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思い出の『Moonlight Serenade』と1958年式アトランティック・バード号の夜間飛行後の引退

    恋におちたのは2008年の夏の終わりだった。相手は私のゼミナールに所属していた教え子だ。6年ぶりの再会だった。学生時代はジーンズにTシャツというラフでざっかけないありふれた女子学生にすぎなかった彼女は、見ちがえるほど美しく、可憐で清楚で気品にあふれ、しかも華のある成熟したおとなの女性に変貌していた。いくぶんかの哀しみと愁いを含んだ表情も彼女の魅力をさらに引き立てているように感じられた。私と彼女...

大学通りを経て象牙海岸へ。涙のワンサイデッド・ラヴが終りを告げたあとは涙のステップを。

  星と導きと夜との狭間にある大学通りを経て象牙海岸へ。そして、『シャンペンと地動説』によって終りを告げた涙のワンサイデッド・ラヴのあとは涙のステップを。忘れもしない。1979年の夏だ。ガール・フレンドは3歳年上で、幼稚舎から大学までストレートに慶応だった。正真正銘のお嬢様だった。ファッションや音楽、言語感覚を初めとして、およそ生きていくうえで必要なセンスがとても良かった。人生の日々の景色が絶景になる...

サーフ天国、スキー天国、AOR天国

  20代前半、松任谷由実の『サーフ天国、スキー天国』で、先頃帰らぬ人となった須藤薫が歌う「SURF & SNOW」というバック・コーラス部分を聴くたび、オフショアに吹かれて波乗りをしたくなり、エッジに息を吹きかけて磨いてスキーをしたくなったものだ。実際に『サーフ天国、スキー天国』を聴いて思い立ち、稲村ケ崎や七里ガ浜や千葉や伊豆へ波乗りをしに行き、苗場や白馬や蓼科や志賀高原や天元台へスキーをしに行った。波がな...

It's Easy to Remember, But So Hard to Forget

  思いだすのは簡単だけど、忘れるのはとてもむずかしい。L-H"It's Easy to Remember (And So Hard to Forget)" 1935作詞: Lorenz Hart/ロレンツ・ハート作曲: Richard Rodgers/リチャード・ロジャースYour sweet expression, the smile you gave meThe way you looked when we metIt's easy to remember, but so hard to forget君が見せてくれたやさしい微笑み出会ったときの君の眼差し思いだすのは簡単だけど、忘れるのはとて...

ピアソラとジョビンとヴィニシウスのマリア・クレウーザをめぐる密談と密約#1

  Je t'embrassais tu m'embrassais je m'embrassais Tu t'embrassais sans bien savoir qui nous étions P-Éきのうの昼過ぎのことだ。1970年、ブエノスアイレスのナイトクラブ『ラ・フーサ』でマリア・クレウーザが歌うアントニオ・カルロス・ジョビンとヴィニシウス・ヂ・モライスの『Eu sei que vo te amar/あなたを愛してしまいそう』があまりにも心地よくエリュアールなので、トッキーニョのギターラめがけて高カロリー低栄...

『シンドラーのリスト』を奏でる少女

    蝋燭のあかりは細く小さくていい。E-M-M1994年の早春。横浜山手・根岸台の洋館。ひどい寒さと強い風の日だった。場ちがいな集まりに来てしまったことに後悔しはじめていた。ワインなどではなく、強い酒が飲みたかった。安く強い酒を。一人で。他者の嘘くさい笑い声など聴きたくもなかった。腑抜けて引きつったようなお愛想笑いに唾を吐きかけたかった。もちろん、世界にも。一人になりたかった。宴の終わり近く。私のうん...

