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チェロキー・ボーイの恋心とナパームの慈雨

   高慢ちきのメアリーに恋をした嘆きのインディアンはローズガーデンでナパームの雨を見たか? その日の朝、ローズガーデンは雨に煙っていた。嘆きのインディアン、チェロキー・ボーイはローズガーデンのバラの香りに身も心もとろけそうだった。うっとりと白い館を見上げ、雨が上がるのを待つチェロキー・ボーイ。メイドのリンがチェロキー・ボーイにやさしく、そして皮肉をたっぷりこめて言う。「深い川を渡るときには気をつ...

スタンドバイミーの男#4 名前のない馬

   驚くべきことに太っちょハンセンは「フェンスの向こう側のアメリカ通り」の歩道をヤマハのタウンメイト90を押して戻ってきた。滝のような汗。泣きっ面。鼻水も垂らしている。顔は真っ赤だ。まるで消防車のホースで水をかけられてアドリア海の自由と放埒の海に真っ逆さまに墜落した直後の紅の豚みたいだった。困憊の太っちょハンセンのことなどおかまいなしにITは言った。「おれの名はインディアン・ビリー。こいつがキャプテ...

スタンドバイミーの男#3 最後のセブンナップ

  ハンセンは本牧のPXの前でみつかった。ハンセンはちょうど映画館から出てきたところだった。ポップコーンおばさん特製の溶かしバターがたっぷりかかったペンティ・サイズのポップコーンを貪り食いながら。ハンセンはかなりの肥満児だった。太っちょハンセン。フトハン。それがイージー・ライダーズにおけるハンセンの正式の呼び名となるのは2時間後だ。「ハンセン! ちょっとこい!」ハンセンはきょとんとした顔でITを見る。当...

スタンドバイミーの男#2 ワイルドで行こう

   イージー・ライダーズ逗子の森戸海岸の海に真っ逆さまに沈んでゆく夕陽に赤く照らされながら、スタンドバイミーの男、ITは「イージー・ライダーズを結成する」と宣言した。その翌日、ITは盗んだ新聞屋のホンダ・スーパーカブ90に乗ってやってきた。中学1年の夏休み初日の朝だ。ITは私の家の玄関前で「ダ~リンダ~リン♪」とホンダ・スーパーカブ90のアクセルを吹かしまくった。けたたましい音だった。世界中のお昼寝中の赤ん...

スタンドバイミーの男#1

  【シンクロニシティ・ストーリーズ#1】スタンドバイミーの男 /シンクロニシティ1丁目1番地1号住人夜の帳がシンクロニシティの街をおおいつくし、「戸締まり、火の用心」を呼びかけるシンクロニシティ消防局の防災放送とともに、どこからともなく『STAND BY ME』が聴こえてくるとある男のことを思いだす。仮にITとしておく。ITは私の古い友人であると同時に、孤独と困難と困憊と裏切りにまみれた勝ち目のない戦いをともに戦った...

星影のカステラ#1

   吾輩のような都会育ちの囚人にとって、完全と言えばあれほど完全な夜はなかった。「4日後、レトロスペクティヴ・グレープフルーツ・ムーンがやってきますわよ」と文体エクササイズ中の家政婦のレーモン・クノー気取りの虹子が突然言った。虹子の巨大化した右耳からは『野獣のノクチュルヌ』が絶妙の音量で聴こえてくる。「うん。いまから待ち遠しいね。思考と象徴の狭間望遠鏡の手入れをしとかないとな。ワイルド・サイドの...

不思議の国にて気が変になる海亀スープもどきで昼食中。帰宅時間はゲーデルに訊いてくれ。

    エリック・ドルフィー『OUT TO LUNCH!』の「WILL BE BACK」  あるアーティストと話しているうちに「マドレーヌ現象」がはじまってしまった。主たる用件はそのアーティストにエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH!』のジャケットのコラージュを制作することが可能かどうかを打診するのが目的だったが、周波数とフィーリングが合って、話はいつのまにか「夢の球場」のことや古今亭志ん生のことや「ラデュレ・ビジネス」の...

