻布十番店のオープン・カフェの階段でつまずき、通りを挟んで向かいにある薬局のぽっちゃり女はサプリメントの陳列に余念がない。榛色のグレート・デーンを連れたタトゥー女は今日も不機嫌である。

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「わたしのアンブレラはどこ?!」と言ったきり、ネイビーシールズ・ガールはコルドヴァの午睡に入る。
「わたしのアンブレラはどこ?!」と言ったきり、ネイビーシールズ・ガールはコルドヴァの午睡に入った。

「So...」

GGは常に問いつづける。

「Do You Want to Write a Fugue?」

世界は常に二択の果てに在り、私がディスクールするのは「選択されなかった未来」。または「幽世」、または「希望と絶望の同在性」、または「〆鯖の最も美味なる食し方」。新宿の高層ビルの谷間で一時間も並んで手に入れるドーナツの中心はどこまでも空虚だ。それこそが夫のクリスマス・プレゼントを買うために差し出す黄金色の髪を持たないわたしが切り売りした人生の一断片の代償。本当のことを知っていると匂わせるあの人は今度こそその価値をわかってくれるかしら。メリー・クリスマス。真夏の夜のプレゼントよ。

「Then, So...」

GGは常に問いつづける。


アンブレラの臨時株主総会、齢の決算書
アンブレラの臨時株主総会が三日後に迫っていた。「齢の決算書」の不備を糾弾する手はずを一刻も早く整えなければならない。沼津港でぬるめの玉露茶を飲んでいる場合ではないし、茅ヶ崎で西大島の対極に位置する東大島ガールとターコイズ・ラピスラズリ・ロジウム・ダンスを踊っている暇などない。

もちろん、イエテボリで『デスペラード』をロンシュタット風に歌いながらバナナ烏賊の出現を待つなどもってのほかである。「そうだ。イマ・ココがわれわれの戦場なんだ」と夏服を着た女は思った。思った途端に夏服を着た女はネイビーシールズの正規兵のいでたちに早変わりし、グレネード・ランチャーを肩に担いだ。遠くでメイ牛山とキマラの笑い声が聴こえた。ネイビーシールズ・ガールが時空を切り裂くためにグレネード・ランチャーを虚空に向けると天上から声がした。タカトン・ボーディサットヴァだった。

「こんにゃく問答かと思えば、境界の岸辺で踊る擬躁病患者の連想イメージ・ダンス。けだし、世界はアナグラムの連鎖。善き哉、善き哉」
「でも、グレネード・ランチャーは弾を探すのが大変らしいよ。らしいよ」

ラム酒を多めにアレンジしたXYZをシェイクしながら BAR Poisson D'Avril 店主、ヴィト・ロッコ・ファリノーラがおどけた。その腰にはこれみよがしにフラフープがミッシング・リンクしていて、おまけに左の二の腕にはダッコちゃんが巻きついている。

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「イマ、ココハ、戦場ダ。」「兵士ヨ。スベテヲ終ワラセロ。」「グッバイ・ソルジャー。」
肩まで伸びた髪にバリカンが入れられると同時にメールの着信を知らせる『ニンジャソード』のテーマ曲が暗く狭い理容館の中に響いた。シンからだった。

「ワタシガ神ダ。」

ダイはいつもどおりの簡潔きわまりないシンのメッセージを読み、眼を細めた。ダイの細く青白い指が携帯電話のダイヤル・ボタンの上を生き物のように動く。

「オレハ兵士ダ。」

送信。そして、追伸。

「イマ、ココハ、戦場ダ。」
「兵士ヨ。スベテヲ終ワラセロ。」

ダイは黙ってうなずく。短く刈り込まれた髪。皮膚のすべてがつやつやしている。ついこのあいだまでセブン・イレブンのレジで客に媚びを売っていた自分とはまったくちがう。

鏡に映る自分の姿をみてダイはいかにも満足げだった。ダイは「おれはやっと本物の兵士になれるんだ」と思う。「兵士として凱旋し、すべてを終わらせるんだ」とも思う。

右手にサバイバル・ナイフ、左手に柳刃包丁を持ち、背中にはインターネットで手に入れたニンジャソードが黒紐で固く結わえつけられている。ダイは一陣の風のように雑踏を駆け抜けていく。シンはダイの背中をみつめ、そっと呟いた。

「グッバイ・ソルジャー。」

シンの姿はだれにも見えず、呟きは何者にも聴こえない。


視えない自由を撃ち抜くための視えない銃。「装填完了。あとは引金を引くだけ。」
グレネード・ランチャーの異名は「視えない自由を撃ち抜くための視えない銃」である。夏服を着た女はラブレスのカスタムメイド・ナイフでみずからの腕を切り裂き、溢れでる血潮を銃口にたっぷりと注いだ。

「装填完了。あとは引金を引くだけ。でも、わたしのアンブレラはどこ?!」

夏服を着た女ことネイビーシールズ・ガールの問いに答える者はいない。世界の果ての酒場、酔いどれどもの祖国 BAR Poisson D'Avril の真上にグレープフルーツ・ムーンが輝いている。