美しいものを見たければ眼をつぶれ/最後の『I Remember Clifford』

   1985年夏の終りの七里ケ浜駐車場レフトサイドにおける『I Remember Clifford』とおとなになった友人の話だ。友人の名は森の漫才師サルー。 8月15日が過ぎ、夏の終りが近づくにつれて森の漫才師サルーの口数は1時間ごとに減りはじめ、なににも興味を示さなくなっていた。8月の第三週にはさらに口数は激減したうえに、ものをほとんど食べなくなった。森の漫才師サルーはみるみる痩せ衰えていった。そんな状態の森の漫才師サル...

あるギター弾きの死と再生

   またひとり、死んでいた。Michael Hedges/マイケル・ヘッジス。ギタリスト。超絶技巧のスーパー・ギタリスト。1997年12月2日。交通事故死。享年43歳。  再度、言う。またひとり死んでいた。20年も前に死んでいた者さえいる。死んでいたのは、いずれもある時期の吾輩のアイドルたちである。消えてなくなればいい奴が大手をふって生きのび、生きていなければならない者が死ぬ。ふざけた世界だ。なぜ彼らの死に気づかなかった...

ロストロポーヴィチの春、夜明けの口笛吹きの狂気

   夜明けの口笛吹きの狂気はいつ原始の母に癒されるのか?吾輩の世界の天井の朝、一日の始まり昨夜、おそろしくひさしぶりにピンク・フロイドをじっくりと聴いた。正確には高校1年の春に聴いて以来である。夜ふけに聴きはじめ、最後に12回目の『The Great Gig in The Sky』を聴きおえ、コンピュータをシャットダウンしたのが午前5時12分。夜明けちかくだった。ベランダに出て、口笛を吹いた。夜明けの口笛吹きだ。口笛を吹き終...

トム・ウェイツの百年の孤独な夜

   これより明日の夜明けまで、月で酔いどれながらときに梅の薫りをさぐり、ときに桜の蕾に声をかけ、ときに春のおぼろのグレープフルーツ・ムーンを愛で、ひたすらトム・ウェイツを聴く。ずっと聴く。とことん聴く。長丁場だ。どんな順番で聴くかな。ここはやっぱり、『Grapefruit Moon』からか。『Drunk on the Moon』『Tom Traubert's Blues』『Ol' 55』とつづけて、最後は『Closing Time』で。『Closing Time』がかかるころ...

酔いどれ詩人と飲んだくれ師匠

   前座 酔いどれ詩人、トマス アラン ウェイツのもっとも得意とする楽器はピアノでもギターでもない。ヴォキャブラリー、語彙である。トマス アラン ウェイツのステージをみた者であれば、例の嗄れ声とともに彼の軽妙洒脱な語り口に魅了されたことだろう。吾輩もそのうちの一人である。トマス アラン ウェイツはピアノの上にジムビームの白ラベルを置き、というよりも居座らせ、ビンから直接飲んでいた。飲みつつ歌い、しゃべ...

不思議の国にて気が変になる海亀スープもどきで昼食中。帰宅時間はゲーデルに訊いてくれ。

    エリック・ドルフィー『OUT TO LUNCH!』の「WILL BE BACK」  あるアーティストと話しているうちに「マドレーヌ現象」がはじまってしまった。主たる用件はそのアーティストにエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH!』のジャケットのコラージュを制作することが可能かどうかを打診するのが目的だったが、周波数とフィーリングが合って、話はいつのまにか「夢の球場」のことや古今亭志ん生のことや「ラデュレ・ビジネス」の...

naomi & goro/ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい音楽

  ナオミちゃんはうたがあまりじょうずではない。ゴローくんもギターがあまりじょうずではない。でも、ナオミちゃんとゴローくんがいっしょに音楽をやると、気持ちいい。すごく気持ちいいわけではないけれど、ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい。ナオミちゃんとゴローくんにはこのまま、なにも足さず、なにも引かず、ずっとずっとこのまま、ちょっとだけ、なんとなく気持ちいい音楽をつづけてほしい。アストラット・ジルベルト...

