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概念の洪水#1

   天命は人間再生のために何度でも反転する。 ギリシャ大使館のある坂道の途中で天命反転ビルヂングの概念工事に出くわして以来、吾輩の大脳辺縁系ならびに大脳新皮質は概念の洪水で溢れかえっている。概念は次から次へと溢れてくる。養老院孟司博士に相談したが答えは実に素っ頓狂なものだった。「天命反転だ。諦めるしかない。漱石は諦めて則天去私居士となった。そして、『吾輩は猫である』を書いた。君は『吾輩は犬である...

虹子のトランク/燐の火のような青く美しい光になって#1

   虹子は隠しごとをしない。うそをつかない。秘密もない。しかし、例外がひとつだけある。「虹子のトランク」だ。虹子は「虹子のトランク」をだれにもさわらせない。さわらせないだけではなくて、見せることもない。吾輩は一度だけ「虹子のトランク」を見たことがある。虹子を尾行し、「虹子のトランク」の隠し場所を探りあてたのだ。 東京港。品川の海の近くの倉庫街コバルト地区。虹子はコバルト・ブルーだらけの街のひと際...

最後の春休みのロッカー室に「桜の栞」を盗みにいく

   朝起きるとベランダの隅に20センチほどの桜の花だまりができていた。ゆうべの強い風が散らせたのだ。今が盛りだというのに。「盛る花もあり、散る花もあり」ということでもあるか。根方に死体の埋まった桜から散った花びらでもあるまいが、かすかに狂おしいような眺めだった。 暗鬱で悪意に満ちた冬が終わり、待ちに待った春。梅が盛りを迎えたあと、桜の蕾がほころびはじめて卒業シーズンが近くなると松任谷由実の『最後の...

黄金の蛙の墓碑銘

   初代黄金の蛙の墓碑にはヴォラピュク語とロンゴロンゴ語とトレーン語で次のエピタフが刻まれている。 漂いつつも決して沈まず、やせ我慢の果てについに〈蛙の王〉となりし宇宙一の大馬鹿蛙ここに眠る。冬眠ではない。 黄金の蛙の四十二代目の直系の子孫である吾輩が初代黄金の蛙の墓碑の存在を知ったのはまったくの偶然だった。15歳の春のことだ。コバルト・ブルーのルーン・ストーンでできた墓碑は、ある時代には冥王星ま...

人生のエアロダイナミクスとプラネタリウム・デイズ

   人生でもっとも重要なのは空力だ。人生のエアロダイナミクス。そのことを証明したのがF1宇宙の空力大王、エイドリアン・ニューウェイである。エイドリアン・ニューウェイはことあるごとに言ったものだ。 人間には一枚のシールもタグもステッカーもレッテルも必要ない。必要なのは風と翼とほんの少しの勇気と冒険心、そして、「ベルヌーイの法則」だ。それ以外のものはきれいさっぱり剥ぎ落とさなければならない。 なるほど...

8丁目75015番地の朝/彼女のコルドン・ブルー

   パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンの『Cinema Paradiso - Love Theme』が静かに終わり、天野清継の『AZURE』がかかる。天野清継の『AZURE』はアジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の朝にこそふさわしい。部屋には肉の焼けるにおいとさまようオリンポス山の山頂からやってきたさまざまの果実が熟れて放つ濃密なにおいが漂い、舞い踊っている。そして、彼女は思う。「また失敗だわ。フォ...

空飛ぶ復活スティグ・リンドベリが残した問題点と春の葉っぱ

   グスタフスベリ色の包装紙に包まれていたのはアジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の朝にこそふさわしいコルドン・ブルーの頑丈な箱だった。箱をこれ見よがしにあけると中から復活スティグ・リンドベリがやや年老いた白夜を背負って出てきた。出てきたとたんに復活スティグ・リンドベリは「やっぱりSPISA RIBBだよにゃあ」と言った。「BERSAは? ADAMは? SALIXは?」「BERSAでもADAMでもSAL...

カサブランカ、酔いどれの誇り、人生、浅草キッド、Mよ

  東京から春を告げる贈答が届いた。本と雑誌と酒、ホンホッケとシマホッケの一夜干し、鰆と鯖の西京漬け、筋子の一夜漬け。本は『フェルメールの秘密/イメージの森のなかへ』『かんがえるカエルくん』『ブルくんとかなちゃん』の三冊。雑誌は BRUTUS の特別編集版『合本 居住空間学』。そして、酒は「なにも足さない。なにも引かない。」のサントリー『山崎』の10年、12年、18年がそれぞれ2本ずつ。おなじく『山崎 SHERRY WOOD ...