ホワイト・ノイズ@ブラック・アウト#1

  J.S.バッハの『マチュウ・パッション』をフーリエ変換しつつ聴きながら「死の必然」の仕組みを完璧に理解することが第一主題部だ。通底和音はピンク・ノイズ、倍音はホワイト・ノイズ、そして、変奏はブラック・アウト。 2012年の夏の終り。東新橋・電通本社ビル屋上。その日、夏の空は意外にも青く強く澄んでいた。 浜離宮庭園と東京湾の海と夏の青く強く澄んだ空を順番に眺める。金属的な熱を額のあたりに感じて空を見上げ...

『4分33秒』の厄介ごと

   冬ごとに指先が凍りつき、ぽろりととれてしまう女の子はなぜグレン・グールドとヨー・ヨーマを聴きつづけるのか?「木枯らしが吹きはじめて本格的な冬がやってくると、わたしの指先は凍りついてしまうの。毎年のことよ。そして、その冬一番の寒さを記録した朝、わたしの指先はぽろりととれてしまうのよ。痛くも痒くもないけど不便は不便ね。春になればまた新しい指先が生えてくるから、冬のあいだ、ちょっとがまんすればいい...

新しい産業の誕生

  福島原発事故後、まったく新しい産業が誕生した。「除染産業」だ。この産業は今後数百年、数千年にわたって衰退することがない。あるいは永遠に。 除染産業の栄華は放射性物質(放射性核種)の半減期次第である。放射性物質が放射線を出しつづけるかぎり除染産業は栄耀栄華を誇ることができる。除染産業は設備投資も研究開発も不要である。人手と水と放水機材さえあればだれでもできる。「除染」ははやい話が水をかけるだけのこ...

「なんとなく、そっと、すこしだけしあわせ」であるということのキセキ

  はっきり言ってしまうが、この退屈で狡猾で冷酷で非情で気まぐれで腐った世界に「奇跡」などない。メディアやお調子者やおっちょこちょいにだまされてはいけない。しかし、「キセキ」はある。それも、数えきれないほどたくさん。 ステキな笑顔というキセキ。 届くはずのない思いが届くキセキ。「小さなコビトの大きな世界」のキセキ。 満天の星を眺めることのできるキセキ。 そばにいてくれるだけで気持ちいいキセキ。 場...

マカロン・ダンディ#1

  男は目をひいた。白いフラノのパンツ、白いBDシャツ、そして、淡いブルーのジャケット。冬の移動祝祭日の世界の天井の空のような。胸にはうす桃色のポケットチーフがのぞいている。足元を見れば、トップサイダーの海軍色のデッキシューズが軽快にステップを踏んでいる。季節はずれと言えば季節はずれだし、場ちがいと言えばこのうえもなく場ちがいだった。少なくとも真冬の葬列にはそぐわない。ここは夏のキーウェストのカクテ...

バイト日和#1

  come.comのハンディ・カムに向かって総入れ歯をカミングアウトした途端に幸運がやってきた。 私の趣味は噛むことだ。私はなんでもかんでも噛む。宇宙を噛む。世界だって噛む。思想だって噛む。重力だってもちろん噛む。タキオンもタージオンもニュートリノも噛む。リーマン予想と宇宙際タイヒミュラー理論とABC予想とiPS細胞にも噛みついたがさすがに歯が立たなかった。ジョーズのやつは激突同然にひと噛みでやっつける。『あ...

タイガーホールにエンターせずんば

  なにごともまず独創茶である。それが小さなコビトの大きな世界における掟、流儀、作法、タイガーホール・ルールだ。海峡を挟んでホームランをかっ飛ばしたお隣りさんのタイガーバーム・ガーデンのあまりにもなフェイク、キッチュ、レディス4ぶりに日本橋三越本店屋上ショボクレ・ガーデンな吾輩なわけではあるが、怪しさ満載のタイガーバーム・ガーデンの財務状況の深刻さについてはマウスをつぐみ、ついでにクリッククリック...

東京シャドウズ#1 いつかのシュプレヒコール

  時の流れを止めて「変わらない夢」をみたがる者たちと戦うために東京シャドウズは誕生した。「変わらない夢」を流れの中に求めて。影は臆病な猫のように光に怯えているし、光がなければ存在しないが、いつもというわけではない。影が一斉にシュプレヒコールを上げ、蜂起するとき、世界は一瞬にしてその様相を変える。これを「革命」と呼ぶ。【前 史】 日本には現在、ふたつの職業尾行リーグが存在する。東京ビコー・リーグと...