蜜『初恋かぷせる』/いくつもの夜をこえてもなお

  世界がこんなふうなやさしさとこんなふうな笑顔に満ちていればいい。小さなコビトの大きな世界と、そうでない世界にも。 今夜はウニに蜂蜜をかけて食べることにします。例のカプセルを添えて。 飯田にいい仕事が舞い込みますように。 ...

遠い夢からさめたジャンゴ

  今日はジャンゴ・ライハルトの誕生日だ。明け方からずっとMJQの『DJANGO』を聴いている。誕生日のお祝いと強弁してすべての予定をキャンセルし、安ワインを飲みながら。もう3本目が空いた。虹子も呆れ顔だ。たばこは夕べのうちに『Gitanes』を1カートン用意してある。iTunesにジャンゴの演奏音源のコンプリートを呼び出し、PLAY IT. これであとはムール貝をバケツ一杯ほども喰えばパーフェクトなジャンゴ・バースデーだ。世界...

見上げてごらん夜の星を

   冬は星がきれいにみえる。空気が澄むからだ。空気が澄んで、冴えわたる夜空を見上げることは吾輩と吾輩の人生の同行者である虹子との欠かすことのできない冬のイベントである。 東向きの窓に秋のころよりも元気をうしなった月が物静かにでて、やがて夜空をめぐり、窓から消え去るまでの数時間、吾輩と虹子はソファに足をもたせかけ、大の字になって夜空を仰ぎみる。そして、iTunesのライブラリにある楽曲の中から、「星」「...

家族になろうよ/『家族』という物語

  福山雅治の『家族になろうよ』を初めて聴いた。虹子の iPod を盗み聞きしたのがきっかけだった。JUJUやらAIやらマットンヤ・ユミーンやらドリームズ・カム・トゥルーやらサザンオールスターズやらにまじって福山雅治の『家族になろうよ』があった。出だしの「100年経っても好きでいてね」でいきなりヤラレてしまった。福山の声がまたいい。実にいい声だ。福山雅治の存在は物理学者の役で難事件を解決するTVドラマを何度かみて...

アンドレ・リュウという「希望」

  アンドレ・リュウがいい。口さがないクラシック通(何度でも言う。おまえらがツウなら吾輩はワンである。樽犬である)あたりからはさんざっぱらおぞましいほどの悪態をつかれ、陰湿で陰険で退屈な誹謗中傷、罵詈雑言を浴びせかけられてきたアンドレ・リュウだが、とにかく、そのエンターテインメントのレベルの高さ、親和力、演出等々が実に素晴らしい。 現在、63歳。吾輩はアンドレ・リュウという底抜けのポジティブ・シンキン...

神の声のアンドレア

  その者、神の声をまといて、金色の野に降り立つべし。 アンドレア・ボチェッリ。Andrea Bocelli。1958年9月22日生まれ。イタリアの歌い手。「神の声」とも称されるアンドレア・ボチェッリは全盲である。少年時代、サッカーのゲーム中に頭部を強打し、それが原因で完全に視力を失った。ルチアーノ・パバロッティらに見いだされ、1994年に念願のデビューを果たし、同年のサンレモ音楽祭新人部門で優勝した。 はじめに「声」あ...

あなたと夜と音楽と #1

 籠もり部屋(隠れ家)ができた。今日は籠もり部屋の初日にして徹夜仕事だ。籠もり部屋の存在は誰も知らない。わが人生の同行者も知らない。ポルコロッソにだけは教えた。いまもすぐそばで寝息を立てている。籠もり部屋を持とうと思い立ったときから籠もり部屋には必要最小限のモノしか置かないことを決めていた。机、椅子、冷蔵庫、グラスと食器類、PC、プリンター、そしてオーディオ・システム。机と椅子は arflex の中古が信じら...

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自由放埒軒

Author:自由放埒軒
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玄妙の言葉求めて櫻花
薄紅匂う道をこそゆけ

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