星を継ぐ者の系譜#4 悠々として急げ

   Festina Lente. 悠々として急げ。 Fluctuat Nec Mergitur. 漂えど沈むな。 賢者は日々死にゆく。宝玉のごとき賢言を残して。なにもかもが今のうちだ。あとの祭りと気づくのは胸の真ん中あたりがかなり痛む。 あなたがなにで生計を立てていようとわたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたがなにに心を痛めているか、そして、憧れとの出会いを夢見る勇気を持っているかどうかだ。 あなたが何歳であろうとわたしに...

星を継ぐ者の系譜#3 俺たちゃ、ドビ兄弟

   俺たちゃ、ドビ兄弟。一発、LA仕込みの極太ショットガンぶち込んでやろうか? お好みはスカンクかい? それともアカプルコ・ゴールドとシャレこむかい?  1974年以降のドビ兄弟は糞だ。「聴いてらんねえ。聴かねえ。聴くな」の三段活用もいいとこだ。待ち合わせは東横線の菊名駅前喫茶店の『キクナ茶屋』ときたもんだ。ドゥービー天国? 笑わせやがらあ! 草食って糞まみれ地獄へ堕ちやがれ! ドビ兄弟は、『The Doobie Br...

星を継ぐ者の系譜#2 跳ねるロゴスの男

    40年近くを経た今でも不思議でならない。1974年の春、E. クラプトンの『461 Ocean Boulevard』が世に出る3ヶ月前のことだ。4月。高校の入学式の翌日、登校途中の朝、後ろからそれまでに聴いたことのない不思議なリズムの歌が聴こえてきた。しかも、驚くほどの大声で。振り向くとドレッド・ヘアの男がいた。もちろん、当時は「ドレッド・ヘア」という言葉すら知られていない時代だ。いま思えば、歌は『I Shot the Sheriff』...

エンゾの背中【1/14】

  「夏がはじまるまでにエンゾ・マイオルカ・モリナーリの背中を持ってこい」とウォーレン・オーツ似の大ボスが怒鳴った。雷が1ダースほどもまとめて落ちたような声だった。小ボスどもは一斉に縮みあがった。もちろん、俺もだ。なぜなら、俺がエンゾ・マイオルカ・モリナーリ本人だからだ。だが、この街の連中は誰一人として俺がエンゾ・マイオルカ・モリナーリだとは知らない。「エンゾの背中の肉をひとかけらでも俺の眼の前に...

一千億の屍を越えて#3 君が消えた日

   君が消えてから2年が経つ。君はいまだにみつからない。でも、僕はまだ君を探してる。探しつづけている。「あきらめろ」と誰もが言う。あきらめられるわけがないだろうが! おまえたちは僕たちの日々のひとかけらだってわかってやしないんだ! ときどき、君の声が聴こえる。楽しそうなときもあれば悲しそうなときもあれば苦しそうなときもある。お腹がへっているんじゃないかってときさえある。でも、本当はわかってる。君が...

一千億の屍を越えて#1 パリは燃えているか?

   ナパームは線香花火となり、メガデスすら子供騙しとなった時代を我々は生きている。   1940年5月9日、オランダ、ベルギーに侵攻した”砂漠の狐”エルヴィン・ロンメル率いるドイツ軍機甲師団はフランス北部フランドル地方のアンデルヌ大森林地帯を抜け、いっきにパリを目指した。まんまと出し抜かれたかたちのフランスの守備の要、マジノ線守備隊は直接ドイツ軍と戦う部隊に増派できなかったばかりか、ドイツ軍部隊の補給線...

トム・ウェイツの百年の孤独な夜

   これより明日の夜明けまで、月で酔いどれながらときに梅の薫りをさぐり、ときに桜の蕾に声をかけ、ときに春のおぼろのグレープフルーツ・ムーンを愛で、ひたすらトム・ウェイツを聴く。ずっと聴く。とことん聴く。長丁場だ。どんな順番で聴くかな。ここはやっぱり、『Grapefruit Moon』からか。『Drunk on the Moon』『Tom Traubert's Blues』『Ol' 55』とつづけて、最後は『Closing Time』で。『Closing Time』がかかるころ...