いつかのヨヨギ、いつかのコウモト

  ある友情に関する寓話。  ドブねずみが美しいなどとは誰にも言わせない。言えるのは、吾輩といつかのヨヨギの、いつかのコウモトと電撃治療ですべてを失った鍵盤の聖者バド・パウエルに心を痛める者だけだ。 いつかのコウモトと最初で最後の別れを告げあったのは、いつかのヨヨギの「ちょんまげ」という焼き肉屋である。吾輩はいつものごとくに酔いどれ、荒くれ、東京リコーのナンバー8とタイマンを張り、「ちょんまげ」店...

風にそよぐMac

  スティーブ・ジョブズ死して492日。その死と生の意味をそろそろ考えられるようになったかと思ったが、やっぱりだめだ。まだ早い。スティーブ・ジョブズについては吾輩にはまだ「語りつくせぬこと」が多すぎる。語りつくせぬことについては沈黙しなければならない。 100年後、2013年2月9日現在においてこの世界に存在する人間のあらかたは死んでいて、もはや存在しない。生まれたての赤ん坊も含めてだ。100年後の世界の人びと...

マイルス・デイヴィスの左手と泡とともに消えた夢

  MARTIN Committee Model    マイルス・デイヴィスが愛用していたトランペットだ。1950~60年代、ハードバップ全盛期のトランペッターたちにもっとも多く使われていたモデルである。ファッツ・ナヴァロ、ディジー・ガレスピー、ケニー・ドーハム、リー・モーガン、ア-ト・ファーマー、チェット・ベイカーらも使用した。最近ではクリス・ボッティやウォレス・ルーニーらがMARTINユーザーである。「暗い音/DARK SOUND」を好む...

ハンバーガー・デイズ#1

 東京発モンタナ行き急行的ハンバーガーの良心と絶望と韃靼人の怒りと復讐 20歳の頃、ハンバーガーを1日に50個食べるのが日課だった。ハンバーガーを1日に50個食べつづけることでいったいどこにたどり着けるのかはわからなかったが、ハンバーガーを1日に50個食べつづけることは私の精神の強度と跳躍力と耐久性を飛躍的に高めた。クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの『雨を見たかい?』の「雨」がナパーム弾の弾幕...

naomi & goro/ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい音楽

  ナオミちゃんはうたがあまりじょうずではない。ゴローくんもギターがあまりじょうずではない。でも、ナオミちゃんとゴローくんがいっしょに音楽をやると、気持ちいい。すごく気持ちいいわけではないけれど、ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい。ナオミちゃんとゴローくんにはこのまま、なにも足さず、なにも引かず、ずっとずっとこのまま、ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい音楽をつづけてほしい。アストラット・ジルベルト...

言いだしかねて/バレンタイン・デイの思い出

  クリフォード・ブラウンの『I can't get started with you』を聴くたび、ある光景がよみがえる。私は高校2年生で、同級生の女の子と恋をしていた。彼女は歯医者の娘で、スレンダー&クールな美人で、生徒会の役員で、「死んじゃう」が口ぐせで、おまけに歌がうまかった。彼女が身につけているものはどれもとびきり上等なものばかりだった。うまいことおだて、すかし、口車に乗せて、ずいぶんといろいろなものをせしめた。せし...

びっこの仔犬・小さな命の冥い輝き

 『びっこの仔犬』という歌がある。加山雄三の『大空の彼方/びっこの仔犬』に収められている。ただし、「びっこ」という言葉が野暮天どもに問題視されたあげくにポンコツボンクラなレコード会社の自主規制の憂き目に遭い、「加山雄三全作品集」には未収録のままだ。 びっこの仔犬 作詩:岩谷時子 作曲:弾厚作 編曲:森岡賢一郎 びっこの仔犬 大きなムクに 追われて逃げた 夕暮れ道よ びっこの仔犬 お星様見てる 隠れて逃げ...

スミダの岸辺・「どこ吹くセロリの風」の話

  スミダの岸辺    継続するエラン・ヴィタールと不用意な明日、あるいは反ルイ・ポワリエの使徒として 昼下がりのテーブルの上には夜の果ての旅を待つ「架空の匿名時間」が物憂げにたたずんでいる。A.D.ベイジンゲル「いつ/どこで/なにを/どのように」読むか/読まないかはすぐれて個人的な問題である。他者がとやかくのことを言う領域には属さないというのが吾輩の考えだ。『草枕』の文庫本を渡良瀬川の清流における午睡のた...