動きつづけるものにしか力は宿らない。「わたしが本当に欲しいのは本物の革なのよ」
「動きつづけるものにしか力は宿らない」とネイビーシールズ・ガールは起き抜けにつぶやき、青いコードバンのカラーをきつく首に巻きつけた。

「革よ。わたしが本当に欲しいのは本物の革なのよ」とネイビーシールズ・ガールは思う。そして、極北の漁師小屋で瀕死のタンゴを踊りはじめる。

かすかな記憶の奥底でなにかが閃いた。コルドヴァの革職人たちの思念がネイビーシールズ・ガールをイタコがわりにしたことはあきらかだった。かつて恒河砂の畔で説法するヤージナヴァルキャだった頃の記憶がよみがえる。その記憶は多元並行宇宙の極小のねじれの中で瞬時に万華鏡のように花開く。それは同時に、夢見られる男が夢の中で目覚めた先の別の夢だったのかも知れない。

「記憶もなければ時間もない。なにもないところへわたしは来てしまった。庭は夏の陽盛りを浴びてしんとしている。なんだかしょんぼりだわ。Never tell the truth to people who are not worthy of it な気分だわ」
「おまい、すんごい寝言をぶっこきやがるな」

みみず長屋の御隠居がネイビーシールズ・ガールの鼻先に酢豆腐とおっきゃらまあとすてれんきょうをくっつけながら言った。それでもネイビーシールズ・ガールは深い眠りの底である。

ネイビーシールズ・ガールの眠りを醒ますためにガンジスの畔からジンジャンが亜音速の千鳥足でやってくることをまだだれも知らない。水底の泥濘に身を沈めるかのような重い眠りに囚われながら、私は傍らにみみず長屋の御隠居がバッタリと倒れる音を聞いたような気がした。御隠居の首には極太の荒縄が巻かれている。

「邪魔するヤツは出会いがしらに1ぶっさり。それと、そば屋は近所と相場が決まってるんだよ」
「けっこうけっこう」と壊れた鳩時計のように笑う声は、ガンジスの岬からきたジンジャンだろうか。亜音速の千鳥足をもってしてもここまでたどり着くにはまだ随分と早いはずだけど。それにつけてもおやつはカール・ルイスといっしょに食べたいし、小鳥はよく囀る。あっち行けカッコウ、どうせ裏切る。

「明日は夏至、世界は一分間に45回転回る」

あぁ、やっぱりジンジャンにまちがいない。だっていまどきアナログ・レコードで時間を計る男はほかにはいないもの。それにしても、この泥の重さはなんだろう。指一本動かせやしない。

左腕からドクドクと血が流れ出てゆく感触だけを頼りに私は時間の感覚を保っている。これが夢ならばいいのに。これが夢ならば早く目が覚めればいいのに。その目覚めた先が誰かほかの夢見られる男が夢の中で目覚めた先の夢でなければいいのに。誰かが耳元でささやく。

「いいか、世界は一分間に45回転だ」

ニライカナイまであと7歩。異界の刻まであと42グーゴル。ホキ徳田が子午線祭りで小金を稼ぐ日まで1958ミラー。


「革命と森のひとと聴くことに関して僕の左に出る者はいない」
「片道切符買われますか?」と東大島ガールが尋ねた。「今月は江東区月間なので丸八通りルートがお得ですよ」
「心配なので、往復でお願いします」と、突如、月に吠える男が現れて言った。「猫まんま付きのセットで」
「この際、革命と森のひとと聴くことに関して僕の左に出る者はいないってことをはっきりさせておきたいんですよ」とガーリック村青年団団長のハルキンボ・ムラカーミ・ジュニアが言って地軸に対して23度24分の傾きでのけぞった。

「参加することに意義ガールと僕の気持ちも舞子ガール。ガールが屏風に上手にジョーズの絵を描いたかは知らないですけどチーズ味のカールを探す手がかりとなる地図はスポーツ大将で活躍していた対照的な二人、カール君&コカール君がコークをゴクリと飲みながらコックのコックにコークを塗ってコックリさんをコックリしつつレモン汁であぶり出しできるような形式で書いたそうです。グレネード・ランチャーの玉(点を取れば王)を探す事と地図のあぶり出しと音を立てずに蕎麦を食べる事。どれが一番難しいかを決めるのが今の僕の最重要課題です。KYですね。僕。KY=キン○マン・夜露死苦です。○の中に玉だけは入れないでください。それにつけても、『アッコにおまかせ』をよろしくお願いします。アレ以来、視聴率がものすごい勢いで右肩下がりです。僕の人生、霧が晴れる間もありません。十里木はきょうも霧が濃いです。銀座に来いの物語です。俺が霧笛を呼んでやるぜ。麩」


革命。あるいは「湯ぼぼ酒まら」
諸君の言い分をまとめればこうだ。分散分派しつつ統合すること。インディヴィジュアルでインディペンデントでブントも真っ青。「わけのわからなさ」をいかにアナグラムするかという腰つきに宿るエロティシズム。そのために必要なのは「革」だ。皮ではなく、革。つまり、革命。「湯ぼぼ酒まら」の極意が明らかになるまで、あと45回転。

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