酔いどれ詩人と飲んだくれ師匠

   前座 酔いどれ詩人、トマス アラン ウェイツのもっとも得意とする楽器はピアノでもギターでもない。ヴォキャブラリー、語彙である。トマス アラン ウェイツのステージをみた者であれば、例の嗄れ声とともに彼の軽妙洒脱な語り口に魅了されたことだろう。吾輩もそのうちの一人である。トマス アラン ウェイツはピアノの上にジムビームの白ラベルを置き、というよりも居座らせ、ビンから直接飲んでいた。飲みつつ歌い、しゃべ...

昭和の寓話#1 老兵は笑う

   遥か遠くの古ぼけた食堂で俺たちゃ日に三度、 豚の野郎と豆っかすばかり食う。ビフテキなんぞとんでもねえ。 ちくしょうめ! 砂糖ときた日にゃあ、紅茶に入れる分しかねえ。 だから、俺たちゃ少しずつ消えていくんだ。 老兵は死なず。ただ消え去るのみ。 二等兵さんは毎日毎日麦酒が飲める。 伍長様は自分の階級章がお気に入り。 軍曹殿は猛訓練とシゴキが大好物だ。 きっと奴らは永遠にそうなんだろう。 俺たちゃ...

サリンジャー・ウォール再び

  レイの奴めが火星人の襲来にも生き残り、華氏451度の炎にさらされても生き残り、この期におよんでタンポポでこさえた密造酒で50年ぶりに酔いどれようと、ハルの小僧がノーベル小学校を放校されたあげくにカフカ海岸で津波にさらわれようと、はたまた、アーネスト爺さんがファンドシエクル銃を取り損ねて石野卓球との「意志の脱臼合戦」に敗れようと、おれは壁から一歩も出ない。もちろん、誰であろうと、理由事情のいかんを問...

ガラパゴス・ガールが抱える「場所」に関するいくつかの問題と解答

  ガラパゴス・ガールは「場所」の問題をいくつか抱えている。ガラパゴス・ガールは「青く冷徹な一閃」に切り取られた廃墟一歩手前の渋谷唐沢ビルヂングの茫漠とした一室で考える。「ここ? ここでいいの? ここがいいの? そこ? どこ? どこがいいの?」 ここじゃない。そこでもない。あそこではもちろんない。ではどこだ? 答えはすでに用意されている。ここでもそこでもあそこでもない「どこでもない場所」だ。「どこでもな...

夏への階梯#4 『2000トンの雨』をめぐる冒険

   七里ガ浜駐車場レフト・サイドで2000トンの雨に打たれるまであと151日と6時間42分  1978年のクリスマスに『2000トンの雨』を聴かなければ、強い南風が吹きつける七里ガ浜駐車場レフト・サイドで虹のコヨーテに出会うことはかなわなかったし、ディネの男とともに「炎の中心」に立てなかった。ディジュリドゥを楊枝がわりにしてウルルとカタジュタを飛び越えられず、1日に1ダースの「最後のセブンナップ」を飲みほすのは不可...

シェークスピア・キッチン#1 Think of Nothing Things

   夏の気配を探る日々を生きる者にとって、「明日」は追悼するためにこそある。E.M.M.  夏の気配がある。もうすぐ、また会うこともない夏がやってくる。夏は一番すてきな季節だ。きらめき輝く飛沫をあげながら波打つ夕立のプール。午後のテラス席のオーパス・ワン(25$/1glass)。「時が止まればいい」と肩でつぶやく女の子。登校日。打ち捨てられたサン・オイルのちいさな黄色いボトル。強い南風が吹きつける七里ガ浜駐車...

トリトンは海に帰り、クルトンはスープに浮かぶ

  クルトンはいかにしてスープに浮かぶようになったか? 第三のしるしを持つ者・トリトンは青きオケアノスの海に帰還し、ポセイドンはオリュンポス山頂で愛人メドゥーサのために大地を揺るがしながら濃厚な塩味=一撃必殺のトライデントミサイル・ソースを仕込み、クルトンは「貧者のスープ」あるいは「良妻のスープ」の上に浮かび、ライ麦畑と燕麦畑のあいだにある貧しく清く美しき者たちのための「かたい黒パンでできた食卓」...