闘うシニフィエ、かいくぐるシニフィアン

  今般、ある実験を行った。アクセス・ブロック実験だ。予告なく実験台にされた方々には謝罪したい。なにひとつ、これっぽっちも届くまいが。もちろん、反省など微塵もないが。実験の眼目はかれらがアクセス・ブロックをかいくぐり、かれらに向けて放たれたダブルスピークを読み取れるかどうかというきわめて野心的独創的樽犬的なものであった。これは戦場で2000tのナパームの雨をよけながらアルファ・ブラボー・チャーリー・デ...

僕らの絶望と欲望はアボカドの船に乗って。

  夢みる村上春樹は夢をみるために毎朝目覚めるというのが泥棒かささぎ世界におけるもっぱらの噂だ。夢みる村上春樹は人類救済とナイーブで傷つきやすい人々、インジュリー・ハートピープルのために毎朝決まった時間に目を覚まし、決まったパターンの夢をみる。「家」の夢だ。家の一階では家族が掃除をしたり、洗濯をしたり、料理をしたり、テレビを見たりしている。寝室は二階にある。寝室では主に読書とセックスと睡眠が行われ...

カッコイイとはこういうことさ。

  パリの空の下、うたかたの恋はやぶれ、この素晴らしき世界はバラ色の人生との逃避行の果て、カサブランカのリックの酒場に立ち寄り、スティング・バス「心のかたち」停車場を経由して、マギー・メイ号による愛の海セーリングを満喫色欲是空空前絶後放埒自在酒池肉林超絶堪能。最後は下町列車で青年トルコ党本部着。お別れはいつものさよならで。 ロッド・スチュワート。大英帝国第三等勲爵位保持者。イカす。ものすごくイカす...

『下灘物語』のためのいくつかのレッスン#1

  思いだすだけで泣けてくる駅がある。JR予讃線の「下灘」だ。大学の同期に松山出身の人物がいて、誘われて出かけた。遠い昔の春のことだ。下灘の駅ではその友人と酒を酌み交わしながら一晩明かした。ずっといい風が吹いていた。水仙の品のいい香りに包まれた。いい音楽を聴いているような気分だった。 あの夜から35年が経つ。そろそろ、レッスンを仕上げなければならない。青いベンチに寝転び、瀬戸内の海、伊予灘の風に吹かれ...

イラ・マッチオ氏の反復と継続、あるいはカース・マルツ会議の結論

   まただ。またイラ・マッチオ氏がやってしまった。例の反復と継続を。もはや取り返しはつかないかもしれない。なにしろ、イラ・マッチオ氏である。頭蓋骨の権化である。しかも、反復と継続。換言すれば、関係した者をその「名詞」の腰つきの艶っぽさを理由に法定代理人を買って出たはいいが諦念と怠惰の果てに垣間見える衝動であるところの破壊、即ち、「関係代名詞殺人事件」。あるいは、「過剰と逸脱と蕩尽    いつ果てる...

ザマミの日

  イタリアでは毎年3月8日を「ミモザの日」として男が女に感謝の想いをこめてミモザの花を贈る習慣がある。なぜ3月8日なのかというに、それは吾輩が1975年にそのように決めたからだ。なぜ吾輩は3月8日を選んだのか? 当時、吾輩が恋い焦がれていた歯医者の娘のトモコちゃんの誕生日が3月8日だからである。それだけの話だ。それだけの話にもかかわらず、イタリアかぶれのスウェーデン野郎どもはこの日、目の色を変えて女の尻を追...

キセキの現場・満月のシルエット

  今宵、豊饒の月に魅入られし人々 CGでも合成でもない。天空を移りゆく混じりっけなし本物のグレープフルーツ・ムーンとそれに魅入られし人々の姿だ。 Full Moon Silhouettes from Mark Gee on Vimeo. ...

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プロフィール

自由放埒軒

Author:自由放埒軒
Festina Lente.
No Pain, No Gain.
Fluctuat nec Mergitur.
R U Still Down Gun 4?
玄妙の言葉求めて櫻花
薄紅匂う道をこそゆけ

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Didie Merah
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