The Scene #1 デボラの舞い

  人生の大半が友情と裏切りとカネと愛と力と性と喪失でできあがっていることに気づくのに30年かかった。20年以上も前のことだ。友情と裏切りとカネと愛と力と性と喪失を描いた映画が『Once upon a time in America』である。「おとなのいい男」「おとなのいい女」になりたい者はみるがいい。「永遠の少年」でいたい者がみてもなにがしかの参考にはなる。見終わったあと、いくぶんか人生の深さやら友情の儚さやら裏切りの痛みや...

地下鉄の遠近法#2 銀座線の復活大猿と地下鉄のカジ

   旧車輌時代、銀座線は走行中に突如として車内の照明が消えた。「大猿の呪い」だ。「地下鉄銀座線における大猿の呪い」についてはオンワード・ガイ・フォークス財団の委託を受けたウガンダ出身の日系ウガンダ人呪術師、ハルキンボ・ムラカーミが綿密地道なフィールド・ワークを実施し、呪法と変容情報誌J-PRESSの表4誌上において詳細な報告を行っているので参照していただきたい。 1927年12月の銀座線開通当時、地下鉄銀座線...

地下鉄の遠近法#1 超地下鉄

   Metro Perspective. 地下鉄は物語を乗せて走っている。物語は遠近法から誕生する。E.M.M. 東京には現在、東京メトロと都営地下鉄をあわせて13の地下鉄が走っている。駅数の合計は239。総延長304.0km。1日の乗降客数はのべ1000万人を超える。単純計算で入札と出札は1000万回以上行われる勘定だ。 連日、始発から終電まで大小高低陳腐退屈珍奇貴賤老若男女鍋釜古今東西貧富南北冷酷非情感動感涙取り混ぜて1000万以上の物語が...

石と氷晶としてのマグリット世界

  石と氷晶としてのマグリット世界と千枚の葉っぱのためのローリング・ストーン狂想曲 西伊豆・戸田。御浜岬におけるマグリット世界への入口 2012年初秋、西伊豆・戸田。御浜岬におけるマグリット世界への入口はわれわれの前に突然現れた。昼下がりの出来事だった。記憶もなければなにもない西伊豆の潮騒と潮風と潮香と陽の光と沈黙の影がわれわれの周りを1指パッチンに65刹那の速度で舞っていた。西伊豆の潮騒と潮風と潮香と...

ムラカーミを号泣させた世にもミツシエル・ポルナレフなカエル

  「あんたが死んじゃったらいやだな」と吾輩はムラカーミに言った。ムラカーミはミッシェル・ポルナレフの『シェリーに口づけ」と『愛の休日』のドーナツ盤を見比べながら独り言を言っていた。「メルドーかバルドーかカンドーかテコンドーかコンドーですか。それが問題だ」とかなんとかかんとか。「聞いてる?」「聞いてます。聞いてます。聞いてますともとかなんとかかんとか」「じゃ、吾輩がいまなんて言ったか言ってみな」「...

腎臓と象牙#666

     即興する未来、越境する地雷、発狂する味蕾  即興とは世界線をたどり、その流速を計測することである。 E.M.M. 空間が虚数によって表現可能な座標系においては非因果的領域が確かに存在する。これは自明なことだ。そして、われわれの前に立ちはだかるのが「贈与、交換、純粋贈与」という性悪三姉妹である。この三姉妹はすでにして「善」と「命」の境界線を越境し、地雷となった。Woman in Red. 緋色緋文字の女。ホー...

一人を救える者が世界を救うのか?/シンドラーのリスト

  夜ふけ。ある「戦い」を終え、やや茫然自失気味のおのれにひと鞭くれてやろうと思い、『シンドラーのリスト』のDVDを引っ張りだした。備忘録をめくると最後に『シンドラーのリスト』をみたのは2001年の1月1日であった。12年ぶりにみる勘定だ。 12年前、吾輩はなぜ21世紀幕開け初日に『シンドラーのリスト』をみたのか? 備忘録には次のように記してある。「新しい世紀のはじまりに、前世紀に起こったことどもに思いを馳せるの...

眼と精神#1 グーグール・ゴースト

   なんだこれは! Google Mapに現れたゴースト Google Map に「47.110579, 9.227568」の数値を入力し、Enter。 ...

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自由放埒軒

Author:自由放埒軒
Festina Lente.
No Pain, No Gain.
Fluctuat nec Mergitur.
R U Still Down Gun 4?
玄妙の言葉求めて櫻花
薄紅匂う道をこそゆけ

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